子どもの夏風邪 「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」 原因・症状・対処法を小児科医が解説
夏にかかりやすい子どもの病気#2「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」
2022.07.01
小児科医:渋谷 紀子
夏風邪の中で最も感染力が強い「咽頭結膜熱(プール熱)」
咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)は、夏にプールで感染するといわれたことから「プール熱」と呼ばれていますが、実際の感染経路はプールの水を介するよりも飛沫感染や、感染した子どものタオルなどを触った手指からの接触感染です。
1) 咽頭結膜熱(プール熱)ってどんな病気なの?
アデノウイルスが原因の感染症で年間を通して見られますが、特に夏に発症する人が増えます。かかりやすい年齢は5歳以下ですが、小学生でも感染することは珍しくなく、夏風邪の中でも感染力が強いので注意が必要な病気です。
感染のピークは6〜8月ごろ。感染の経路はウイルスを含んだくしゃみなどを吸い込むことで感染する飛沫感染と、感染した子のタオルやオムツについたウイルスが手について、その手で口や鼻を触って粘膜から感染する接触感染です。
家族間や子どもの友達間で感染が広がらないように、タオルの共有はしないことと、手を清潔にすることが大切です。塩素消毒が不十分なプールでは、名前の通りプールの水を介して感染することもあります。
5〜7日の潜伏期間を経て、咽頭炎(のどの痛み)、結膜炎(目の充血や目やに)、39〜40度の高熱で発症します。熱は4日~1週間程度続くことがあるでしょう。
3つの主だった症状の出かたには強弱があり、人によっては結膜炎がほとんど見られないこともあります。
熱が続くようなら体力の消耗が激しいので水分補給と栄養補給が重要です。できるだけ子どもが口にしやすいスープやゼリーなどを与えましょう。のどが痛むようなら、喉ごしのいい食事を心がけることが大切です。
2) おうちでの応急処置と病院での対処法
熱でつらいときには市販の解熱剤を使ってOKです。高熱が続く場合は、脱水症にならないように水分をこまめに与えましょう。
病院では咽頭結膜熱(プール熱)を疑った場合、迅速キットを使ってウイルスの検査をして診断することができます。
ただ、咽頭結膜熱だと診断しても、特効薬や特別な治療法がないため、熱がつらいなら解熱剤、のどが痛むならうがい薬の処方など、つらい症状を和らげる対症療法になります。
結膜炎に対し、点眼薬が処方されることもありますが、目の症状が強い場合は眼科の受診を勧められる場合もあります。
熱は1週間程度で自然に下がり、それとともにのどの痛みや目の症状もおさまります。
3)集団生活への復帰タイミングとは?
咽頭結膜熱(プール熱)は学校保健安全法が定める学校感染症のひとつです(保育園児の場合は「保育所における感染症対策ガイドライン」に沿った基準になります)。
主な症状が消えて2日経過するまで出席停止です。登園・登校許可証を求められている場合は再度、受診して医師の判断を仰ぎましょう。
4)そのほかの注意事項について
アデノウイルスは非常に感染力が強いので、タオルを共有しないのはもちろんのこと、子どもをケアしたあとは手をよく洗うことが大切です。また、結膜炎の症状が強く出ている場合には、目やにはティッシュで拭き取り、分泌物に触れないようにして捨てましょう。
さらに、病気が治ったあとでも1ヵ月程度、ウイルスは唾液や便に検出されるので、感染防止対策は回復後も引き続き行うことが大切です。
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第3回は、夏の代表的な皮膚トラブルである「とびひ」と、はやり目とも呼ばれる「流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)」について紹介します。
取材・文/梶原知恵
梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
渋谷 紀子
愛育クリニック院長兼小児科・母子保健科部長。日本小児科学会専門医・認定指導医。日本アレルギー学会専門医。東大病院小児科、愛育病院小児科などでの勤務後に、カナダのトロントにて研究留学。帰国後、東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。 【主な監修書】 『0-5歳児 病気とケガの救急&予防カンペキマニュアル』(学研プラス) 『はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア(実用No.1シリーズ)』(主婦の友社)など
愛育クリニック院長兼小児科・母子保健科部長。日本小児科学会専門医・認定指導医。日本アレルギー学会専門医。東大病院小児科、愛育病院小児科などでの勤務後に、カナダのトロントにて研究留学。帰国後、東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。 【主な監修書】 『0-5歳児 病気とケガの救急&予防カンペキマニュアル』(学研プラス) 『はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア(実用No.1シリーズ)』(主婦の友社)など