“発達特性のある新1年生” 入学前に親がやりたい「4つの準備」を専門家に聞いた

発達障害の専門家が語る「発達特性のある子どもの小1プロブレム」#2~入学前の準備~

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

【準備③】子どものストレスをやわらげるために

さらに、入学後、子どもが不安やストレスを感じたときにそれをやわらげる生活習慣や、トラブル回避になりうるコミュニケーションの練習も積み上げておくといいでしょう。

以下、いくつかお話ししますが、全部ではなく、できるところから、子どもが興味を示すところから、根気強く取り組んでいただきたいと思います。

・生活リズムを整える

睡眠、食事、排泄のリズムづくりです。意外とこれらが整っていないことがありますが、情緒の安定に欠かせないことです。

・リラックス方法を知る

子どもが大好きな活動、遊びがあるというのは、大切です。もちろんゲームなどは親がきちんと家庭の使用ルールを作る必要はあります。

加えて、子どもがリラックスしたり、すっきりする方法を知っておくといいでしょう。深呼吸、ストレッチ、ウォーキングなど。合う方法がわかれば、少しずつ習慣づけると、入学後、壁に当たったときに、ストレスをいく分やわらげてくれます。

・「第三の居場所」を確保する

家庭と学校以外で、本人が自分の存在価値を確認できる場所を作りましょう。プログラミングやスポーツや囲碁・将棋、習い事などの本人が好きな趣味の集まりでもいいですし、放課後デイサービスなどでもいいでしょう。そのような場所があることで、子どもが自分自身を保つことができることは十分に期待できます。

・自分の思いを素直に吐き出せるように

親子の間に何でも話せる関係を構築しましょう。大人も周囲の人と相談しながら問題解決をしています。小さいうちから相談できる関係を作ることは、特に発達特性のある子どもの場合は大切です。

注意したいのは、こうしろ、ああしろ、と一方的に指図しないようにすることです。まず、本人が素直に自分の思いを吐き出せる関係づくりをめざしたいです。

・助けを求める力・「イヤ」と言う力・交渉する力を育てる

「お願いします」「手伝って」「一緒にやって」といった、助けを求める力、「嫌い」「わからない」「イヤ」といった拒否の力、そして、本人の言い分を伝え、相手の要望も聞き、交渉する力。

こうした力があると、学校生活で困ったとき、先生や周りの生徒に助けを求めることができます。また感覚過敏などを持つ子どもは、本人は苦痛を感じているのに周りの大人がそれに気づかないどころか想像もできないことがよくあります。

そんなとき「イヤだ」ときちんと伝えることができれば苦痛な状態を変えることができますし、相手の理解も得られ、トラブル回避につながります。

これらは子どもが自ら安心できる環境を整えるために必要な力です。ただ、これらの力はすぐには身につくものではないので、少しずつ経験を積ませてあげてください。

困っているなと思ったら「一緒にやる?」と声をかけ、手伝ってもらえばできるという経験をさせる、嫌だと思っているだろうときに「イヤなのかな?」と声をかけきちんと「イヤ」を言う経験をさせる、子どもと他の人の要求がぶつかる場面で譲歩したり、交渉する経験をさせる、などです。

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