子どもの夏風邪 「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」 原因・症状・対処法を小児科医が解説

夏にかかりやすい子どもの病気#2「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」

小児科医:渋谷 紀子

夏風邪のうち、ヘルパンギーナと咽頭結膜熱(プール熱)は高い熱が出ます。  写真:アフロ

夏風邪の代表といわれる3つのウイルス感染症があります。それが前回紹介した「手足口病」と今回紹介する「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ、またはプール熱)」です(全4回の2回目。#1を読む)。

夏風邪のウイルスは感染力が強いため、症状が見られた場合は家族間や友達間で感染が広がらないように距離を置いたり、タオルなどを共有しないといった対策が必要です。

第2回では、2つの病気の原因や症状、その対処法などを愛育クリニック院長である渋谷紀子先生に詳しく解説いただきます。


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のどの入り口にブツブツができて痛い!「ヘルパンギーナ」

ヘルパンギーナは急に熱が出て、のどの入り口に水ほうができるのが特徴です。同じように口の中にブツブツができる夏風邪には「手足口病」がありますが、こちらは頬の裏の粘膜や口の周り、手足に発疹が見られるという違いがあります。

ヘルパンギーナはのどが腫れて、のどの入り口にブツブツができるため、食事がしづらくなります。  写真:アフロ

1) ヘルパンギーナってどんな病気なの?

コクサッキーウイルスA群が主な原因ですが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスも原因となる感染症です。複数の原因ウイルスがあるため何度もかかることがあります。

この病気にかかりやすい年齢は5歳以下で、感染のピークは7〜8月ごろです。

ウイルスを含んだくしゃみなどを吸い込むことで感染する飛沫感染が主な感染経路ですが、便からも感染するため、オムツの処理後は手洗いをしっかり行う必要があります。

2〜4日の潜伏期間を経て、突然38度〜40度の高熱が出るのと同時にのどが赤く腫れて、のどの入り口に大小の水ほうができるのが特徴です。熱は急に上がるので、熱性けいれんを起こす子もいます。

口の中のブツブツは破れると痛みを伴う潰瘍になり、つばを飲み込むのがつらくて不機嫌になったり、よだれがたくさん出ることがあります。飲み込みづらいために吐くこともあるでしょう。

子どもがけいれんを起こしたらどうすればいい?

熱性けいれんは小さなお子さんで急に熱が上がるときに見られ、白目をむいて全身を突っ張ったり、ガクガクと手足を震わせたりする症状が特徴です。

けいれんが起きた場合には、子どもを横向きに寝かせて吐いたものがのどに詰まらないようにし、衣服をゆるめて様子を見ます。舌を噛まないように口にものをくわえさせるのは危険です。呼びかけになんらかの反応が出てくるなど、落ち着いたところで受診しましょう。

多くの場合、2〜3分でおさまりますが、5分以上続くようなら至急、病院へ行きましょう。

2)おうちでの応急処置と病院での対処法

発熱には市販の解熱剤を使ってOKです。のどや口の中が痛い場合は水を飲むのも嫌がるかもしれませんが、脱水症にならないように水分をこまめに与えることが大切です。

また、食事がうまくできない場合は、喉ごしのいいスープや口当たりのいいプリン、ゼリー、アイスなどを与えるといいでしょう。

ヘルパンギーナには特効薬や特別な治療法はありません。解熱剤には鎮痛効果もありますので、熱やのどの痛みでつらそうなときは、解熱剤を処方されることが多いでしょう。脱水症状が見られた場合は点滴をすることがあります。

熱は2〜3日で下がります。のどの水ほうは熱が下がってから2〜3日で消えていくでしょう。ブツブツが破れて潰瘍になった場合は、ふさがるまでのどや口の中を痛がります。

3)集団生活への復帰タイミングは?

熱が下がり、しっかりと食事ができて、子どもの全身状態がよければ復帰して大丈夫です。

4)合併症やそのほかの注意事項について

ごくまれに脳の周りを覆っている髄膜に炎症が起こる髄膜炎(ずいまくえん)や、心臓の筋肉に炎症が生じる心筋炎(しんきんえん)を起こすことがあります。嘔吐やぐったりした様子が続く場合は、受診しましょう。

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