「自由進度学習」のさらなる挑戦「複数教科同時進行」「低学年への導入」へ

【小学校教育2.0】廿日市市立宮園小学校の挑戦#3「自由進度学習のさらなる進化」

低学年でも「自立した学び」はできる

子どもたちは予想以上に自ら学びを進めることができる。しかも楽しそうで意欲も上がる。こうした事実が先生たちの意識を変えていきます。そしてなんと、2021年度からは、1年生でも自由進度学習が行われるようになりました。

二野宮先生は、その経緯をこう語ります。
「私は2020年度も2021年度も1年生の担任でした。実は、個人的には最初から自由進度学習をやってみたかったんですが、1年目は『子どもたちが自分で教科書を読んで進める』という色合いが強かったので、低学年には難しいかなと思ってあきらめていました。

でも、2年目の2021年は『学習環境の整備』に力を入れることになり、他学年の先生方が学習コーナーなどを準備しているのを見て、こんなふうに体験しながら進める自由進度学習なら、1年生でも可能かもしれないと思って、始めてみたんです」

友だちと協力して自由進度学習に取り組む1年生。  写真提供:宮園小学校

そして、実際に取り組んでみると、1年生でも問題なく進めることができ、想像以上に子どもたちは意欲的に学習に取り組みました。

1年生の算数の図形学習では、点を線で結ぶ、棒を操作する、色板を組み合わせる、といった方法で図形の構成について学びます。まずはこれらの学ぶ順番を、自分で選択できるようにしました。

「それぞれ『点々ランド』『棒ランド』『色板ランド』という名前にして、『どこからやってもいいよ』と伝えると、子どもたちは大よろこび。楽しそうに取り組んでいました。

見本を見ながら、真剣に色板で図形を作成中。  写真提供:宮園小学校
どんな形ができるか考えながら、棒で形を作ります。  写真提供:宮園小学校

自由進度学習にもやり方はいろいろありますが、こうした「順序選択」などは1年生でも取り入れやすいですし、子どもたちの意欲もすごく高まるので、思い切ってやってみてよかったと思っています」(二野宮先生)

学習コーナには、興味を引く様々な教材が用意されています。  写真提供:宮園小学校

子どもたちがいきいき学習に取り組む様子を見て、二野宮先生はさらに一歩進んだ方法を実践することにしました。

「最初の取り組みが順調だったので、国語と算数の授業を一緒に行う『複数教科同時進行』にもチャレンジしてみました。国語は「おはなしをかこう」、算数は「大きいかず」という内容で、最初の2時間程度は一斉学習で概要を説明しました。

複数教科同時進行のために用意した1年生の学習コーナー。  写真提供:宮園小学校

学習のゴールを明確に設定して共有することで、子どもたちの意欲は一気に上がったと感じました。国語では『お話を一冊の本にしよう』、算数では『大きい数を学んで、みんなで買い物ごっこをしよう』と提案しました。子どもたちは、それに向かってはりきって学習を進めていました。

「大きいかず」の学習コーナー。友だちと相談しながら数パズルに挑戦中。  写真提供:宮園小学校
子どもたちが自分で考えられるよう、おはなしづくりの参考資料もたくさん用意しました。  写真提供:宮園小学校

また、算数では、他の学年が行っていたように、必ず学習する範囲と、やる、やらないを選択できる発展コースも用意しました。そして、必ず学習する範囲まで終わったら『大きいかずはかせ認定証』、発展コースまで全て終わったら『マスター認定証』がもらえる仕組みにしたんです。

発展コースの学習コーナー。  写真提供:宮園小学校

子どもたちは、計画表をもとに、自己選択・自己決定をしながら、ゴールに向かって嬉々として学習を進めていきました。算数では、多くの子が発展コースまで取り組んでいました」(二野宮先生)

1年生も学習コーナーを上手に活用して学びを進めることができました。  写真提供:宮園小学校

低学年では、上の学年に比べて一人ひとりへの支援やフォローが多く必要になり、「複数教科同時進行」はまだ難しい面もあったといいます。しかし、ゴールをしっかりと示すこと、意欲を引き出す教材や仕組みを整えることで、十分自由進度学習に取り組めると確認できました。

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