節約アドバイザーが伝授! 子どもの「サバイバル力」を養う “無料”ルール
節約アドバイザー・丸山晴美の「小学校までに身につけさせたい! お金に強い子になる教え」第2回
2021.05.25
コロナ禍で、家計が急変! そんなときでも“あるもので工夫する力”が備わっていれば、よりピンチを回避しやすいでしょう。「子どもが幼児のうちこそ、こうしたサバイバル力を育ててほしい」と、人気の節約アドバイザーで男児のママでもある丸山晴美さんは話します。
では、どのようにして……? 丸山さんの体験談から、そのヒントを探っていきましょう。
家にあるものはタダ。それ以外は「おこづかいでどうぞ」
丸山家では、必要なところにはお金を使いますが、そうでないものは「タダこそ正義」がモットー。メリハリあるお金の使い方を徹底しています。2021年春から小学6年生の息子は、「“お母さん床屋”はタダだから♪」と、いまだ私にヘアカットをさせています。そうして貯めたお金で、ゲームソフトを買っているんです。ほしい物を得るために、タダで使えるものはとことん使い倒す。「中学生になったらいい加減、千円カットに行ってくれない?」というと、「え~」と不満げな彼。もしかしたら、自分で自分の髪をカットするようになるのかも。でも、それも生きる力。
さて、わが息子がここまでお金のメリハリ使いができるようになったのは、ある“ルール”も効いているのかと思います。
わが家はジュースを箱買いしていた時期もありましたが、息子が5~6歳くらいのころから、家にある飲み物はお茶と牛乳、水くらいになりました。お菓子やジュースなど、生活に必要でないものは置かないようにしていたのです。
でも、子どもはときどき甘いジュースをほしがりますよね。そこで、私は息子が保育園の年長(5歳児クラス)のころからおこづかいを与えたうえで、こんなルールを作りました。
「のどが乾いたら、家にある水、煮出したお茶、牛乳はどんどん飲んでいいからね。ただし、家にないジュースは自分のおこづかいで買ってね。
食べ物も同じ。家にあるご飯、ゆで卵、魚肉ソーセージは“フリー”。ご飯は、小分けにラッピングして冷凍庫に入れてあるからレンジでチンして食べるのもよし。それ以外の、自分が食べたいものは自分のおこづかいで買うこと」
つまり、「家にあるものを活用してね」というメッセージです。これを保育園の年長から習慣づけていたら、小学生低学年のころにはジュースを買って飲むことはなくなりました。お茶、お水、牛乳だけで満足しているようです。まさに、「タダこそ正義!」ですね。
友達のものをほしがったら「自分だけの〇〇を作ろうよ!」
おやつもほとんどタダです。保育園に通っていたころ、お菓子をねだられたら、返す刀で「これ、作ることもできるよ。一緒に作ってみない?」と提案していたため、彼の中には、「お菓子は買わずに作ることができる」という概念も育っていました。一度お菓子作りを体験すると、おのずとキッチン周りに関しても興味がわき、“作りたい”という芽がどんどん伸びてくるんですね。餃子もチーズケーキも親子で手作りを楽しんでいました。どうしても市販のおやつが食べたい時には、おこづかいの範囲で買わせていましたね。
このように言うと、お菓子やジュースを何も与えていないのかと疑問に思われるかも知れませんが、そうではありません。適宜、フルーツや野菜ジュース、ヨーグルト、子どもが好きなあんこ入りの和菓子などを、私自身が選んで、食費から出すこともありますが、お菓子の買い置きはしません。これは、おやつはあくまでも食事と食事の間のものであって、お菓子やジュースでお腹がいっぱいになるような、食べ方はさせないという意味もあります。
「手作り」の提案は、食べ物に限りません。たとえばお子さんの中には、お友達が持っているかわいいシュシュや、ピカピカ光る靴をせがむ子もいるでしょう。そんなときは、「シュシュって簡単に作れるんだよ。一緒にやってみない?」「スパンコールを貼れば、自分だけのピカピカができるよ!」と提案してみてはどうでしょう。手作りを楽しめる2歳から4歳くらいの時期なら、まだまだ通用します。
いずれにしても、すぐに買わず、ちょっと考える時間を与えること。
「今すぐ必要かな?」「これって作れないかな?」「ちょっと考えてみない?」
こうした声かけ一つで、幼児は考えて工夫する習慣がついていきます。そしてそれこそが生きていく力となっていくのです。
親自身も工夫ある暮らしを楽しんで見本に
そのためには日頃の親の姿勢も大事。たとえばある晩、半額シールがついた餃子パックを買ってきたとしても、パックごと出さずに、一度それを焼いたりレンジでチンしたりしてきれいなお皿に盛ったり、スープに加えるなど、このひと手間を加えるだけで、半額のお惣菜が素敵な逸品に変わります。これも生活を豊かにする工夫ですよね。
