子どもの夏の病気「手足口病」 手足や口に赤いブツブツが! 原因・症状・対処法を小児科医が解説

夏にかかりやすい子どもの病気#1「手足口病」

小児科医:渋谷 紀子

手足や口の中に赤いブツブツができる「手足口病」

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手足口病は、手足や口の中に赤いブツブツができる、ウイルスによる感染症です。原因となるウイルスの種類や型が数種あるため、複数回かかることがあります。

また、感染した種類や型により見られる症状に違いがあります。子どもの様子をまずは観察し、ホームケアをしつつ必要なら受診しましょう。

口の中のブツブツは破れると痛みがある潰瘍になるため、食欲が落ちることがあります。  写真:アフロ

1)手足口病ってどんな病気なの?

コクサッキーウイルスやエンテロウイルスが原因の感染症です。なかでもコクサッキーウイルスA16とA6、およびエンテロウイルス71が主要な型で、これらはかかる型によって子どもに見られる症状が少し違います。どちらかというとA6のほうが症状が強く出るタイプです。

【コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71】 
従来型。熱は出ることもあれば、出ないこともあります。熱が出る場合は37〜38度程度です。水ほうができる場所は手のひら、足の裏やひじ、ひざ、口の中、お尻などで、大きさは米粒大で小さめです。

【コクサッキーウイルスA6】 
近年流行が見られる型。39度台くらいの高熱が2日間程度出たあとに、手足やひじ、ひざ、口の中などに水ほうが出現しますが、A16より大型で派手な発疹になります。ブツブツは体幹(胸やお腹、背中といった胴体)に出ることもあります。また、回復して数週間後に爪が剥がれることがあります。

手足口病は2歳~3歳がかかりやすく、感染のピークは7〜9月半ばごろです。

ウイルスを含んだくしゃみなどを吸い込むことで感染する飛沫感染と、便に触った手を介する経口感染、水ほうのウイルスが手について、その手で口や鼻を触って粘膜から感染する接触感染が主な感染経路です。

潜伏期間は3〜5日です。体の水ほうは基本的には痛みませんが、まれに痛みやかゆさを訴える子どももいます。

また、口の中の水ほうは破れると痛みを伴う潰瘍になるため、つばを飲み込むのがつらくなって不機嫌になる子もいます。発疹よりも、食事や水分が取れるかどうかが重症度の目安となります。

2)おうちでの応急処置と病院での対処法

熱でつらそうな場合は、市販の解熱剤を使ってOKです。口の中を痛がっている場合は、喉ごしのいいスープや口当たりのいいプリン、ゼリー、アイスなどを与えるといいでしょう。脱水症にならないように水分はをこまめに与えることも大切です。

手足口病には特効薬や特別な治療法はありません。病院では熱や痛みに対して解熱剤を処方することがありますが、発疹は様子観察になります。脱水症状が見られた場合は点滴をすることがあります。

熱は比較的早く下がり、発疹も1週間程度で治るでしょう。

3)集団生活への復帰タイミングは?

熱が下がり、食事がちゃんと取れるようになれば、発疹が残っていても登園は可能です。ただし、便の中にしばらくウイルスが排泄されるので、おむつ替えのときは手洗いをしっかりする必要があります。

4)合併症やそのほかの注意事項について

基本的に後遺症の心配はありませんが、ごくまれに脳の周りを覆っている髄膜に炎症が起こる髄膜炎(ずいまくえん)を合併することがあります。高熱が続いたり、頭を痛がったりする様子が見られたらすぐに受診しましょう。

***

第2回は、手足口病と同様に夏風邪として知られている「ヘルパンギーナ」と「咽頭結膜熱(プール熱)」について紹介します。

取材・文/梶原知恵

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しぶや のりこ

渋谷 紀子

小児科医

愛育クリニック院長兼小児科・母子保健科部長。日本小児科学会専門医・認定指導医。日本アレルギー学会専門医。東大病院小児科、愛育病院小児科などでの勤務後に、カナダのトロントにて研究留学。帰国後、東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。 【主な監修書】 『0-5歳児 病気とケガの救急&予防カンペキマニュアル』(学研プラス) 『はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア(実用No.1シリーズ)』(主婦の友社)など

愛育クリニック院長兼小児科・母子保健科部長。日本小児科学会専門医・認定指導医。日本アレルギー学会専門医。東大病院小児科、愛育病院小児科などでの勤務後に、カナダのトロントにて研究留学。帰国後、東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。 【主な監修書】 『0-5歳児 病気とケガの救急&予防カンペキマニュアル』(学研プラス) 『はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア(実用No.1シリーズ)』(主婦の友社)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。