熊本発・探究学習で成績もアップ! 子どもたちに「生きた知識」が身についた理由

【小学校教育2.0】熊本市立弓削(ゆげ)小学校・松永先生の挑戦#2 「探究学習の成果」

ライター:川崎 ちづる

適切なサポートさえあれば、子どもたちは自分で学習を進めていきます。  写真提供  松永賢斗氏

子どもの自主性を尊重した学びを公立小学校で展開する、松永賢斗先生。#1では、子どもの疑問から自由に学びを展開するプロジェクト型探究学習についてご紹介しました。

探究学習では、子どもたちから「もっと学びたい」というエネルギーがあふれ出し、学びに対する興味・関心が高まりました。その結果、知識としてもしっかりと定着し、テストでも良い結果が出たといいます。

そして、探究学習は成績の向上だけでなく、学んだ知識や技術の再現、多様性への理解にもつながることがわかりました。

第2回では、探究学習の具体的な成果に加えて、他者の尊重など、人間関係にも及ぶプラス面についてうかがいました。

※全4回の第2回

高い平均点を叩き出した探究学習

2022年度、6年生のクラスを担任している松永賢斗先生が、社会科の授業で取り入れた「プロジェクト型探究学習」は、子どもたちの学びの意欲を大いに引き出し、最終発表も盛況でした。

最終発表の様子。発表する子ども、聞く子ども、ともに真剣です。  写真提供 松永賢斗氏

そして、その後の学習内容を確認する単元末テストでは、驚きの結果が出ました。

クラスの平均点は、知識・技能で94.5点(100点満点)、思考・判断・表現は、43.2点(50点満点)。標準得点(テスト制作会社が提示している点数)はそれぞれ85点、41点で、いずれも大きく上回っています。

全ての発表が終わった後、松永先生が10~15分程度、全体の内容をさっとおさらいしたそうですが、一斉授業のように、教科書や資料集を使って一つひとつ丁寧に教えることはしていません。

にもかかわらず、クラスの平均点がこれほど高かったのはなぜなのでしょうか?

「探究学習で調べた内容は、友だちの発表で聞いたことも含めて、子どもたちのなかで『生きた知識』になったんだと思います。

教科書で読んだだけ、先生の話を聞いただけではなかなか覚えられませんが、自分の『なんでだろう?』という疑問や興味を元に調べていけば、必要な知識が頭に入り、記憶にも定着する。

友達の発表も、自分の関心と結びついて聞くことができるから、納得できるし、それが記憶にもきちんと残る、ということなんでしょうね」(松永先生)

探究を中心に据えた学びを行う学校では、子どもたちの成績が良い、という事実は、さまざまな事例で明らかになっています。しかし、松永先生自身も、「(テストの点数として)ここまでの結果が出るとは思っていなかった」といいます。

授業中、集中して黙々と探究学習に取り組む様子。   写真提供 松永賢斗氏

自らの「やりたい」を、自分(たち)の力で発展させていく探究学習は、学力にも結びつくことがよくわかります。

「問い」を立てるのは難しくない

「プロジェクト型探究学習」の効果は理解しながらも、子どもが自分で「問いを立てること」や「テーマを深めていくこと」は、かなり難しいのではないか……。そう感じる人も多いと思います。

こうした疑問や不安に対して、松永先生はこう応えます。

「確かに、慣れていないと『問いを立てる』こと自体が難しい側面はあります。ですが、それはあくまで、“やったことがない”からです。経験することで誰でも十分にできるようになります。

問いを立てて、それを解決するために調べて、考えて……ということを繰り返していくうちに、これは調べる価値がある問いなのか、そうではないのかが、経験的に分かるようになります。そして、精度もどんどん上がっていきます」

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