「こどもの居場所」づくりの必要性
児童虐待の相談対応件数や不登校、自殺者数の増加など、こどもを取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
そこには、核家族化や共働きの増加とともに、こどもたちが互いの家へ気軽に出入りできなくなったことや、公園の利用規制増加、部活動の減少など、一言では語れない背景があります。
このような社会状況の中、こども家庭庁は「こどもの居場所づくりに関する指針」を閣議決定(2023年12月22日)。こども家庭庁のリーダーシップのもと、こども・若者の声を聴き、彼らの視点に立った居場所づくりがはじまっています。
こどもが生きていく上で「居場所」があることは不可欠。
学校だけではなく、遊びや習い事などの体験活動、塾や部活などのコミュニティ、そしてSNSやオンラインゲームなど、さまざまな居場所があることを伝えていこうと、国をあげて力を入れています。
また、地域の施設を活用することも有効としており、「児童館」も選択肢の一つとして挙げています。
乳幼児に限らず、中高生世代も施設を活用できるように、設備の拡充・利用時間の拡大・相談支援サポートなどが積極的にすすめられているのです。
児童館ができたワケ
児童館は「18歳までのこども」が対象年齢であり、「児童厚生施設」に区分されています。
登録制の児童クラブとは違い、利用要件がないため、決まった人しか行けないということはありません。対象年齢であれば、誰でも足を運ぶことができる場所なのです。
「すべてのこどもを守り、彼らが育つ居場所が必要だ」──戦後、昭和22年(1947年)の児童福祉法制定とともに、児童館が公的に位置づけられました。
施設数は、昭和40~50年代にかけて、高度経済成長による「かぎっ子」の増加、こどもの事故の多発等により急激に増加しましたが、平成18年をピークに、ここ数年は減少傾向(※)にあります。
(※公営・民営別では、公営が平成7年をピークに減少に転じているものの、民営は最近でも徐々に増えている傾向にある)
「こどもの居場所改革」はもちろんのこと、児童館の施設の存続とあり方も見直しが始まっています。
そのためにも小学生だけではなく、乳幼児から中高生世代まで、すべてのこどもが利用できる児童館の独自性を、改めて打ち出す必要があるのです。
こんなにすごい!中高生むけの児童館
こうした「こどもの居場所改革」というポジティブなアクションの影響で、児童館の機能がどんどんと変化しています。
全国各地にある児童館は、これまでも大型児童センターのように中高生世代に特化した施設がありました。
それとは別に、小型の児童館にも中高生世代に向けた設備を増やしたり、行政区内の一部施設を中高生世代専用施設に変えたり、利用時間を区切って中高生世代専用タイムにするなど、制度を整えています。
しかしそもそも、「中高生世代のための児童館」って、いったいどんなところ? と疑問が湧いてきます。
そこで今回、東京都内にある約600箇所の児童館のひとつである、東京都豊島区の「中高生センタージャンプ東池袋」をたずねてみました。
2024年2月にリニューアルオープンしたぴかぴかの児童館です。
東京メトロ東池袋駅から住宅街を歩き進むと、路地裏に3階建ての建物がみえてきます。
こちらは地域区民ひろばや、フレイル対策センターとの複合施設となっており、多世代の人が訪れています。とはいえ、「ジャンプ東池袋」を利用できるのは中高生のみ。
年齢層が限定された環境だと、安心して場を楽しむことができるほか、静かな環境で落ち着いて勉強に励むことができるのも魅力です。
取材に訪れたのは間もなく新学期という時期。夏休みの宿題に追われたり、授業の予習、受験勉強に明け暮れる生徒もいるシーズンです。
フロアに足を踏み入れると、平日だというのにぎゅうぎゅうに集う中高生世代の人たち。
この日は30人〜40人ほどいたのでしょうか。聞けば、休日ともなれば多い日は100人ほど集まることも。「足の踏み場もないほどなんです」と職員の方は笑います。