子どもの仕上げ磨きは12歳まで!? 歯科医が選ぶ“歯磨き粉”と“虫歯予防の秘策”

歯科医に聞く子どもの最新虫歯予防#2~子どもの歯磨き粉選び&歯磨き好きにする方法

歯科医師:土持 賢一

子どもには「歯磨きをしなさい!」と命令するのではなく、お父さん・お母さんが「一緒に磨いてあげること」が大切です。  写真:アフロ

2023年1月に発表された「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法について」という4学会(日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科学会)合同の共同声明を受けて、子どもたちの歯磨き事情はどのように変わっていくのか。

後編の今回は、先の宣言を背景にした、子どもたちにおすすめの歯磨き粉に加えて、そもそも歯磨きを嫌がる子どもたちにはどのように対処すればいいかを、前回と同じく歯科医師の土持賢一(つちもち・けんいち)先生に伺いました。

※第2回(#1を読む)

歯科医師の土持先生がおすすめする、子ども用歯磨き粉について教わりました。  Zoom取材にて

フッ化物配合&研磨剤・発泡剤無配合の“ジェルタイプ”がおすすめ

──今回の声明で、年齢別に推奨される歯磨剤内のフッ化物配合割合が明確になりました。では、子どもたちはどのような歯磨き粉を使えばいいのでしょうか?

土持賢一先生(以下:土持) 歯磨剤(歯磨き粉)選びには、いくつかのポイントがあります。ひとつはもちろん、先の宣言でも重要視していたフッ化物配合割合。もうひとつは「研磨剤無配合」です。

フッ化物配合の割合が推奨よりも大きい歯磨剤はリスクがありますし、小さなお子さんが研磨剤の入っている歯磨剤を使用してしまうと、まだ幼い歯が削れてしまう可能性がある。ともに歯磨剤のパッケージに表記があるので、しっかりチェックして選んだほうがいいでしょう。

──具体的におすすめできる製品(歯磨き粉)はありますか?

土持 うちの歯科医院でよくおすすめしているのは、ジェルタイプの歯磨剤『チェック・アップ』(ライオン)です。

まず0~2歳児で、乳歯が生え始めたら虫歯ケアが始まります。とはいえ、いきなり歯ブラシを使って歯磨きをするのも刺激が強すぎるので、まずはガーゼのようなもので歯を拭って、汚れをふき取ってあげるところからスタートします。

歯が生えそろってきたら、いよいよ歯ブラシを使っての虫歯ケア。そこでおすすめなのが『チェック・アップ』です。5種類の風味で発売されていますが、そのうち「ピーチ」「グレープ」「レモンティ」はフッ化物配合割合が950ppmFなので、2歳児までならこちらを「米粒大」、3~5歳児ならば「グリンピース大」の量、歯ブラシに付けて歯を磨いてください。

6歳以上のお子さんの場合は「ミント」を選べば、フッ化物配合割合が1450ppmFなので、推奨の数値になります。こちらを、歯ブラシを覆う程度にしっかり付けて、歯を磨いてください。

──この製品をおすすめするポイントは?

土持 お伝えした「フッ化物配合割合」と「研磨剤無配合」というポイントに加えて、発泡剤も入っていないので、歯磨きのときに口の中が泡だらけになりません。今回の提言では「歯磨き後のうがいなし」を推奨していますが、口の中が泡だらけだとさすがに気持ちが悪い人も多いでしょう。

うがいをしなくとも(もしくは最小限のうがいでも)あまり気持ちが悪くならない。そんなところも、おすすめポイントですね。あとは単純に歯磨きを嫌がるお子さんでも、果物の風味が付いている歯磨剤ならば「イヤイヤ度」が少し減ったりします。

幼い子どもたちの歯磨き指導の際は、子どもたちが歯磨きを嫌がらず、きちんと習慣化してくれるように導くことが、なにより大切なんです。

──ジェルタイプの歯磨剤を使うにあたり、気を付けるべきことはありますか?

土持 この製品に限定した注意事項ではありませんが、フッ化物配合の歯磨剤は、必ずお子さんの手の届かない場所に管理してください。特に今回おすすめしたジェルタイプの歯磨剤は、フルーツの風味が付いていて美味しいこともあり、お子さんがチューブを吸うような形で飲み込んでしまう危険性もあります。

いかにフッ化物配合の歯磨剤に危険がないとはいえ、それはあくまでも通常の使用法を守ったうえでの話。前回、話したとおり、フッ素の大量摂取にリスクがありますから。

「磨きなさい」より「一緒に磨こう」 磨けたらちゃんと褒めて

──今回の提言とは関係なく、もともと歯磨きを嫌がるお子さんも少なくないと思います。そういう子に歯磨きを習慣化してもらうには、どんな方法があるのでしょうか?

土持 第一におすすめなのは「歯を磨きなさい!」ではなく「一緒に磨こう」という流れに持っていくこと。お子さんは思った以上にお父さん、お母さんの行動を見て、一生懸命に真似をするものです。単に歯の磨き方を教えるだけでなく、一緒に磨いてあげることで、お子さんが歯磨きを「見て学べる」ようになります。

さらには「ちゃんと磨けるかな?」とお子さんに問いかけて、ちゃんと磨いていたら「おぉ、すごい! 磨けてるじゃん!」とほめてあげることも大切です。

──「やりなさい!」と命令するのではなく、無理にでも時間を作って「一緒にやろう」という方向にもっていくのが大切なんですね。

土持 もちろん、子ども一人で磨く場合は上手に磨けていないこともあります。最後にはお父さん、お母さんが仕上げをしてあげる必要がある。

そのときも「ヘタだなぁ。貸してみなよ」とやるのではなく、磨いたことを一度褒めてから「じゃあ、細かいところまで磨けているか、ちょっと確認させて」という感じで、仕上げ磨きをしてあげることです。

──「仕上げ磨き」は、子どもがいくつくらいになるまで必要なのでしょうか。

土持 なんとなく、小学校低学年くらいから先は、一人で歯磨きしている子どもが多いような感じがありますよね。でも、じつは12歳くらいまでしっかりお父さん、お母さんが“仕上げ磨き”をしてあげたお子さんのほうが、将来的な虫歯のリスクも下がるんです。

うちでもそれを実践しています。うちの子は今年小学校6年生になるのですが、まだ僕が仕上げ磨きをしてあげていますよ。小さいころからの歯のケアは、大げさでなくその子の一生にかかわってくる問題です。親御さんもお忙しいでしょうが、しっかり時間を作って、子どもと一緒に歯を磨いてあげましょう。

──「歯磨き後のうがいなし」は、どこまで徹底したほうがいいですか?

土持 前回もお伝えしましたが、お子さんの中には特に“うがいなし”に抵抗感を覚えることになると思います。そういう子にはやはり“少量の水で1回だけうがい”をすることをおすすめしますね。

でも、そういう子の場合も、ちゃんと「歯磨剤を口の中に残したほうが、虫歯を予防する効果があることがわかっているんだよ」と説明してあげると、納得してくれる子も比較的、多いように思います。

発泡剤の入っていない歯磨剤の場合は抵抗感も低いと思いますが、これも無理やり押し付けることによる反動のほうがよくないので、ほどほどでいいと思いますよ。

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