小学生の「ゲーム機トラブル」増加中 解決で心がけることは? 弁護士が解説

こんな時、どうすればいい? 子どもとママに関わる法律相談〔第5回〕

弁護士:西田 穣

画像:アフロ

子どもたちが遊ぶときのおもちゃや本の貸し借りは、一昔前まではめずらしいことではありませんでした。なかには、それぞれ違うものを買って貸し借りすることで、少ないお小遣いをやりくりするといった子どもたちならではの知恵もあったかもしれません。

しかし、今では少し様子が違ってきています。子どもたちがゲーム機のような高額かつ精密なおもちゃで遊ぶことが増えているからです。そのため、それをめぐってのトラブルが起こることも。中学生のお子さんをもつ西田穣(にしだみのる)弁護士に、ゲーム機トラブルの解決法を伺いました。

「ゲーム機トラブル」当事者の子どもたちに解決を任せてみては?

最近の子どもの持ち物には高価なものが多く、時にはそれがトラブルにつながることもあります。例えばゲームソフト。「こちらは貸したと言っているが相手は借りてないと言っている」「貸したらなくされた」「貸したら壊された」といったことで揉めることはめずらしくありません。もしかしたら「無理やり借りて行かれた」「勝手に持っていかれた(盗まれた)」といったこともあるかもしれません。

これらのトラブルが難しいのは、当事者がどちらも子どもだということです。学年(年齢)によってはまだきちんと状況を説明できないこともあるでしょうし、ゲームソフトの価値を理解していないことも考えられます。親が子どもの言ったことだけを鵜呑みにして相手の親にクレームをつけると、どんどん問題が大きくなっていってしまう可能性があります。

まずは、子どもの話をゆっくりと整理しながら聞き、事実を確認すること。そして、ある程度の年齢であれば、本人たち同士で解決させてみてはいかがでしょうか。子ども自身にも、相手の子にも、ゲームソフト(やその他の持ち物)の価値を認識するいい機会になると思います。

子どものトラブルに親が出る場合 感情的にならない 第三者に頼るという手も

子どもたちだけでは埒が明かない場合は、親の出番になります。まずは、相手の親に連絡を取って、事態を説明しましょう。とはいえ、相手の親と仲が良くても悪くてもこういうことは言いにくいもの。言葉足らずだとケンカ腰のように思われてしまいかねないし、気を使いすぎると回りくどくて伝わりづらくなってしまいます。まずは「自分の子がこう言っているので確認してほしい」と伝え、返してもらいたいと思っていると言ってみましょう。

相手が「貸してくれると言っていたのに」「くれたと聞いている」と反論された場合は、親が許可していない旨を説明します。民法でも、未成年者が行った行為(あげるは、法律上「贈与」行為になります)は親権者(この場合はママやパパ、祖父母などでしょう)が取り消せるとなっています。

あるいは、学校へ相談するのもいいかもしれません。「こういうことで揉めているが、子ども同士で話し合わせてくれないか」とお願いしてみるのです。子ども同士の問題の鍵は、子どもの属している社会のなかで誰が一番説得力をもって話ができるかにかかっていることも多いもの。学校や学童、塾の先生などトラブルの相手と共通の場で、信頼できそうな第三者に頼るのもひとつの手だと思います。また、いじめの可能性もなくはありません。今回の件に限らずそのほかにも気になっていることがあるなら、それも含めて相談してみましょう。

子どものトラブル対応 めざすのは「解決」ではなく「再発防止」

ただ個人的には、こうした物をめぐる子ども同士のトラブルにおいての「めざすべき解決」は、再発を防ぐことだと思います。

ケガや命に関わることであれば、治療費や将来得られるはずだった利益分の金銭的補償がされるのは当然のことですが、高価だとはいえ数千円のゲームソフトをめぐって、相手との関係性を壊してまでしつこく返還を求めたり、弁償を迫ったりするのは得策とはいえません。

画像:アフロ

本来楽しく遊ぶためのゲーム機で起きたトラブルでその友達やママ友と気まずくなり、疎遠になってしまうのはまさに本末転倒。トラブルが起きてしまったのは残念なことですが、今後友達との付き合いを円滑に続けていくためにも、同じことが何度も起きないためにどうするかを考えてみましょう。

例えば、家庭でよく話し合ってルールを作るのはいかがでしょう。

・なくされて困るものの貸し借りはしない
・貸すのなら、なくされても(壊されても)文句は言わない
・友達に借りたものをなくしたら(壊したら)お小遣いで弁償する
・ゲーム機を持って外へ遊びには行かない
・親の目の前で借りて、帰るときに返すならOK
・家の中での貸し借りに限りOKだが、帰るときには返す

など、それぞれの家の価値観と子どもの年齢によって、親と子ども双方が「これなら納得できる」というラインを決めておくのです。

どこまで許容できるかはその家庭によりますから、お互いの親の了解を得てから遊ぶようにすれば、トラブルが大きくなりすぎるのを避けることができます。

さまざまな学びの途中にある子どもたちにとっては、トラブルも成長のきっかけのひとつ。親の目が届く年齢のうちに、トラブルとそれを解決するプロセスを経験しておくのは、長い目で見れば決して悪いことではないと思います。ぜひ、お子さんの年齢に合わせた解決法を探してみてください。

にしだみのる

西田 穣

Minoru Nishida
弁護士

慶應義塾大学文学部(史学科)卒業。西武鉄道株主訴訟弁護団(2004年~2016年)、日本弁護士連合会取調べの可視化本部事務局次長(2008年~2016年)、自由法曹団本部 事務局長(2015年10月~2018年5月)、関東弁護士連合会 常務理事(2020年4月~2021年3月)、東京弁護士会期成会 事務局長(2021年4月~)など。専門分野は交通事故その他民事一般、離婚等家事事件一般、刑事事件(裁判員裁判を含む)、遺産分割、遺言等相続全般、借地借家を含む不動産取引全般など。趣味はマラソン、トレーニング。    東京東部法律事務所 https://www.tobu-law.com/

慶應義塾大学文学部(史学科)卒業。西武鉄道株主訴訟弁護団(2004年~2016年)、日本弁護士連合会取調べの可視化本部事務局次長(2008年~2016年)、自由法曹団本部 事務局長(2015年10月~2018年5月)、関東弁護士連合会 常務理事(2020年4月~2021年3月)、東京弁護士会期成会 事務局長(2021年4月~)など。専門分野は交通事故その他民事一般、離婚等家事事件一般、刑事事件(裁判員裁判を含む)、遺産分割、遺言等相続全般、借地借家を含む不動産取引全般など。趣味はマラソン、トレーニング。    東京東部法律事務所 https://www.tobu-law.com/