子どもたちがこんなに変わった! 自由学園初等科・教師も思わず感動「探求学習」の意外な成果

【小学校教育2.0】自由学園の実践#3「自分だけの答えを見つける探求学習」

ライター:川崎 ちづる

子どもたちは、熱心に水の探求学習に取り組んでいます(3・4年生)。  写真提供 自由学園初等部

小学校教育にも「主体的な学び」「問題解決能力の育成」が求められるようになり、「探究学習」を行う学校も出てきました。

しかし、一般的な「探究学習」では、子どもたちが自分の関心に沿ってテーマ設定をしているものの、内容は「調べ学習」にとどまっていることも多いようです。

自由学園では、このような「答えのある問いを調べる探究学習」と区別する意味で、「探求」という単語を使用しています。

では、自由学園初等部が行う「探求的な学び」とは、どのようなものなのでしょうか。

第3回は、自由学園初等部で実践している探求学習の具体的な取り組みと、子どもたちの変化について、2019年度に3年生、2022年度に4年生を担当した田嶋健人(たじまけんと)先生にうかがいました。

※全4回の第3回
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「探求学習」ってどんなもの?

自由学園初等部で、「探求学習」に取り組んでいる田嶋先生は、そのねらいを次のように話します。

「自由学園初等部では、普段から、子どもたちが抱く疑問や興味・関心を大切に、主体性を引き出す学びを行っています。探求学習でも、こうした部分は変わりませんが、さらにもう一歩学びを深めてほしいと考えています。

子どもたちが自分で設定した問いを調べていくなかで、ものごとの多様で複雑な側面を知り、これまでの考えや視点が変わる。そして、調べればすぐにわかってしまう『ひとつの正解』を見つけて終わるのではなく、自分なりの視点から『自分だけの答え(考え)』を探し続ける。

こうした学びが『探求学習』であり、探求学習で養った力が、『思考力』や『問題解決能力』につながると考え、実践を続けてきました」(田嶋先生)

2019年度に「水ってなんだろう」というテーマで行った探求学習では、実際に子どもたちが「問い」をじっくりと深める過程で、意識や考え方に大きな変化が見られました。

子どもたちが作成した発表用の資料。  写真提供 自由学園初等部

3年生・4年生合同で、1学期と2学期の総合的な学習の時間を中心に行ったこの学習を例に、自由学園初等部の「探求学習」の具体的な取り組みについて見ていきます。

「身近な興味」のその先へ

1学期は、問いの設定や調査の方法などの技術的な部分を中心に、学習を進めました。

まずは「水」について、付箋などを使って思い浮かぶことを書き出し、そのなかから一番興味のあることに絞ります。そして、テーマが近い子ども同士がグループになり、文献やインターネットなどで調査を進め、発表まで行いました。

「このとき子どもたちから挙がってきた問いは、『魚はなぜ水のなかで生きていけるのか(人間の体との違い)』『水道管はどんな仕組みになっているのか』など。どれも身近で、自分の生活経験から思いつく内容でした。

これも素晴らしい学習でしたが、先ほどもお話ししたように、ここから『探求学習』としてさらに深い学びにつなげてほしい、という想いがありました。子どもたちがもう少し広い視野で『水』について考え、深めていくためには、どんなフォローが必要なのかを考えました」(田嶋先生)

グループワークの様子。  写真提供 自由学園初等部

検討を重ねた結果、2学期はいくつかの新しい試みを追加。そのひとつが、社会や理科の授業などを活用して行った水に関連する『特別授業』です。

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