子どもとママの法律相談 「子どもが万引きをした」と警察から電話 親がやるべきことは? 弁護士が解説

こんな時、どうすればいい? 子どもとママに関わる法律相談〔第6回〕

弁護士:西田 穣

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ある日、「お宅の子どもが万引きをした」とお店や警察から電話がかかってくる──親としては考えたくないシチュエーションですが、絶対にないとは言い切れません。いざそうなったときに、親としてはどうすればいいのか。警視庁生活安全総務課による資料をもとに、自身も1児の父である西田穣(にしだみのる)弁護士に、小学生の万引きの現状と、親がすべきこと、できることを聞いてみました。

万引きの総数における小学生比率は増えている

警視庁の調査(※)によれば、近年、万引きの総数は減っています。その一方で、小学生の万引きはほぼ横ばい、あるいは微増傾向が見られます。相対的に少年の万引きに占める小学生の割合は増加し、平成29年からはそれまで最大だった中学生と逆転しました。

小学生の万引きの特徴は、被害が食品(なかでも菓子)と玩具に集中していること、また、犯行場所はコンビニエンスストアが非常に多くなっていることです。

万引きというと「軽い気持ちでついやってしまった」というニュアンスがあるかもしれませんが、万引きは刑法上では窃盗罪に当たります。刑罰は「懲役 10 年以下又は 50 万円以下の罰金」です。

実は懲役 10 年以下というのは、「恐喝罪」や「詐欺罪」と同じレベルで、決して軽い犯罪ではありません。ただし被害が比較的少額であることが多い万引きで懲役刑は重すぎるということで起訴されないケースが相次ぎ、万引き事件が増加したという背景があります。そこで、平成 18 年に刑法が改正され、罰金刑が導入されました。また、現在では万引きは「全件届け出」が推奨されています。

ちなみに、窃盗は盗んだものの金額に関わらず、同じ犯罪として扱われます。つまり、文字どおりに解釈すれば「コンビニエンスストアで10円のチョコレートをひとつポケットにいれてしまった」としても、窃盗罪は成立するのです。

万引きを疑われたら まず冷静に子どもに確認

お店や警察から「お宅のお子さんが万引きをしたので、来てください」と連絡があってお店に向かうとき、多くの人は「なんてことをしてくれたんだ」という思いと「うちの子に限ってそんなことをするはずがない」という思いが交錯するのではないでしょうか。

動揺する気持ちはわからなくはありませんが、まずは冷静にお店側に説明を求めてください。いきなり子どもを𠮟りつけたり、無理やり謝らせるのは良いとは言えません。逆に「本当にうちの子がやったんですかっ!」「まだ子どもなんだから、こんなに大げさに騒ぎ立てなくても!」などと感情的に店側を責めるのも問題です。

店側と子どもの言い分が異なっている場合は、お店の人が万引きだと判断した経緯を聞くだけではなく、本当にやっていないのか子どもにも今一度確認してみましょう。「親が自分を信じてくれなかったと感じて傷ついてしまうのでは」と思うかもしれませんが、子どものことを信じるためにもきちんと聞くことは必要です。そのうえで、「やっていない」ということであれば売上とレジの金額を確認してもらったり、防犯カメラを見てもらったりすることをお願いしてみてください。

14歳以下の万引きは保護者の責任になることも

逆に子どもが認めている場合は、その場できちんと謝罪し、商品を返還させるか代金を支払います。ただし、「謝れば許してもらえる」「お金さえ払えばいいんだ」と思わせないためにも、親がしっかりと万引きはいけないことだと説明することが大切になります。

先ほどの調査によれば、「万引きを悪いとは思わない」と答えた小学生は11%と、他の年齢層に比べて最も少なかった一方で、万引きをした動機としては「どうしても欲しかったから」が94%に及んでいます。また、小学生の96%が「捕まるとは思っていなかった」と答え、「万引き事件は原則、全件届け出とされている」ことを知っている小学生は一人もいませんでした。

つまり、万引きをしてはいけないという知識はあるものの、もしやってしまったらどうなるかということまで考えが及んでいないことが多いのです。

実は、先ほど万引きは窃盗罪が適用されると言いましたが、刑法第41条で「14歳に満たない者の行為は罰しない」と定められているため、小学生であれば罪に問われることはありません。これは、この年齢の子どもには罰を与えるよりも指導を行うほうが効果的だと考えられているからです。今後、万引きを繰り返さないためにも、お店の人がいる場だけでなく、自宅に戻ってからもしっかり話をしましょう。

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また、民法では子どもに責任能力がない場合には、代わりに保護者などの監督義務者が賠償責任を負うこととなっています。商品代金はもちろん、示談になったときの支払いなどは保護者が払うことになります。

背景にいじめ問題がないかどうかは要注意

注意が必要なのが、万引きの背景にいじめ問題がある場合です。子どもから「友達もやっているから、自分もやらないと仲間外れにされる」「友達に命令されて、仕方なくやってしまった」などの言葉が出てきたら、家庭内での話し合いだけでは解決しないこともあります。必要に応じて友達の親や学校との話し合いが求められます。

もし家庭や学校生活、中学受験などへのストレスが引き金となっている場合は、ストレスの原因を取り除いたり、医療機関への受診なども考えてみましょう。

「万引きをするのは、親の育て方や環境に問題がある子だけ。うちは大丈夫」と思っている人もいるかもしれませんが、調査では小学生の保護者 300 人中 16 人(5%)が「子どもが万引きをしたことが ある(または、そう思う)」と回答しています。一方で平成 30 年度の学校基本統計(学校基本調査報告書)によると東京都で実際に万引きで補導された割合は0.08%。その差を考えると、「発覚はしなかったものの、実は万引きをしていた」という子どもは意外に多いかもしれません。

万引きによる被害額は年間4000億円以上とも言われています。一件一件は少額でも、社会としては大きな問題。子どもが小さいからといってうやむやにせず、しっかりと向き合うことで、常習化を防ぎましょう。

※    「万引きに関する調査研究報告書(小学生の万引きに着目した意識調査及び万引き被疑者等に関する実態調査)」令和元年10月警視庁生活安全総務課

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/anzen/manbiki/hokokusyo.files/R1_10.pdf

にしだみのる

西田 穣

Minoru Nishida
弁護士

慶應義塾大学文学部(史学科)卒業。西武鉄道株主訴訟弁護団(2004年~2016年)、日本弁護士連合会取調べの可視化本部事務局次長(20...