ハードルが低い「ゼロ・ウェイスト」 3児のパパの無駄なく暮らせるヒント

~シンプルで快適な暮らしと子育てへの相乗効果~ #3はじめよう!ゼロ・ウェイスト

服部さんが手作りした自宅のコンポスト。生ゴミを土に還して循環を促す。  写真提供:服部家
すべての画像を見る(全12枚)

「ゼロ・ウェイスト」は無駄なくシンプルに暮らす方法だった

ベストセラー『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(ベア・ジョンソン著)の翻訳や『サステイナブルに暮らしたい』の自著をもつ翻訳者の服部雄一郎さんは、日々試行錯誤してゼロ・ウェイストな生活を実践するなかで「ゼロ・ウェイストに出会ってからゴミへの意識が変わり、個人が自由な手法を選択しながら世界を変えられる面白さを知った」と話します。

#3では、今日から取り組めるゼロ・ウェイストや少し踏み込んだ取り組みなど、ゼロ・ウェイストの具体的な方法に迫ります。そこにはスッキリと無駄なく暮らせるヒントがたくさん隠れていました。
※全3回の3回目(#1#2

簡単なのは持ち物ではじめる「ゼロ・ウェイスト」

──これまでは服部家の取り組みや工夫を伺いましたが、正直ハードルが高いものも。今までゴミを減らすことに興味がなかったような初心者でもできることはあるのでしょうか?

服部雄一郎さん(以下、服部さん):
もちろんありますよ! “持ち物”のゼロ・ウェイストはカンタン。選び方を変えるだけです。

例えば、歯ブラシやシェーバー、繰り返し使う調理道具は、買い替えのタイミングで将来ゴミになりやすいプラスチック製よりも土に還る素材や丈夫なステンレス、ガラスといった耐久性のある素材を選ぶと、ほぼゴミにならないですね。

使い捨てのラップは、布に蜜蠟を染み込ませた「みつろうラップ」を使うといいですよ。

ただ、「みつろうラップ」は少し割高で、交換時期もあるので、我が家ではできあがった料理を保存したいときは、大きめのボウルを料理にかぶせて冷蔵庫へ。逆にボウルで下ごしらえをした料理は、平皿をかぶせて冷蔵庫へと、上からかぶせるだけで事足りています。

これはちょっとしたアイデアですが、トークイベントで紹介するといつも好評ですね。

我が家は電子レンジがないので試していないのですが、電子レンジで加熱するときも、皿に別の陶器の皿を重ねて加熱しても温められると、イベントに来てくれたお客さんから教わりました。

そして“買い物”のゼロ・ウェイストは、過剰包装気味の日本ではややハードルが高いのですが、そんな中でもできることはあります。

例えば、パンはパン屋さんで、肉は肉屋さんで買うなど、個包装していない個人商店で買ったり、生産者から直接買ったり、それが難しい場合でもせめてスーパーで過剰包装の食品を選ばない、などです。

また、今日明日に食べるものであれば、消費期限の近いものから買うのも食品ロスを防ぐ「ゼロ・ウェイスト」です。

持ち物や買い物は捨てるときのことまでイメージするといいと思います。

今回の取材を担当したライターの佐藤さんも、服部さんのアイデアを真似して、ちょっとの時間だけ保存したいものにはボウルやザルをかぶせるようになったと話す。ラップの節約にもなり、ゴミも出ないので気に入っているそう。  写真:佐藤良子

今日から始められるゼロ・ウェイスト

──もう一歩、踏み込むならどのような取り組みがありますか? コンポストは堆肥ができても「それをどう使おうか?」と困ってしまいます。

服部さん:
ゴミを劇的に減らそうと思ったら、まずおすすめなのは「分別」と「生ゴミ」です。

「分別」は容器プラスチック、資源ゴミなど、お住まいの町のルールを覚えてしっかり守るだけ。

「生ゴミ」はコンポストを取り入れる。子どもの紙おむつとペットのトイレのゴミは難しいのですが、それ以外の家庭から出る“燃えるゴミ”はこの2つのポイントを守るだけでほぼなくなるに近いくらいまで減ります。あとは、減らなかったゴミの種類を見て、それを減らすことはできそうか、どんな方法があるのか、考えてみればいいのです。

