歳時記の飾り代わりに作った「鬼」が注目を集める
双子が3歳になった頃には、忙しさから髙木さんはパソコンを開くのも難しくなっていきます。それでも発信することは大切な発散のすべ。そこでスマホだけで写真をアップできるInstagramを始めました。
そんなある日、積み木で節分の鬼を作ってみようと思いついたことが、注目を集めるきっかけとなります。
「歳時記飾りに憧れていたのですが、娘たちを連れて飾りを買いに出かけるのもままならない。でも、積み木はいっぱいある! そこで、積み木で節分の『鬼』を作ってみたんです。
いろいろな積み木の角度を変えたり、色を意識したり、子どもたちもびっくりして喜んでくれました。作るのが楽しかったですね」
この鬼の反響が大きく、200人以上もの「いいね!」がつきました。そこから月ごとに、ひな人形、鯉のぼり、あじさいなど、歳時記飾りの積み木を作っていきました。
「いろいろな積み木を混ぜて作るのが、当時は新しかったみたいです。パパママだけでなく、おもちゃの専門店や、保育園・幼稚園の先生方の目にもとまり、『この部分はどうなっているの?』『何の積み木を使っているの?』と質問をもらうことが増えました。
加えて『紙にして子どもたちの見える場所に置きたい』とも言っていただくようになりました」
髙木さんが不定期で発行している冊子「積み木手帖」(左)と、2021年度版の「積み木手帖カレンダー」(右)。Instagramのフォロワーのリクエストに応える形で生まれた。 写真提供:髙木美晴
子どもと遊ぶことが苦手だったけど積み木のおかげで楽しくなった
「積み木の鬼」をきっかけにコラムや写真提供などの依頼が増え、髙木さんは少しずつ忙しくなっていきます。仕事依頼されたおもちゃ屋さんに「肩書きがあった方が良い」と強く勧められ、『積み木アート作家』と名乗るようになりました。
「もともとは楽しい一心で、積み木で遊んでいただけなんです。しかし肩書きを持ったこと、冊子やカレンダーなどを購入してくれる方がいることで、責任感も生まれました」
Instagramのフォロワーの中には、高木さん親子の遊びを参考にしながら、積み木遊びを楽しむ親子の姿も見かけます。ところが、髙木さんはもともと子どもと遊ぶことが苦手だったと言います。
「末っ子で、年下と接したことがあまりなかったんです。子どもと何をしたらいいかわからなかったのが、積み木を通して一緒に遊べるようになりました。
積み木で遊ぶことは、親子のコミュニケーションにつながると感じています。親子間で良いコミュニケーションが取れていれば、友達や先生など周りの人との関係も良いものになっていくのではないでしょうか」
娘さんたちを温かく見守りながら、ご自身も積み木が大好きな髙木さん。近所の方やおもちゃ屋など多くの方と良い関係を作っていき、今があります。
「私はおもちゃ屋さんではなく、お客さんとお店の方の間にいる立場です。私の作った積み木でも、ほかのものでも、それを見て『遊んでみたい!』と興味を持ってもらい、お店へ問い合わせたり足を運んでくれたりする方が増えたらうれしいです。ただ、無理に遊ばなきゃいけない! とも思わないでほしいです。まずは楽しんでもらいたいです」
後編では、髙木さん親子が実際にどのように積み木遊びを楽しんでいたのか、伺います。
2019年に横浜で開催した展示会イベントの様子。「積み木で遊べるコーナーを作り、子どもたちが黙々と遊び続ける姿や、満たされたような表情に感激しました」(髙木さん)。 写真提供:髙木美晴 撮影:岩本彩
PROFILE
髙木美晴
たかぎみはる 積み木アート作家。おもちゃコーディネーター。おもちゃコンサルタント。2013年に双子女児を出産。親子で作る感性豊かな積み木遊びをInstagramで発信し話題に。2017年から冊子『積み木手帖』、2018年から『積み木手帖カレンダー』を発行。2019年横浜バーニーズニューヨーク、2020年子どもの本とおもちゃの店・百町森(静岡)、2021年浦和蔦屋書店、アトリエニキティキ吉祥寺店等々、全国各地でフェアや積み木パネル展を開催している。スペインのおもちゃメーカー「grapat japan」の日本公式instagram画像掲載、雑誌momo連載中。
Instagram
miharu.sss.t
公式ホームページ
https://linktr.ee/miharu.sss.t
片岡 由衣
ライター。東京都出身、竹富島在住。東京学芸大学卒業後、リゾート運営会社にて広報やイベント企画に携わる。3人子育ての発信を続けるうちにライターへ。 積み木オタクで、おもちゃや絵本に囲まれた児童館のような家で暮らしている。いつも片付かないのが悩み。 朝日新聞社「おしごとはくぶつかん」や小学館「kufura」など、メディアや企業サイトで取材記事やコラムを執筆中。 Instagram Twitter
ライター。東京都出身、竹富島在住。東京学芸大学卒業後、リゾート運営会社にて広報やイベント企画に携わる。3人子育ての発信を続けるうちにライターへ。 積み木オタクで、おもちゃや絵本に囲まれた児童館のような家で暮らしている。いつも片付かないのが悩み。 朝日新聞社「おしごとはくぶつかん」や小学館「kufura」など、メディアや企業サイトで取材記事やコラムを執筆中。 Instagram Twitter