【子どものアレルギー】親から遺伝する?「アレルギーマーチ」「寒暖差アレルギー」などを専門医が解説

専門医に聞く子どものアレルギーQ&A 2024年・春夏版 後編

ライター:山口 真央

▲親のアレルギーは子どもに遺伝する?小児科・アレルギー専門の医師・岡本先生にお聞きしました(写真:アフロ)
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春に子どもにくしゃみや鼻水の症状が出ると「風邪と花粉症のどっちだろう」と悩んだことはありませんか。また親のアレルギーは子どもに遺伝するのか、心配する親御さんもたくさんいるでしょう。

そんな花粉症やアレルギーにまつわる悩みを解決するべく、小児とアレルギーの専門医である岡本光宏先生にQ&A方式でお答えいただきました。

「子どもの花粉症とその治療」についてお伺いした第1回に続き、第2回では「子どもにまつわるアレルギーの知識」を紹介。アレルギーを発症する割合や遺伝の有無、アレルギーを抑えるためにできることや、抑えておきたい疾患の情報などをご解説いただきます。

【岡本光宏(おかもと・みつひろ)先生:小児科専門医・アレルギー専門医。姫路赤十字病院、明石医療センター勤務後、兵庫県立丹波医療センター小児科医長を経て、「おかもと小児科・アレルギー科」を開院。新生児から思春期の心の疾患まで幅広く診察。3児の父】

アレルギーは遺伝する?割合は?

Q.親のアレルギーは、子どもに遺伝しますか。

A.遺伝するかしないかでお答えすると、アレルギー体質が遺伝する可能性はあります。しかし、環境からの要因もかなり大きいと言えます。

近年「スギ花粉症」を発症する子どもが増えているのは、環境の変化が原因です。

もしアレルギーをお持ちの親御さんは、子どもがアレルギーを発症したからと言って、自分を責める必要はありません。

それよりは、環境によって引き起こされるアレルギーにどう対応し、処置していくかを考えていきしょう。

Q.子どもが「アレルギーを発症する割合」はどのくらいですか?

A.近年のデータでは、アトピー性皮膚炎は3歳までの累積発症率が31.6%、食物アレルギーは1歳児の約10%、3歳児の約5%、気管支喘息は小児の約15%が発症するとあります。

調査方法にばらつきがあり正確な情報とは言いづらいのですが、親御さんの世代がお子さんだった頃に比べると、増えていることがわかります。

しかし、子どものうちに発症したアトピー性皮膚炎や食物アレルギーは、治りやすい傾向にあります。

アトピー性皮膚炎の「累積発症率」は、3歳までに1度でもアトピーと診断された人の割合なので、3歳の時点では「治っている」子どももたくさんいます。また成長する段階で、他のアレルギーに変化していく子どもも多いです。

成長段階で変化「アレルギーマーチ」とは

Q.成長する段階で他のアレルギーに変化する「アレルギーマーチ」について教えてください。

A.「アレルギーマーチ」は、アトピー皮膚炎からじまって、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギーが、順番にやってくる症状を指します。

今のところ「アレルギーマーチ」の原因や治し方は不明のため、「舌下免疫療法」がもっとも効果的と言えるでしょう。

舌下免疫療法は「舌の下に薬を入れて飲み込む」だけの簡単な治療法ですが、長期間続ける必要があります。

治療を始める前に検査が必要な場合もあるので、詳しくはかかりつけ医に相談すると良いでしょう。

Q.最近「寒暖差アレルギー」という言葉もよく聞きます。どのようなものですか?

