熊本発・公立小学校で「プロジェクト型探究学習」が成功! 子どもの「学びたい気持ち」を引き出した方法を公開
【小学校教育2.0】熊本市立弓削(ゆげ)小学校・松永先生の挑戦#1 「学ぶ意欲があふれ出す探究学習」
2022.12.06
自分で決める!が何より大切
松永先生が探究学習の題材として取り上げたのは、「縄文時代、弥生時代、古墳時代を学ぶ」という単元(内容)でした。
授業の導入は、松永先生が「ミニレッスン」を行います。実際に古墳群や歴史資料館へ行って撮った写真や、本物の縄文土器を見せたり触ってもらったりしながら、それぞれの時代について簡単に紹介します。
その後、子どもたちは、ミニレッスンを通して自分が興味を持ったテーマを、「暮らし」「権力」「道具と遺跡」の3つのなかから選びます。
それぞれ選んだテーマが、子どもたちにとって「テーマの卵」(書籍『社会科ワークショップ』〈新評論/冨田明広・西田雅史・吉田新一郎〉より引用)となります。それらを調べながら、出てきた疑問を深め、一人ひとりが自分のテーマの卵を育てていくことで、探究が進んでいきます。
「子どもたちが、テーマの卵を『自分で決めること』『選ぶこと』を大切にしています。自分のなかから出てきた興味や疑問を探究していくからこそ、その後も熱量を持って『テーマの卵』を育てていくことができます。
実際、自分で選んだ内容を学習していく子どもたちは、そうでないときと比べて、意欲や積極性を格段に発揮します」(松永先生)
そして、それらの「テーマの卵」が似ている子たちが3~4人程度のグループになり、一緒に学習していきます。この段階では、まだ一人ひとりの「テーマの卵」がざっくりしているため、みんなで情報共有しながら、教科書や資料集、インターネット、松永先生が用意した本、雑誌、新聞などを使って調べていきます。
誘導はなし 子どもの「学びたい」に徹底的に寄り添う
このプロジェクト型の探究学習は、社会の授業7時間をかけて行いましたが、進め方はすべて子どもたちに委ねています。
子どもたちは「学習計画表」を使って、自分で学習のスケジュールを作成します。それを進捗に合わせて自分で修正しながら、学習を進めていきます。
授業の最初に、松永先生がポイントを解説する「ミニレッスン」があり、その後は自由に自分のテーマに取り組みます。最後に、今日の授業で分かったことを書き込み、必要に応じて現在の学びを共有(発表)してもらい、次回以降の学習計画表を修正する。これを毎回繰り返していきます。
松永先生は授業の間、教室中を歩き回り、子どもたち一人ひとりに話しかけます。
「それぞれが、どんなふうに学びを進めているのか把握することが目的です。困っていることがあれば一緒に考えたり、進め方の方針を確認したり、『あっちのグループの○○さんも同じようなことを調べていたよ』などと伝たりして、子どもたちのサポートに徹しました。
学習の内容や方向性を誘導するような指導は、一切行っていません。一斉授業だと、『自分で考えてみて』と言いつつも、実は教師が誘導していることがどうしても多くなってしまうんですよね。
だから今回は、そこから脱却し、学ぶ内容は子どもたちに完全に委ねる。そして、僕は徹底的にそれに寄り添い、一緒に考えていこうと決めていました」(松永先生)
教師は指導する役割ではなく、一緒に探究する仲間であり、サポーターである、という松永先生の強い想いが伝わってきます。