熊本発・子どもの「学びたい」があふれ出す プロジェクト型探究学習の中身とは?

【小学校教育2.0】熊本市立弓削(ゆげ)小学校・松永先生の挑戦#1 「学ぶ意欲があふれ出す探究学習」

友達の探究がヒントに! グループで探究する意義

では、子どもたちは、どんなふうに自分の「テーマの卵」を深めていくのでしょうか?

例えば、「暮らし」を選んだ子は、その後の調査を進めていくうちに、「どうやって食べ物を得ていたのだろうか」という疑問を持ち、縄文時代の「狩り」について調べていました。

最初は、何らかの武器を作って、みんなで協力して動物を殺していたのではないかと考えていました。

しかし、獲物はかなり大型の動物だったので、「武器では動物に負けてしまうのでは」と、グループの子から指摘されます。それで、さらに調べてみると、実は道具ではなく、落とし穴を作って獲物を捕獲していたらしい、という事実にたどり着きました。そして、落とし穴の仕組みについて調べていきます。

「狩り」を調べた子が作成した資料。  写真提供 松永賢斗氏

同じグループには、「縄文人の性格」について興味があり、調べている子がいました。当初、縄文時代は集落を作ってみんなが協力して生活していたため、「縄文人は比較的穏やかだった」という仮説を立てていました。

弥生時代になって稲作開始後に権力闘争などが始まったため、縄文人は弥生人に比べて平穏に暮らしていた、と考えたのです。

しかし、「狩り」を調べる友だちと情報交換し、落とし穴について知ったことで、自分の考えに疑問が生まれます。というのも、落とし穴の中には木の枝が刺してあり、落ちた動物は枝が刺さって死んでしまうのです。そんな残酷な方法で狩りをしていた縄文人は、本当に穏やかだったのか……と自分の方向性を再度見直し始めました。

「この例を見ていただいてわかるように、子どもたちがある程度自分の『テーマの卵』を深めていくと、同じグループであっても、その学習内容は多様になっていきます。

でも、テーマは相互に関連しているため、一人で淡々と“自習”しているのとは違い、友達との意見交換によって新しい情報や考え方に触れることができます。

各々のテーマを深めながらも、グループで話し合って学習を進めます。  写真提供 松永賢斗氏

子どもたちは自分の調べた内容を持ちより、グループメンバーと共有・意見の交換をしながら再度考え、自分の考えを発展させていく。そんな姿が、とても印象的でした。

これは、一人で学習しているだけでは得られない学びの楽しさであり、学校という場所で友達と一緒に学習する醍醐味だと感じます。

子どもたちの反応を見て、僕自身もプロジェクト型の探究学習の意義を再確認することができました」(松永先生)

探究のサイクルを回して「自分なりの答え」を見つける

子どもたちは、その後も探究を進めていき、疑問から問いを作り、さらにその問いについて調べるなかで、「自分なりの答え」にたどり着きました。

「狩り」について調べていた子は、「(生き抜くためには)頭を使って方法を考えることが大切」と結論づけました。

「縄文人の性格」について調べていた子は、「協力して暮らしながらも、(優しいだけでなく)頭を使って工夫していた」とその考えを述べていました。

「ただわからないことを調べる学習ではなく、自分なりの答え(考え)まで導くのが、探究学習の特徴であり、醍醐味でもあります。

子どもたちは、調べて、考えてを繰り返しながら、時には友達の学びから新たな発見をもらって方向性を見直し、何度も探究のサイクルを回していきます。そして、そのときの自分が導き出した結論が、『自分なりの答え』になるんです。

用意された課題について、正解を求めて情報を調べていく学習とは、本質的に大きく異なります」(松永先生)

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