自由学園・体験型学習を実践した教師が気づいた「今の大人に必要なある視点」

【小学校教育2.0】自由学園の実践#2「体験からはじまる学び(後編)」

大人が「いい子」をアップデートする必要も

こうした、子どもたちの興味を育てていく学習を行うためには、「大人の側も認識を改める必要がある」と高橋先生は語ります。

「自分の興味のあることを見つけて、『これって面白い』と思ったら夢中でその内容を掘り下げていく。そういうタイプの子どもは、休み時間に何かを調べに行ったまま、授業がはじまってもなかなか戻ってこない……なんてこともあります。

子どもたちが夢中になる遊びの一つが、木登りです。  写真提供 自由学園初等部

従来の学校教育の価値観だったら、こうした子は『問題児』扱いされてしまって、『みんなに迷惑をかけないで』と注意ばかりされていたと思います。

でも、実は学びについては高い熱量を持っていて、興味のあることをわき目もふらずに学んでいくことができる。もちろん、集団生活のなかでは規則を守って生活することは大切ですが、ただ規律正しく生活していればいい、というわけではありません。

これまでの教育では、大人の言うことを聞く扱いやすい子を『いい子』と呼び、そうした子を育てようとしてきた面があるのではないかと思います。

しかし、ひとつのことに夢中になって学んで行ける子も素晴らしいし、とっても『いい子』ですよね。子ども一人ひとりが持っている個性、良い面をしっかりと見つめて、それらを引き出してあげることが重要だと感じています」(高橋先生)

先生は「学びをサポートする」存在

子ども一人ひとりの興味や関心に目を向けながら授業を行うのは理想的ですが、準備が大変になり、先生の負担が増えてしまうのではないでしょうか。

「従来型の、先生が『これについて学ぼう』と決めて、子どもを用意した方向へ引っ張っていくような学習スタイルは、その過程やゴールを先生自身が決めることができるので、コントロールはしやすいですよね。

ただ、その分、子どもたちの学びへの意欲を高めたり、主体性を引き出したりすることは難しくなり、結果的に実りある学びにするために、別の部分で労力が必要となります。

一方で、子どもたちが自ら『これをやりたい』と選んだ場合は、学びに向かう熱量が段違いに高くなりますから、適切なサポートさえできれば、子どもたちはぐんぐん学習を前に進めていくことができます。

つまり、準備自体が増えるのではなく、準備する時期やポイントが異なる、ということなんですね。

子どもたちの学びがそれぞれどんなふうに進んでいて、どこに課題があるのかなどを把握し、適切な支援を考えるのは大変な面もあるでしょう。

でも、先生方と話していると、イキイキと目を輝かせて学びを楽しむ子どもたちの姿こそがやりがいにつながっている、そんなふうに感じますね」(高橋先生)

自由学園では、「先生の役割」は子どもたちに何かを教えることではなく、一緒になって考え、学び方や方向性のヒントを示し、サポートすることだと考えています。

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