自由学園・体験型学習を実践した教師が気づいた「今の大人に必要なある視点」

【小学校教育2.0】自由学園の実践#2「体験からはじまる学び(後編)」

「完成品のお披露目」ではない学びの発表会

子どもたちが自分の興味・関心を育てながら学んだ内容は、2年に1回開催される「学びの発表会」を通して、保護者や他の学年の子ども・先生方にも共有されます。

保護者や友人の前で発表する子どもたち。  写真提供 自由学園初等部

「学びの発表会」は、それぞれテーマや発表スタイルは異なりますが、1年生から6年生まで全員が参加し、「対話」を大切にした方法を採用しています。それは、発表会を学びのゴールではなく「プロセス」と捉え、発表会後も学びは続いていくと考えているからです。

「学んだ内容をきれいにまとめた完成品として発表し、『よくできました!』と予定調和的に終わらせるのではなく、見てくれた人との対話によって新しいことに気づき、成長できる場にしたいと思っています」(高橋先生)

1年生が行った発表の様子。  写真提供 自由学園初等部

2022年12月の発表会では、1・2年生は一人ひとりブースのような場所を設けて、そこに来た人へ向けて調べたことを発表しました。その場で質問や感想などを直接受け取ることができ、子どもたちも手応えを感じたようです。

3年生以上は「ポスターセッション」のような形式で、グループ別で人が集まるたびに学習した内容について説明し、聞き手からの質問などに応えていきます。

3年生以上が採用した「ポスターセッション」の発表。  写真提供 自由学園初等部

保護者をはじめとする来場者には、「なんでも良いので必ず質問か感想などのフィードバックを子どもたちに伝えてください」とお願いしています。

2022年度、4年生の担任だった田嶋先生は、学びの発表会当日の子どもたちの様子をこう話します。

「質問や感想をたくさんもらうことによって、『ここが足りていなかった!』と気づく子、さらには『先生、ちょっとここ直したいんだけど……』と言い出す子、ノートの切れ端に追加したいことを書いて、『これを発表資料に追加で貼ってほしい』という子もいましたね。

子どもたちが、見てくれた人との対話を通して気づきを得て、発表会のなかでも学びを深めて成長している証だと感じました」(田嶋先生)

発表会も普段の学びと地続きであり、子どもたちの貴重な成長の場となっています。

第3回では、「正解のない問い」に「自分だけの答え」を見つける、自由学園特有の「探求学習」の内容と、学習によって起こった子どもたちの変化についてうかがいます。

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学校法人自由学園 初等部
東京都東久留米市にある、豊かな自然の中で子どもが子どもらしく学ぶ私立小学校。子どもたちに「気づき」を促しながら、自ら学び、考え、行動できる力の土台を作ることを目指す。幼稚園から最高学部(大学部)までの一貫教育にて、SDGs・ESDとも関連しながら環境文化創造に関わる一貫教育を実践している。

取材・文 川崎ちづる

『【小学校教育2.0】自由学園の実践』の連載は、全4回。
第1回を読む。
第3回を読む。
第4回を読む。
※第3回、第4回は公開日までリンク無効

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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。