A.「寒暖差アレルギー」は、アレルギーではありません。

寒いところから暖房の効いた部屋に入る、または、温かいものを食べると鼻水が出る症状は「血管運動鼻炎」と言われるものです。寒暖差で鼻粘膜の血管が腫れる症状を指します。

寒いところに行くと蕁麻疹(じんましん)が起きる「寒冷蕁麻疹」もあります。

突発性蕁麻疹の一種で、こちらも非アレルギー性の疾患です。アレルギーと一括りにせず、症状がでる条件をあつめて、医師に相談するようにしましょう。

また子どもによくみられるものとして「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」があります。特定の食べ物を食べたあとに運動すると、アナフィラキシーを起こす病です。

心配しすぎる必要はありませんが、このような疾患があることも、知識として抑えておきましょう。

子どもの発達にも影響するアレルギー症状

Q.子どものアレルギー発症を抑えるには、徹底的に部屋をきれいにした方がいいですか。

A.じつは、そうとも言い切れません。というのも、お勧めしている「舌下免疫療法」は、アレルゲン(アレルギーの原因物質)のエキスを摂取して、免疫をつける方法です。

たとえば、ペットを小さな頃から飼っているとアレルギーが減るという仮説もあり、清潔さがアレルギーの発症を抑えるとも言い切れないのです。

「布団クリーナーで1日1回は布団を掃除しましょう、ぬいぐるみやクッションは全部捨ててください!」と言ったところで、ダニが1匹もいなくなることはありません。

それよりは、家族が快適な空間であることが一番です。掃除は無理のない範囲内で取り組みましょう。

Q.最後に、アレルギー性鼻炎や花粉症の子どもを持つ親御さんに、メッセージをお願いします。

A.鼻炎は生命にかかわる病ではありません。しかし鼻水やくしゃみ、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が強くなれば、日々の生活に支障をきたします。

アレルギー症状がひどい場合、睡眠を阻害されることも考えられます。充分な睡眠が取れなければ、日中のパフォーマンス低下につながります。睡眠障害は、子どもの発育にも大きく関わってくるのです。

10代から20代は、受験や就職活動などがあり、人生を決める大切な時期です。「舌下免疫療法」は長い期間をかけてアレルギーを治す方法です。即効性がないので、親御さんが5年後・10年後を見越して、計画的にはじめる必要があります。

アレルギー性鼻炎をしっかりコントロールして、子どもが本来の力を発揮できるようサポートしましょう。

【小児とアレルギーの専門医である岡本光宏先生に、子どもの花粉症について低年齢化の理由や、受診の注意点、免疫療法についてお聞きした「前編」に続き、今回の「後編」では、子どもにまつわるアレルギーの知識を解説。アレルギーを発症する割合や遺伝について、アレルギーを抑えるためにできることや、抑えておきたい疾患の情報などをお伝えしました】

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おかもと みつひろ

岡本 光宏

小児科専門医・アレルギー専門医

おかもと小児科・アレルギー科院長。日本小児科学会小児科専門医、認定小児科指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床研修指導医、日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命処置法インストラクター。 2009年奈良県立医科大学部卒業。同年神戸大学大学院医学研究科小児科学分野に入局。姫路赤十字病院、明石医療センターを経て、2019年より兵庫県立丹波医療センター 小児科医長。 2023年7月、兵庫県三田市で「おかもと小児科・アレルギー科」を開院。新生児から思春期の心の疾患まで幅広く診察している。3児の父として、子育てにも積極的に関わる。 著書に『研修医24人が選ぶ小児科ベストクエスチョン』(中外医学社)、『小児科ファーストタッチ』(じほう)など。 サイト「笑顔が好き」 https://pediatrics.bz/

おかもと小児科・アレルギー科院長。日本小児科学会小児科専門医、認定小児科指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、臨床研修指導医、日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命処置法インストラクター。 2009年奈良県立医科大学部卒業。同年神戸大学大学院医学研究科小児科学分野に入局。姫路赤十字病院、明石医療センターを経て、2019年より兵庫県立丹波医療センター 小児科医長。 2023年7月、兵庫県三田市で「おかもと小児科・アレルギー科」を開院。新生児から思春期の心の疾患まで幅広く診察している。3児の父として、子育てにも積極的に関わる。 著書に『研修医24人が選ぶ小児科ベストクエスチョン』(中外医学社)、『小児科ファーストタッチ』(じほう)など。 サイト「笑顔が好き」 https://pediatrics.bz/

やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。