赤ちゃんと子どものあざ 気になる原因・治療法・保険適用について専門医が解説

レーザー専門医・矢加部文先生が解説【前編】赤ちゃんや子どものあざQ&A

日本形成外科学会専門医、日本レーザー医学会専門医:矢加部 文

赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層が悩む「あざ(母斑)」について専門医に聞く(写真:アフロ)

一般的に「あざ」というと、打ち身などでできる出血斑を思い浮かべる人も多いでしょう。一方、生まれつきや成長と共にあらわれるあざを「母斑」といいます。自然に治癒する出血斑とちがい、母斑は自然にきえることはありません。

以前は手術を受けるしかなかったあざ(母斑)の治療。現在ではレーザー治療が一般化し、赤ちゃんへの治療も安全にできるようになっています。治療へのハードルが下がった一方で、赤ちゃんや子どものあざについて「様子を見ていいの?」「すぐ治療したほうがいいの?」と悩まれるお母さんやお父さんもいるのではないでしょうか。

赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層が悩むあざについて聞く連載は前後編。前編となるこの記事では、あざ治療のスペシャリストである、レーザー専門医・矢加部文先生に、あざにまつわる疑問にお答えいただきました。

▲矢加部文先生

【矢加部文(やかべ・あや)】日本形成外科学会専門医、日本レーザー医学会専門医・指導医。長崎大学医学部卒業後、長崎大学形成外科入局。長崎大学病院・長崎医療センター・福岡徳洲会病院で形成外科勤務を経て、福岡大学形成外科 レーザー外来・美容医療を担当。2016年に「形成外科・美容皮膚科 みやびクリニック」を開院。赤ちゃんからシニア世代まで1万人以上のあざ治療に関わる。

あざ(赤あざ/青あざ/茶あざ/黒あざ)はなぜできる?

──「あざ」と一口に言ってもいろいろあると思うのですが、あざはなぜできるのでしょうか?

矢加部先生:
あざには「赤あざ」「青あざ」「茶あざ」「黒あざ」など、さまざまな種類があります。それぞれ原因が違うのですが、まずは皮膚の構造からお話しします。

▲皮膚の構造(出典:「こどもの「あざ」への不安がなくなる本」より)

人間の皮膚は「表皮」と「真皮」の2層構造になっていて、その下に皮下組織があります。この2層の境目に「メラノサイト(色素細胞)」というメラニン色素を含む細胞が並んでいます。日焼けすると黒くなるのは、メラニン色素が増えてメラノサイトの色が濃くなるからです。

このメラニン色素がメラノサイト以外の場所に多く集まることがあり、表皮の浅い部分に集まると茶あざに、真皮に集まると青あざになります。

また、真皮やその下の皮下組織には血管があって皮膚に栄養を送っていますが、血管が不必要に増えることがあります。これが赤あざです。

黒あざは「母斑細胞(ぼはんさいぼう)」という黒色の細胞が皮膚の層すべてや、皮下脂肪にまで及んだ状態です。

皮膚の構造のどこに変化が起きるかによって、あざの色が違ってきます。

妊娠中の過ごし方は「あざ」に無関係 「迷信」も否定

──生まれつきあざがある場合や、成長過程であざが出てくることがありますが、それぞれ原因はあるのでしょうか?

矢加部先生:
赤ちゃんの生まれつきのあざも、成長過程で出てくるあざも、どちらも原因不明です。

「妊娠中の風邪が原因であざができたのかも」と悩まれるお母さんもいますが、妊娠の経過や妊娠中の過ごし方が赤ちゃんのあざの有無に影響することはないので安心してください。

妊娠中に火事を見たり、お葬式に参列したりすると子どもにあざができるという迷信もありますが、これもまったくのうそです。

欧米では、あざは「バースマーク」と呼ばれ「天使にキスマークを付けられて生まれてきた」と喜ぶ文化があります。私も「この子がかわいい子だから神様が目印をつけているのよ」と伝えています。

成長過程で出てくるあざについても、日焼けやケガが原因ということはありません。

赤ちゃん・子どもの「3大あざ」異所性蒙古斑/単純性血管腫/乳児血管腫

──赤ちゃんや子どものあざで多いのはどのようなあざでしょうか?