コンポストにはいろいろなタイプがあるのですが、マンションのベランダでもできる手軽なタイプは、例えば次の2つ。

1つは、通気性のある大きなバッグと独自配合の基材(生ゴミと混ぜ合わせる原料)がセットになっている「LFCコンポスト」。

これは2~3ヵ月間生ゴミを入れて、その後3週間熟成させると堆肥ができる「堆肥タイプ」です。微生物の分解が遅くなってきたら基材の取り替えどきとのこと。バッグもおしゃれで都会的。ずっと続けるには3ヵ月ごとに基材の料金がかかります。

もう1つは、木箱などの箱に黒土を入れて使う「ベランダ de キエーロ」。

こちらは自作できるうえに、黒土もホームセンターで手に入ります。生ゴミを入れると微生物が水と二酸化炭素に分解するので、ゴミが消えて土は増えない「消滅タイプ」です。生ゴミは相当長期間入れ続けられます。

おっしゃるとおり、前者は「堆肥ができたとしても、どうしよう」と思うかもしれませんが、「LFCコンポスト」は、限られた地域ですが堆肥の回収サービスがあったり、堆肥を指定の農家に送ると野菜がもらえる不定期イベントが行われていたりするようです。

ちなみに私としては、作った堆肥でぜひ植物の栽培に挑戦してみていただきたいです。

私も最近まで植物を育てたことがなかったのですが、ヘチマを育て始めたらとても楽しくて。水を1日1回あげるだけであっという間に育ち、癒やされ、グリーンカーテンにもなり、さらに収穫もできて、生活の楽しみの一つになっています。

コンポストは、適切に管理すれば虫を防ぐことはできますが、ある程度仕方ない部分もあります。

自然の摂理からすると微生物が生ゴミを分解するのは当たり前ですし、虫が来るのも当たり前。

一方で、都会の感覚からするとコンポストは、スイッチオンで生ゴミが消えるような装置を想像をするかもしれませんが、残念ながらそうではなく、微生物や発酵のバランスによっては、臭いが出たり虫が出たりすることも。

虫が嫌なら来ないようにしっかり乾いた土をかぶせるなど工夫する。匂いが出るのが嫌なら微生物が分解しやすいように生ゴミを小さく切ってから入れてよく混ぜる。こうした工夫は取り組むうちに肌感覚でわかってきます。

自然の営みをベランダで再現するイメージで取り組むといいと思います。

自宅のコンポスト。我が家は土地柄、畑の収穫やご近所からおすそわけをいただく作物も多いため、それらを庭の雑草とともに安心して堆肥化できる大容量のものを使用。庭の一角に底が空いた大きな木箱を置き、中にゴミを入れ、その都度、たっぷりの草木でカバーする。雨が落ちやすいよう上部が少し開いた蓋をつけている。  写真提供:服部家
キッチンで溜まった生ゴミはすぐにコンポストへ。よく「骨や玉ねぎの皮は分解しない」と言われるが、時間がかかるだけ。服部家では揚げ油の残りや割り箸、竹串、木綿までコンポストに入れる。  写真提供:服部家

──ポイントとなるのが「分別」ですが、ゴミの分別が厳しくない地域でも、「分別ルールをしっかり守る」だけで、ゴミは減るのでしょうか?

服部さん:
生ゴミをコンポストで処理した後、残ったゴミを「容器包装プラスチック」や「ミックスペーパー(雑紙)」などにしっかり分別すれば、燃えるゴミで残るのはティッシュや絆創膏、ガムテープ、写真、宅配便の伝票、掃除機の中のゴミなど細々したものだけになります。

「容器包装プラスチック」を分別収集していないエリアだと燃えるゴミは減りにくいですが、ミックスペーパー(雑紙)を資源ゴミにリサイクルするだけでもだいぶゴミは減ります。

ミックスペーパー(雑紙)とはお菓子の紙箱や封筒、ハガキ、メモ用紙を破った紙、付箋といったあらゆる小さい紙までを指し、食品汚れのない紙のこと。

こうした小さい紙類は、意外と燃えるゴミとして捨てがちなので、しっかり分別すると、ゴミが目に見えて減りますよ。

取材を担当したライターの佐藤さんは、容器包装プラスチックも燃えるゴミに含まれるエリアに住んでいる。そのため、燃えるゴミとしては出さずに、溜めてリサイクルを推進する近所のスーパーのリサイクルボックスに持ち込んでいるそう。  写真:佐藤良子
次のページへ 「できない」から「最高に気持ちいい!」へ
32 件