子どもの「乗り物酔い」の原因は? 幼児に起こりにくく小学生~中学生ごろがピークの理由 専門医が解説

耳鼻咽喉科専門医・細野研二先生に聞く「子どもの乗り物酔い」 #1 ~原因とメカニズム編~

ほその耳鼻咽喉科 院長:細野 研二

酔うのは「空間認知」の混乱から

「まず、『空間認知』の説明からしますね。空間認知とは、自分と周囲の空間との位置関係の認識、つまり『自分が今どういう状態で、どういう位置にいるか』の認識を指します。

私たちは、目から得る『①視覚の情報』と内耳にある前庭器官(半規管・耳石器)で感じ取る『②加速度情報』、関節や筋肉、皮膚からの『③深部知覚』という3つの情報を脳内で統合することで、自分と周囲の空間との位置関係を認識しています。

また、どんどん新しくなる情報に対し空間認知をつねに更新しています。そうすることで、今自分がいる空間で安定して動くことができるのです。

ところが、乗り物の影響で①②③の情報に不一致が生じると空間認知が混乱してしまい、乗り物酔いが起こってしまうのです」
(細野先生)

本を読んで酔うのも空間認知の混乱から

「車の中で本を読むと酔いやすい」という説も、この混乱によるものだといいます。

「本を読んでいると文字を追っているから目線はある程度固定されています。しかし、内耳前庭器官は加速度情報を認識し、お尻からの突き上げや上下の振動などの深部知覚も感じます。

すると、視覚情報は止まっているのに、加速度情報と深部知覚は『自動車での移動』を認識するなど情報に不一致が生じます。脳内でうまく情報を処理できなくなり、空間認知の障害につながってしまうのです」
(細野先生)

Zoom取材中の細野先生。これまでの診察経験に加え、論文やデータなども調べた上で回答していただきました。
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