「子どもの喘息」治療法と家庭内対策をアレルギー専門医がわかりやすく解説

アレルギー専門医・南部光彦先生に聞く「子どもの喘息」 後編 ~受診時に伝えるポイント・治療法・家庭内対策~

小児科専門医・アレルギー専門医:南部 光彦

子どもの喘息の治療法とは?  写真:maroke/イメージマート
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呼吸時に「ゼーゼー、ヒューヒュー」鳴る、咳が止まらないといった症状が出る喘息。

「『いつから喘息の発作が出ているのか』は非常に大事です。それと同時に、保護者の方は、朝・昼・夜・寝ているとき、どのタイミングで症状が出ているのかを把握することも重要になってきます」とは、なんぶ小児科アレルギー科院長・南部光彦先生。

後編では、子どもが喘息と診断されたとき、医療機関の受診の際に伝えるポイントや、家庭でできる対策などをお聞きしました。

(全2回の後編。前編を読む)    

南部 光彦(なんぶ・みつひこ)
なんぶ小児科アレルギー科院長。小児科専門医・アレルギー専門医。京都大学医学部附属病院などを経て、1995年に天理よろづ相談所病院へ。小児科部長、小児アレルギーセンター長を務める。2017年になんぶ小児科アレルギー科を開設。『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020』の統括委員会委員。

診察では「いつ・どんなときに症状が出るのか」を伝える

──喘息で医療機関を受診するときに、医師に伝えるべきポイントを教えてください。

南部光彦先生(以下、南部先生):「いつから喘息の発作が出ているのか」は非常に大事です。それと同時に、症状がひどいのは朝・昼・夜・寝ているときのいつなのかと、さらに時間帯が分かれば伝えてください。というのも、家では症状がひどかったのに、受診しているときは全く症状がないこともあります。どのタイミングで症状が出るのかを把握しておいてもらえると、スムーズな診断につながります。

例えば、家の中で走り回ったあとに症状が出ているのであれば、ダニアレルギーの可能性があります。同じように、ペットを飼っているおばあちゃんの家に行った後や、風邪をひいたときなど、どんな状況で症状が出ているのかも治療のヒントになります。冬場に外を走った後に咳が出るのであれば、冷たい空気の刺激によって喘息の症状が出ているのかもしれません。

いつ、どんな状況で症状が出ているのか、保護者の方はよく見ておいてくださいね。

子どもができる検査とは?

──喘息ではどのような検査をするのでしょうか?

南部先生:まず、どういうときに発作が出るのか、またどんな生活環境かを聞いたうえで、必要に応じてダニやペットの毛・フケ、カビ、食物に対するアレルギーがあるのかどうかを調べる血液検査を行います。

次に、気道の炎症を調べる「呼気NO(エヌ・オー)」検査を行います。これは、マウスピースを口にくわえて息を吐き出し、呼気中に含まれる一酸化窒素の量を測るものです。気道でアレルギーの炎症が起きているかどうかを調べることができます。

また、「スパイロメトリー」という呼吸機能検査では、肺に出入りする空気の量を測定し、気道狭窄(きどうきょうさく)の状態を見ます。呼気NO検査もスパイロメトリーも、検査には呼吸のコントロールが必要なので、目安として5歳以上にならないと検査はできません。

検査によって狭窄(きょうさく)があると分かれば、気道の可逆性を調べます。これは、気管支拡張薬を使って、気道が元にもどるかどうかを見ていくものです。

また「気道過敏性テスト」を行うこともあります。これは気管支収縮薬を濃い濃度から吸わせて、徐々に濃くしていく検査です。喘息の発作が起こる可能性があるため、専門医がいる病院で行われます。小学校高学年くらいから行うことができます。

発作が起きたときはどうすればよい?

──喘息と診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか。

南部先生:薬で治療をしていきます。治療で使われる薬には2種類あり、一つは長期管理薬です。これは発作が出ていないときにも使い続けて、気管支の炎症を鎮めて発作を予防するもの。もう一つは、発作のときだけ使う発作治療薬で、気管支を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬などがあります。

発作のときだけ使う発作治療薬には炎症を抑える効果はありません。炎症が治まらない限り、喘息の発作がくり返されます。そのため長期管理薬でしっかり炎症を改善していくことが大切なのです。

──発作が起きたときにはどう対処すればよいでしょうか。

南部先生:狭くなった気道を広げる発作治療薬で症状を抑えます。発作治療薬の代表的なものは、管支拡張薬です。吸入薬と飲み薬がありますが、即効性は吸入薬のほうがあります。

また呼吸困難がある、食事がとれない、横になれない、顔色が悪いなど、強い喘息発作のサインがあるときには、急いで医療機関を受診してください。

長期管理薬を使う期間は?

──長期管理薬はどのくらいの期間、使い続けるのでしょうか。

南部先生:長期管理薬としてよく使われるのは、吸入ステロイド薬とロイコトリエン受容体拮抗薬です。3ヵ月ほど症状のない状態が続けば、徐々に薬剤を減らし、ステップダウンしていきます。

ただ、もし薬剤を減らして症状が出る場合は、また増やしてさらに時間をかけて経過をみていきます。治療の目標は喘息の発作が出ない状態を維持することです。長期管理薬は、何年も続けないといけない場合もあります。

その間、大事なのは、日常生活の中でお子さんに喘息の軽い発作が出ていないかを注意して見ておいていただくことです。

例えば、外に出たときに冷たい空気を吸って咳が出たり、布団の上で飛び跳ねた後に「ゼーゼー」していたり、軽い刺激で症状が出てしまうことがあるからです。少し咳き込んだくらいだと、注意して記憶しておかなければ忘れてしまいますよね。

でも、特に小さいお子さんの場合は、先ほどお伝えしたような喘息の状態を調べる検査ができないことがあるため、そうしたご家庭での様子を知ることが、治療を続けるかどうかを決めるうえでの重要な情報になるのです。

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