矢加部先生:
当院では、あざに対してレーザー治療を行っています。2022年の当院でのレーザー治療数は1875症例あり、そのうち約80%が0~3歳未満でした。

疾患でいうと、異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)と単純性血管腫(たんじゅんせいけっかんしゅ)と乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ)の3つが多いですね。

▲体の青あざ‐異所性蒙古斑

異所性蒙古斑
生まれつきお尻や腰にできる青あざを蒙古斑(もうこはん)と言いますが、お尻や腰以外にできることがあり「異所性蒙古斑」といいます。大半は学童期までに薄くなっていきますので、経過観察が基本となります。ただし、色が濃い場合、大人になっても残ることがあります。

▲単純性血管腫‐サモンパッチ

単純性血管腫─サモンパッチ
赤ちゃんのおでこの真ん中や上まぶたにできる赤あざ。ほとんどの場合、1歳~1歳半ごろまでに薄くなりますので、経過観察となります。

▲単純性血管腫─ウンナ母斑

単純性血管腫─ウンナ母斑
赤ちゃんの頭部からうなじにかけてできる赤あざ。3歳ごろまでに薄くなることが多いです。生まれつきある赤あざで「コウノトリのくちばしのあと」とも表現されます。

▲単純性血管腫‐先天性血管腫・ポートワイン母斑

単純性血管腫─先天性血管腫・ポートワイン母斑
真皮の毛細血管の部分的な異常によってできる進行性の赤あざ。色は明るいピンク色、紅色、レンガ色、紫色などさまざまです。無治療のまま年齢を重ねると、血豆のような血管腫になることもあります。

▲乳児血管腫‐いちご状血管腫

乳児血管腫─いちご状血管腫
生後数週間であらわれる赤あざ。いちご状のぶつぶつしたふくらみができ、急速に広がったり盛り上がったりします。体のどこにでも発症します。

これらのあざに対してレーザー治療を行うことで、目立ちにくくしたり、広がるのを防いだりできます。

──相談件数が多いのはどのようなあざでしょうか?

矢加部先生:
相談に来られる件数で最も多いのは、薄い茶あざですね。本当に薄い茶あざだと、レーザー治療したほうが目立つ場合があるので、治療をしないことも多いです。レーザー治療は、丸型のスポットですき間なく照射していくのですが、効く部分と効きにくい部分で皮膚の色がまだらになってしまうことがあるので。

あざの種類や場所、色の濃さなどによって、治療の必要性や方法、タイミングは変わってきますね。

「いちご状血管腫」は早期治療 受診のタイミング

──早めの治療が効果的なあざはあるのでしょうか?

矢加部先生:
いちご状血管腫は大きくなるスピードが速いので、早めに治療したほうがいいですね。1歳までは増大していくのですが、とくに3~7ヵ月までは急速に大きくなります。目や口周り、鼻などにあると、大きくなった血管腫によって視覚や呼吸、食事に影響することも。レーザー治療や内服治療が効果的なので、早めの治療をおすすめします。

また、手足1本の広範囲に広がる赤あざの中には、あざがあることで血行が良くなりすぎて、左右で手足の長さが変わってしまうものがあります。1歳未満からの治療が効果的なので、早めに受診したほうがいいですね。
非常にまれですが「クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群」という、手足1本の広範囲に赤あざがあり、手足の長さの左右差や、骨や軟骨の肥大がみられる病気もあります。

顔にできる「太田母斑(おおたぼはん)」という青あざは、生まれつきや乳児期に発症することが多いですが、思春期ごろにあざがはっきり出る場合もあります。皮膚の厚みが薄く、面積も小さい乳児期からレーザー治療を受けたほうが効果的です。

──あざが「がん」や病気の兆候になることはあるのでしょうか?

矢加部先生:
あざががんになることはめったにありません。背中一面に広がる黒くて毛が濃いあざ(獣皮様母斑)は、まれに悪性化することもあるので、経過観察しながら疑わしきときは手術を行います。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群のように、あざを伴う病気はいくつかありますが、非常にまれなのでさほど心配する必要はありません。

レーザー治療の安全性 赤ちゃんの方が治療回数が少ない理由

──赤ちゃんへのレーザー治療は安全なのでしょうか?

