ハードルが低い「ゼロ・ウェイスト」 3児のパパの無駄なく暮らせるヒント

~シンプルで快適な暮らしと子育てへの相乗効果~ #3はじめよう!ゼロ・ウェイスト

実はティッシュペーパーにもプラスチック成分が入っている!

──ティッシュペーパーは生活の中で必要な一方で、ためらいもなく大量に消費してエコではないなと思うのですが、服部家ではどうしていますか?

服部さん:
実は、ティッシュペーパーには、一枚一枚を丈夫にする湿潤紙力増強剤としてプラスチック成分が入っているそうです。

そのため、我が家では無漂白のトイレットペーパーで代用し、使った後はコンポストへ。無漂白のトイレットペーパーなら、問題なく分解されます。

「ハンカチティッシュ」といって布製のティッシュを使っていたこともありましたが、洗濯が大変でやめました(笑)。

生ゴミは微生物が分解しやすいように小さくカットして台所の片隅にためておく。  写真提供:服部家

──ゴミは減らしたいけれど、例えば、どうしても料理ができない日はテイクアウトやスーパーの惣菜に頼りがち。そうした助かるサービスも削減しないといけないと思うと、自分にはゼロ・ウェイストは無理だと思ってしまいます。

服部さん:
無駄を出さないことやゴミを減らすことは大事だけれど、“無駄”の意味も人によってそれぞれです。

だから、例えばテイクアウト用のプラスチック製パッケージや、使い捨ての箸などに救われる瞬間があるなら、ゴミが出ることにも“意味がある”というふうに、その消費の価値が自分の中で重要な場合は、無理をしないでいいんじゃないかなと個人的には感じています。

避けたいのは、何のありがたみもないのに食べ散らかして、無意識にゴミを出すこと。

無理をして、自身を追い詰めてゴミを減らすよりも、カンタンに減らせる無駄を無くし、意識が向上して、それが周囲に伝わり、多くの人が変わることで社会の制度や風潮が変わることが大事だと思います。

これだけ多様な社会ですから、各自が求める度合いの「ゼロ・ウェイスト」を実践すればいい。今まで無反省に行動していたところから、少し意識を持って一歩踏み出すだけで万々歳です。

普通のおしゃれなバッグと見紛う「LFCコンポスト」。コンポストもいろいろなタイプがあるので、自分のニーズに合ったものを選ぶといい。  写真:佐藤良子

やってみたら最高に気分がよかった!

──ゴミや無駄を減らすために「そこまでやらなくても」「できない」などと思ってしまいます。服部さんが考える「ゼロ・ウェイスト」の魅力、そして取り組み続けている原動力は何ですか?

服部さん:
そうした反応があるのは当然です。私も翻訳した『ゼロ・ウェイスト・ホーム』を最初に読んだときの感想は、「ここまではできないなぁ」でした。

ただ、「ゴミはなくそうと思えば、なくせるんだ」「こういう人が実際にいるんだ」「自分でやってもいいんだ」と気づかされ、その気づきこそが大事だと、あとになって思いました。

ゼロ・ウェイスト以前に、原点であるコンポストを始めたとき、私が感じた魅力は“最高に気分がいい!”でしたね。

ゴミ箱の中に臭いが出るものがなくなって、ゴミの出し忘れを気にしなくてもよくなって、「ゴミ収集車、早く来ないかな」と思ったりすることもなくなり、ゴミを頻繁に出さなくてもよくなったこと。

それまでは、ゴミを減らそうと思ったこともなかったのに、暮らしがスッキリしたことが大きかったです。

また、無駄なものを買わず、耐久性にすぐれたものを大切に使っていくことになるので、家計の上でも理にかなっているのです。

そして現在は、「こんなにも生活を楽しめる世界がある」という事実に魅力を感じています。

企業や社会の情報に踊らされたり、受け身で暮らしたりするのではなく、自分の工夫次第で気持ちよく暮らせる面白さや発見が、私の原動力。

ゴミを減らす気なんてなかったし、何も変えられないと思っていたのに、自分や地球にとっていいことを積極的に、自分で選び取れる“自由”がうれしいのです。

これからも楽しい実験やチャレンジを、何の束縛もなく行いたいですね。

掃除や洗濯といった家事を面倒だと思う人は多いですが、ゼロ・ウェイストを取り入れることで楽しみに変わると素敵ですよね。

家事さえ趣味のようにできる人生になったら、すごくお得でお値打ちだと思っています(笑)。

資本主義の忙しい日々の中で無意識にゴミを出し続けがちなところを、本当は変えられると気づくことが、人にとっても社会にとっても素晴らしいことだと思っています。

子どもと一緒に、庭で収穫したエンドウ豆のさやを外す日常の1コマ。  写真提供:服部家

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スーパーの袋詰めコーナーに行くと捨ててある大量のプラスチックトレー。ストイックなゼロ・ウェイストをしていない人も、潜在的に普段の生活からゴミや無駄を無くしたいと思っているのではないでしょうか?

それが子どもたちの未来や環境のためになり、豊かで経済的な暮らしになるのなら、これほど素敵なことはありません。

ゼロ・ウェイストはゴミを減らす行動を指しますが、実は「ゴミは減らせる」と気づき、自ら心地いい手法を選び取ることが大切だという服部さんのメッセージ、ぜひ少しだけ意識を向けて実践してみてはどうでしょうか。

取材・文:佐藤良子

カリフォルニア在住のフランス人女性による、シンプルでモノを持たない暮らしの実践ガイド。服部雄一郎さんの翻訳による日本語版。家族4人が1年間に出すゴミの量が1リットル程度に収まってしまう生活とは?「ミニマリスト」の一歩先を行く、シンプル&クリエイティブかつ持続可能な暮らし方に迫る。

ゼロ・ウェイスト・ホーム ーごみを出さないシンプルな暮らし 

高知県の山のふもとで暮らす、服部さん夫妻が実践し続けている「ゼロウェイスト」や「プラスチックフリー」の取り組みがよくわかる一冊。

サステイナブルに暮らしたい ―地球とつながる自由な生き方―

服部雄一郎
1976年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を経て東京大学総合文化研究修士課程修了(翻訳論)。20代の終わり、障害を持つ長男の誕生を機に六本木の高層オフィスから葉山町の役場に転職。ゴミ担当に配属され、ゼロ・ウェイスト政策に携わる機会を得る。フルブライト奨学金を得てUCバークレー公共政策大学院に子連れ留学。ゼロ・ウェイスト関連の国際NGOスタッフとして南インドに滞在。

2014年、高知に拠点を移し、よりサスティナブルで自由な生き方の実践をスタートする。主な訳書に『プラスチック・フリー生活』『土を育てる』(以上NHK出版)、自身の家づくりを記した夫婦共著の『サステイナブルに家を建てる』(アノニマスタジオ刊)などがある。

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