5歳で腰痛! 「子どものロコモ」3つの原因と症状・5つのチェック項目〔専門医が解説〕

整形外科医・林承弘先生に聞く「子どものロコモティブシンドローム」 #1 原因と症状、5つのチェック項目について

整形外科医:林 承弘

子どもの猫背やつまづきやすさは、実は「子どもロコモ」かも?     写真:アフロ

近年、子どもの遊びはゲームが主流に。また、現代の子どもたちは習い事が多く、外で遊ぶ時間が少なくなったことで、体を動かす機会が減っています。

そのため、「転びやすくなった」「姿勢が悪い」「疲れてすぐ座りたがる」などの症状が出る子も。そこで心配されるのが、子どもの運動機能低下を指す「子どものロコモティブシンドローム」、通称「子どもロコモ」です。

「コロナ禍で子どもロコモが一層進んだ」と話すのは、子どものロコモ予防・対策に取り組む林整形外科院長・林承弘先生。子どものロコモについて、原因と症状を林先生に解説していただきました。

(全3回の1回目)

子どもロコモと大人のロコモの違い

──まずは、子どものロコモティブシンドロームについて教えてください。

林承弘先生(以下、林先生):ロコモティブシンドロームとは、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」と、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」からつくられた造語で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。通称「ロコモ」と呼ぶことが多いですね。

これまではロコモというと、バランス能力や柔軟性の低下、不良姿勢など、40代以上の中高年の運動器機能低下として指摘されていましたが、最近では子どもにもロコモの症状が見られるようになりました。

ただ、大人のロコモと子どもロコモでは兆候が異なります。

大人のロコモの兆候は「階段が上がりづらくなる」「速く歩けない」「すり足になってつまずきやすい」の3つで、老化現象による運動器の障害を指します。興味深いのは、これらの兆候がコロナ禍の長期休校明けに、子どもの1割弱に見られたことです。

しかし、子どもロコモのチェック項目は大人とは異なります。

子どもロコモ5つのチェック項目

子どもロコモには、以下の5つの項目をチェックします。

出典:ストップ・ザ・ロコモ協議会

【子どもロコモチェック項目】
①5秒以上ふらつかずに片足立ちすることができない

②しゃがみ込むとき、途中で止まったり、後ろに転んだりする

③両手を上げたとき、手の先から肩にかけて垂直にならない

④立って体を前にかがめたとき、ひざを伸ばしたまま手の指を床につけられない

⑤手をグーにしてひじを引いたあと、パーに開いて腕を前に出す動作をスムーズにできない

子どもロコモ3つの原因

林先生:子どもにとって、普段の運動や、外遊び、生活習慣がとても大事なこと。

私が十数年ずっと子どもたちを見てきて、子どもの外遊びが圧倒的に減ってきていることが子どもロコモの増えた大きな原因ではないかと思っています。さらに今回のコロナ禍で、その傾向が増している印象です。2020年に自粛生活を送った、今の小学校低・中学年は、特にそうだと言えるのではないでしょうか。

また、2016年から、小学1年生から高校3年生までの全学年を対象に、学校健診において「運動器検診」が必須化されたのですが、この検診で私が特に気になっていることは、子どもたちの姿勢が猫背なこと。そしてアゴが前に出ている子どもが多いことです。姿勢が悪い子どもは、腕がまっすぐ上に上がりません。これは肩甲骨まわりが、ガチガチに固くなっている状態だからです。

【子どもロコモ3つの原因】
①運動習慣の変化
成長期の運動不足あるいは激しい運動のしすぎにより、からだの柔軟性が低下

②生活習慣の変化
外遊びをする機会が減ったことにより、小さなケガをすることも少なくなり、危険回避能力が低下

③姿勢不良
長時間のテレビゲームやスマートフォンの使用により、あご出しやねこ背など姿勢が悪くなりやすい

林先生:外遊びをしないでいると、股関節周りが固くなり、体前屈ができなくなります。しゃがむと転倒して床にお尻をついてしまうことも。これは以前から多かったのですが、今回のコロナ禍で、さらに増えたと感じています。身体の使い方がわからない子が増えていると考えられます。

「林整形外科」院長・林承弘先生。林先生は「全国ストップ・ザ・ロコモ協議会」の理事長を務められています。

──林先生が、子どもにロコモの症状が出ていると気づいたのはいつごろでしょうか?

林先生:埼玉県教育委員会と協力して、埼玉県のモデル事業として「埼玉県学校運動器検診」を2010年~2013年に行いました。その際、校長先生や養護の先生から、「どうも最近、子どもたちの体の様子が変」という話をよく聞くことがあったんです。

例えば、「雑巾がけをしていて、体を支えきれずにあごをついて倒れてしまう」「転倒したときに、手が出ず頭を打ってしまう」「先生とキャッチボールをしているとき、たった数メートルの距離でもボールが顔面に当たってしまう」などです。

出典元:全国ストップ・ザ・ロコモ協議会
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