矢加部先生:
レーザー治療と聞くと痛みを心配されるかもしれませんが、治療技術やレーザー機器の進歩によって、痛みも最小限に抑えられるようになっています。

赤ちゃんのころにレーザー治療をするほうが、皮膚の厚みが少ないので、レーザーがあざの目的の位置まで届きやすく、治療回数が少なく済むという利点があります。

3~4歳頃になると、体動を制限することで暴れる子もいるので、赤ちゃんのころのほうがより安全に治療が行えます。よく動く子の場合は、無理に押さえつけずに、タオルで体を巻いて負担をかけないように治療します。

──成長してからのレーザー治療だと効果は低いのでしょうか?

矢加部先生:
大きくなってからのレーザー治療でも、あざが薄くなる可能性は十分あります。ただし、体の成長と同じ割合であざも大きくなり、乳幼児期に比べて皮膚も厚くなっているため、回数は必要になります。

レーザー治療が一般化したのが2010年代なのですが、今まで治療の機会がなかった40代以上の人も治療に来られています。あざが薄くなったことで喜ばれている患者さんが多くいます。

治療の相談先 保険適用になる「あざ」と「治療法」

──子どものあざが気になったら、もしくは子どもが気にしたら、どこに相談すればいいでしょうか?

矢加部先生:
近くの小児科・皮膚科を受診して、当院のような、あざの専門クリニックにご紹介いただくのが望ましいですが、難しい場合は大学病院や子ども病院などへご紹介してもらうと良いと思います。

──あざ治療は保険適用でしょうか?

矢加部先生:
あざ治療のうち、黒あざや茶あざの表皮母斑の切除などの手術は、保険適用になります。

また、青あざ、赤あざ、茶あざのレーザー治療で、厚生労働省の規定をクリアしたレーザー機器を使用した場合は保険適用になります。ただし、茶あざのみ保険適用は2回までで、3回目以降のレーザー治療は自費です。黒あざはレーザー治療の効果が低いため、保険適用ではありません。

子どもの場合は、子ども医療費助成制度が利用できれば、負担は非常に少なくなります。助成内容はお住まいの自治体によって異なりますが、自己負担額が500円になったり、無料になったりする場合もあります。

ただし、保険適用にならないレーザー機器を用いてあざ治療を行っている医療機関もあるので、受診前にホームページや電話などで確認しておくと安心です。

子どものあざに悩む保護者に伝えたいこと

──「あざは個性」という声もありますが、子どものあざを治療すべきか悩むお母さん・お父さんへ先生からご意見をお願いします。

矢加部先生:
子どもの体にあざがあることで、不安に思われるお母さん・お父さんは多くいますが、あざがあれば全部治療すべきというわけではありません。あざ治療の必要があるかどうかの、大きなポイントは2つあります。

◾️ポイント1:いちご状血管腫がどんどん大きくなり、機能障害をきたす可能性がある場合や、手足まるごと1本赤あざに覆われることで長さに左右差が出る可能性がある場合

◾️ポイント2:見える部位に赤あざや青あざや黒あざがあり、他人から指摘を受けたり、気になったりすることで、本人や家族がストレスに感じている場合

逆に言えば「目を凝らさないとわからないような、見えない場所にあるあざ」については、過度な治療は勧めません。なぜなら、レーザー治療を受けることで傷や傷あと、色ぬけ、色素沈着などの副作用が出ることがあるからです。

「そのあざはどうしたの?」「けがをしたの?」と聞かれたことがないなら、きっと他の人にはそのあざは見えていないでしょう。あざが重篤な病気の原因になることはありませんし、治療の必要はないと考えます。

「あざはこの子にしかない特別な印」と捉えることができれば、きっと子ども自身もあざに対してポジティブな感情を持ってくれるでしょう。

「治療を受けたほうがいいのか」「様子を見ても大丈夫なのか」など、あざについて心配なこと、不安なことがあれば、小児科や皮膚科、あざの専門クリニックなどの医療機関に相談してくださいね。

【赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層が悩む「あざ(母斑)」について聞く連載は前後編。あざ治療のスペシャリストである、レーザー専門医・矢加部文先生に、あざにまつわる疑問にお答えいただいた前編に続き、後編では「あざ治療の今」についてうかがいます】

取材・文/広田沙織(メディペン)

こどもの「あざ」への不安がなくなる本(著:矢加部 文)
やかべ あや

矢加部 文

Aya Yakabe
日本形成外科学会専門医、日本レーザー医学会専門医

日本形成外科学会専門医、日本レーザー医学会専門医・指導医。長崎大学医学部卒業後、長崎大学形成外科入局。長崎大学病院・長崎医療センター・...

めでぃぺん

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医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか...