
【子どもを算数嫌いにしない】 算数力を上げる親の「教え方」のテクニック 〔元小学校教諭の教育評論家〕が伝授
子どもがすっきりわかる「算数」の解き方・教え方 #1
2025.09.16
教育評論家:親野 智可等

お風呂で育む算数力
基本的な算数の力、つまり計算力をつける上で土台になるのが「数える経験」だと親野先生はいいます。そしてその次にはたし算、ひき算、九九が大切であり、これらを反復練習して、瞬時に答えを出せることが重要だと続けます。
「数える経験は、お風呂の中で楽しみながら取り組める『お風呂算数』がおすすめです。低学年で算数が苦手なら、ぜひやってみてください。
親御さんが湯船のお湯の中から指を1本ずつ出して、子どもに1、2、3、4、5……10と数える経験をさせたら、『右手の指が3本。左手の指が2本。全部で何本でしょうか?』なんて簡単な問題を出すのです。たし算だけでなく、ひき算の問題もつくって試すといいですね。
タオルで隠した両手から指を8本出して「何本、隠れてるでしょうか?」と聞き、子どもに「2本」と答えさせます。この場合の「2」は、「たして10になる相棒の数(補数)」といわれるものです。慣れてきたら指を使わずに、「6の相棒の数は?」と答えを聞くことをやってみましょう。これが瞬時にいえるようになると、繰り上がりのたし算や繰り下がりのひき算が楽にできるようになります。
また、1から100まで数唱してみるほかに、100から1に逆唱するのも子どもとぜひやってみてほしいことですし、100から100、95、90といった具合に、5を引いた数をいってみるのもいいでしょう。
あるいは、2飛び(2の倍数)や5飛び(5の倍数)を唱えることも数に対する地頭を鍛える方法です」(親野先生)
遊びの中で数に触れて、簡単な計算に対して瞬時に答えがいえるようになると、徐々に難しくなる繰り上がりのたし算や繰り下がりのひき算も、抵抗なく取り組んでいくことができます。
2飛びや5飛びの本質は九九です。遊びながら九九を覚えることができるだけでなく、しっかりと身につけた九九は、それを応用していく中学年以降の算数、中学や高校の数学にも役立ちます。
子どもに算数を教えるときにやってはいけないこと
親が一生懸命に算数を教えても、なかなか理解してくれない子を目の当たりにするとイライラが募り、𠮟ってしまうことがあります。
「親御さんの思ったように我が子が勉強ができないからといって、絶対に勉強を𠮟る材料にしないでください。
子どもたちの中には『勉強をしなければ𠮟られるけれど、勉強しても𠮟られる』と感じている子が意外と多くいます。それがそもそも算数を勉強したくない原因にもなるので、まずは勉強への意欲を高めてあげることが大切です。
間違っているところは『惜しかったね。難しかったね』といって、問題に向き合ったことをほめてあげてください。計算で試行錯誤した部分があればそれもほめるポイントですし、計算は間違っていても式が合っていたなら『式はわかったんだね』とほめてあげましょう。
誤りを正したいときはほめたあとに、子どもの視点を大切にしながら解き方を教えます。
算数に限らず、誰にでも間違いや苦手はあるものです。どうか、楽しみながら勉強に取り組める方法を意識してください」(親野先生)
親が子どもに算数を教えるときは、子どもの教科書やノートなどを確認・分析することから始まりますが、子どもが勉強に向かう気持ちも高めてあげることが大切です。勉強する土台を築きつつ、子どもの視点に立ったサポートを心がけましょう。
次回は1・2・3年生がつまずきがちな算数の単元について解説。数の分解と合成、九九、時間と時刻などの教え方のコツを紹介します。
取材・文/梶原知恵
─◆─◆─◆─◆─◆─◆
◆親野 智可等(おやの ちから)
教育評論家
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。
【子どもがすっきりわかる「算数」の解き方・教え方】の連載は、全3回。
第2回を読む。
第3回を読む。
※公開日までリンク無効
【関連書籍】
~楽しく学べる人気シリーズ~

梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
親野 智可等
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。 教育評論家・親野智可等ホームページ 「親力(おやりょく)」