小学生から17歳が市長を選ぶ「こども選挙」 茅ヶ崎から全国12都市に広がった理由

子どもによる、子どものための「こども選挙」#1~スタートから選挙委員集結まで~

何気ない会話からアイデアに

目の前には「サザンビーチちがさき海水浴場」が広がる抜群のロケーション。砂浜のシンボルとして人気のモニュメント「茅ヶ崎サザンC」のすぐそばに、池田一彦さん夫婦が運営するコワーキングスペース「Cの辺り」はあります。

ここは、2022年10月の茅ヶ崎市長選挙と同時開催された「ちがさきこども選挙」の本部としても使われていた場所。「こども選挙」とは、選挙権のない小学生~17歳の子どもを対象に、本物の選挙と同時開催する模擬選挙プロジェクトです。投票だけでなく、準備・運営のほとんどは子どもたち主導で行われています。

奥に見えるのがコワーキングスペース「Cの辺り」。海を見ながら、波音を聞きながら働くことができる。  写真提供:こども選挙実行委員会
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自身も小学5年生の娘と、6歳の息子をもつ池田さん(2024年12月現在)。「こども選挙」のアイデアは2021年3月ごろ、同じく子どもをもつ友人夫婦との会話から生まれました。

「子どもたちの主体性をどうやって育むかという、何気ない会話からでした。学校教育だけでは難しいとも感じていたなかで、できることはなんだろうと。

当初は『こどもカンパニー』という企画の話をしていました。子どもたちと、地域のプロがいっしょになって地域課題を解決するというものです。

例えばコロナ禍で困っている飲食店に対して、集客のためのプロモーション戦略を考える。リアルな体験の中でこそ主体性は育まれるんじゃないか、なんて友人らと話していました。そんな話の延長で『子どもが選挙で投票したらおもしろいかも』と考えたんです」(池田さん)

その約1年半後に茅ヶ崎市長選挙があるとわかりましたが、まだ時間があったためこのときはいったん解散。約1年後に「こども選挙」実現へ向けて池田さんらは動き出します。

まずは大人の実行委員を集めるために、池田さんは配信サイト『note』に企画書をアップ。ほどなくして10人が集まりました。茅ヶ崎市長選挙を約5ヵ月後にひかえた2022年6月のことです。

企画書の一部。「半年間という準備期間は短く感じるかもしれないが、熱量を持って一気に進めたほうができることも」(池田さん)  提供:池田一彦

「企画書を書いた時点ではわりと妄想に近かったのですが、半年後には実現しちゃいましたね(笑)。それは、すごくいい出会いもあったから。

コワーキングスペース『Cの辺り』では、一箱ずつオーナーが違う“一箱本棚オーナー制図書館”もやっているのですが、このオーナーさんたちをはじめ、『Cの辺り』会員にはデザイナーやwebクリエイターなど各領域のプロフェッショナルの方も多くいます。まずは彼らに声をかけました。

なかには参議院の調査室長もいました。『シティズンシップ教育』に詳しい方だったので、その方にも入ってもらい全体の監修をしていただきました」(池田さん)

※シティズンシップ教育=子どもたちが将来、市民として積極的に社会参加する知識や能力を身に付ける教育。近年、欧米を中心に学校教育で導入されている。

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