またある晩は、家にごはんやパンなど、すぐに食べられる主食がなかったとします。じゃあ代わりになるものはないか。そういえば、キッチンの引き出しにいただきものの乾麵があった。それをゆでて食べて、冷蔵庫にあったキュウリや卵を焼いたものを添えれば、それなりの夕飯になる。そういう工夫も、「買わずに、他の方法で解決する」という姿勢を見せることになります。
要は、「お金をかけないと生きていけない」とは思わせないこと。お金がなくても生きていけるたくましさ=サバイバル力を、都会暮らしの中でも教え込みたいのです。
タダこそ正義、でも買うのも正義
とはいえ、「お金を使うこと」は100%間違いではないし、「お金を使わないこと」が100%正解でもありません。場面に応じていかに使い分けるか、メリハリこそが重要なのです。
そこでわが家では、買うことと作ることの違いも教えていました。
まず、保育園の年長までに、「買わなくても手作りできる」という方法を体得させました。そして我が家の場合は10歳くらいから、「チーズケーキを1カット買う」ことと「チーズケーキをワンホール作る」こと、どちらにもメリットとデメリットがあることを教えました。
たとえば、チーズケーキを買ったら、子どもの記憶が薄れないうちに、同じようなチーズケーキを自宅でワンホール作るんです。そのとき、こういいました。
「実をいうとね、こないだ食べたチーズケーキ、あの1個の値段でこれ(ワンホール)ができるんだよ」
「えーっ⁉ すご~い!!」
感動している息子に、こう続けました。
「でも、どっちも正解なんだよ。買うのもムダじゃない。なんでだと思う?」
「買ってきたチーズケーキはすぐ食べられる」と、息子は答えました。
「その通り! だから、すぐ必要なときは買えばいいんだよ。でも、これ(ワンホール)ならいっぱい作れるよね。たくさんの人が食べるときは、手作りの方がいいかな。でもやっぱり作るのは時間がかかったよね。だから、時間がないときはすぐ買う方が便利よね。でもあらかじめわかっていて準備すれば、こうやってみんながいっぱい食べられる量のケーキを作れると思わない?」
このように、どちらかが正解とは示さずに、双方のメリットとデメリットを見いだしてもらったのです。どちらを選択しても正解ですし間違いではない。買うのも選択、作るのも選択。その場面に応じた使い分けも、豊かに生きていくうえでは大切なことですから。
「買わずに済む方法はある」というヒントを投げかけながら、ときには買ったり、作ったりする。こうした経験を重ねることで、子どもはだんだん経済観念が身についていきます。そして、小学校高学年になるころには、選択肢を考える力、今必要なのはどちらなのかを自分なりに考えて判断する力も育まれているでしょう。これも、生きていくうえでは欠かせない「サバイバル力」。幼児期こそ、そのタネのまきどきなのです。
構成/桜田容子
丸山 晴美
1974年、新潟県生まれ。東京でフリーターをしていた21歳のときに「家を買おう!」と思い立ち、会社員となり、頭金を貯め始める。それから5年後、コンビニエンスストアで店長をしていた26歳のときにマンションを購入。 少ない収入で一人暮らしをしながら貯蓄してきた経験をいかし、2001年に節約アドバイザーになる。同年、アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー(AFP)に合格。 2002年に通信制の放送大学教養学部教養学科に入学し、「生活と福祉」から「心理と教育」コースまで多ジャンルな科目を受講。現在も大学に籍を置きながら学びを継続している。 保有資格は秘書検定2級、調理師免許、FP技能士2級、ジュニア食育マイスター、宅地建物取引士(登録)、認定心理士、ITパスポート、家庭の省エネエキスパート検定合格など多数。プライベートでは、2016年からシングルマザーに。 著書や監修書も多く、最近では「お金を活かす ハッピーエンディングノート」(東京新聞)を監修。
1974年、新潟県生まれ。東京でフリーターをしていた21歳のときに「家を買おう!」と思い立ち、会社員となり、頭金を貯め始める。それから5年後、コンビニエンスストアで店長をしていた26歳のときにマンションを購入。 少ない収入で一人暮らしをしながら貯蓄してきた経験をいかし、2001年に節約アドバイザーになる。同年、アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー(AFP)に合格。 2002年に通信制の放送大学教養学部教養学科に入学し、「生活と福祉」から「心理と教育」コースまで多ジャンルな科目を受講。現在も大学に籍を置きながら学びを継続している。 保有資格は秘書検定2級、調理師免許、FP技能士2級、ジュニア食育マイスター、宅地建物取引士(登録)、認定心理士、ITパスポート、家庭の省エネエキスパート検定合格など多数。プライベートでは、2016年からシングルマザーに。 著書や監修書も多く、最近では「お金を活かす ハッピーエンディングノート」(東京新聞)を監修。