聞けば、どうやら「季節のご挨拶」の中身は、その代によって傾向が異なる様子。品物だけもあれば、ギフト券や現金を包む代もあるらしい。ちなみに、マダムの見立てでは、華やかなご家庭が多い代ほど、その内容も派手になりがちなのだとか。なるほど、お教室にかかる出費が「時価」っぽい印象なのは、こういうところからきているのかもしれない。
しかし、しかしですよ、その台の上の“お中元”の中身は、一体どのくらいなの? まさか、オビ付きとか!? 想像を遥かに超えた展開に、小市民の私は、鼻息荒く興味津々。ここで止めておけばいいのに、当事者であることをすっかり忘れて、ついマダムに核心に迫る質問をしてしまう。
「人それぞれでしょうけど、だいたい結婚式のご祝儀を想像すればいいんじゃないかしら。上限はありませんよ」
無、無制限〜!!
でも、結婚式のご祝儀って、友達、上司、親族、で違うじゃない? 個人的に包むお金の金額まで追求するは非常に躊躇するところだが、ここまできから聞くしかない。恐る恐る、マダムならその台にいくら乗せるかとたずねてみたところ、「ジュウ、かしらねぇ」という答えが。キャーーッ!!
……聞くんじゃなかった。ほんとうに。
確かに、その後、先生の部屋に入る父兄をよくよく注意して見てみると、みんな涼しい顔で小さな紙袋を持っている。今までスルーしていたけど、あの小さな紙袋こそ、まさしく“お中元”ではないか!? ヒーヒーゼェゼェ言いながら、暑い中、重たい紙袋を持っていった私って……。
もはや、後悔先に立たず。
いや、だけど、よくよく考えてみると、知らなかったことは逆にラッキーじゃない? だって、「季節のご挨拶」でそんなにハードルを上げたら、受験後にお礼として多くの親が渡すという「最後のご挨拶」がどうなるか……。これまで「都市伝説」と笑って受け流していたけど、合格のお礼に「ベンツ1台」とか、「フランクミュラーの時計」を渡したという噂が、とつぜん現実味を帯びてくる。それこそ、「喜び」や「感謝」、「お礼」の気持ちに上限はないのだから……。3ケタ……想像するだけで震える。
……やっぱり聞かなかったことにしよう。
と、いうわけで、何も知らない(・・・・・・)我が家は、そのまま百貨店のギフトオンリーでいき、学年が上がるごとに少しずつグレードを上げていくことにしたのです。もちろん、ドヤ顔は封印して……。
ご挨拶はお教室によってさまざま
このように、小学校受験業界は、通常の授業料=月謝以外のところでも何かとお金がかかるのです。それは、まさに、お金に羽根が生えて飛んでいくイメージ。授業料でいえば、中・高・大学受験の塾代とたいして差はないのに、とにかく受験までの数年間、次々と手の内から1万円札が消えてなくなっていくのですから。
もちろん、皆が皆というわけではありません。これは、私が通っていた【個人のお教室】の話で、同じ幼稚園の【大手お教室】に通っているママの中には「何もしない」という人もいれば、「お世話になった先生には数千円程度のお菓子を渡す」という方もいました。中小規模のお教室では「みんなでひとつの品物を贈る」という形をとっているグループもありました。このように、お教室や先生、周りの状況や各家庭の方針によっても、「季節のご挨拶」はまったく異なるのです。
ただ、ひとつ言えるのは、小学校受験のお教室では、子どもだけでなく、親もお世話になっている比重が圧倒的に大きいのです。特に、古くからある個人のお教室では、子どものみならず、親も、名門私立小学校にふさわしい人物になるよう徹底的に鍛えられる。そして、そこの先生は、幼児教育に熟練した教育者であるのと同時に、育児や教育に悩み、不安を抱く親たちを適切に指導する、すぐれたメンターでもある場合が多いのです。小学校受験のお教室が中学以降の受験塾と違うのは、この「先生が、子どもの教育以外に、親の教育やメンタルヘルスを深く担っているところ」ではないでしょうか。
そう考えると、人によっては「授業料だけではとてもまかないきれない思い」があるのも分かります。お世話になっている度合いも、感謝の気持ちも、人それぞれ。その「気持ち」に上限がないかわりに下限もない。だから、各家庭で納得のいくお礼をすれば良いのです。その先生が真の教育者であるなら、決してそれで差異をつけることはないと思いますから……。
〜華子が考える「季節のご挨拶」〜
① お中元・お歳暮は手渡しで
② 必ず事前に先生のアポをとる
③ 高齢の先生には老舗百貨店のギフトが安心
④ お教室の格や先生の経験値をふまえて、お世話になった度合いで決める
⑤ あくまでも「気持ち」なので無理せず、各家庭の判断、基準で
※この記事は、ライター華子の個人的体験及び感想に基づくものです。私見のため、一般的な見解とは異なる場合があります。また、一部については創作的表現が含まれております。
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華子
ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側
ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側