
【西新宿小学校】通知表・単元テスト・宿題をなくしてどうなった? 学力偏重から変わり始めた保護者の意識
学校の「当たり前」を考える 西新宿小学校の改革 #2 子ども・保護者の変化
2025.05.18
新宿区立西新宿小学校校長:長井 満敏
通知表と単元テストの代わりに導入した「CDT」
単元テストを廃止した西新宿小学校ですが、テストをまったく行っていないわけではありません。学習した内容の定着度合いを把握するために、CDTという学力検査を年間2~4回(回数は教科によって異なる)実施しています。
CDTで単元テストよりも長い期間の理解度を確認し、学習した内容が定着しているのかを確認したいと考える先生や保護者の要望に応えています。
「通知表がないと学校での子どもの様子がわからない」という保護者の声には、個人面談をそれまでの年間1回から2回に増やすことで対応してきました。
「個人面談では普段の学習の様子に加えてCDTの結果もお話ししますが、その子自身のよさ、成長などをもっと伝えていく必要があると考えています。
そして、保護者からも家庭での様子を共有していただき、その子のよい面を認め合えるポジティブな情報交換の場にしていくことが理想です。現状でもそうした方向にシフトしていますが、まだ道半ば、という感覚です。今後改善していきたい点でもあります」(長井先生)

一方で、保護者と学校の関係が、徐々に変化している部分もあるといいます。たとえば学校へのクレーム。この2年間は非常に少なくなり、特に先生の子どもへの対応に関する苦情はほぼない状態です。
「通知表で『評価される』という感覚は、子どもだけでなく保護者にもあったのではないでしょうか。通知表廃止により、学校と保護者がともに子どもを支える関係になりつつあると感じます」(長井先生)
保護者の「子ども観」にも変化が
この2年間、長井先生は保護者と気軽に対話しようと、積極的にその機会を設けてきました。また、ことあるごとに、「テストの点数や成績で序列化するのではなく、一人ひとりが持つ個性を認めていきたい。そして、子どもたちが『おもしろい』と思える探究的な学びへと変えていきたい」という思いを伝えてきました。
そうした対話の効果か、少しずつ保護者の『子ども観』にも変化が表れています。前述の宿題について話してくれた保護者からは、次のような声も聞くことができました。
「今は子どもを『学力』で評価するような価値観からは卒業しましたが、まだ通知表があった第1子(現在中学3年)の小学生時代は、通知表を前に『なぜできないの』『勉強してないからでしょ』と厳しく問い詰めることもありました。もっと本人のよさに目を向けてあげられたらよかった……」
さらに、一部の保護者は長井先生の理念に共感し、新たに開始した体験型学習に積極的に協力するなど、改革を支援してくれるようになりました。
「応援してくれる保護者の方々には、本当に感謝しています。ですが、現在の西新宿小学校の教育方針とは相容れない考えや意見であったとしても、ぜひそれを我々に伝えてほしいと思っています。
学校教育は過渡期にありますから、いろいろな考えがあって当然です。敵対するのではなくお互いの話に耳を傾け、対話することでよりよい学校になるのですから」(長井先生)
第3回は、変革に対する先生方の反応、今求められている学校の役割などについてうかがいます。
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【長井満敏(ながいみつとし) プロフィール】
東京都公立学校教員、指導主事などを経て新宿区立西新宿小学校校長に就任。専門は学校経営、理科教育。子どもたちの「学びたい」を育む教育を目指している。
取材・文 川崎ちづる
【学校の「当たり前」を考える 西新宿小学校の改革】の連載は、全4回。
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第4回を読む
※公開日までリンク無効

川崎 ちづる
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
長井 満敏
東京都公立学校教員、指導主事などを経て新宿区立西新宿小学校校長に就任。子どもたちの可能性を最大限に引き出すことに情熱を注ぎ、2023年度からは通知表、単元テスト、宿題を廃止するなど、大胆な学校改革を推進。専門は学校経営、理科教育。子どもたちの「学びたい」を育む教育を目指している。
東京都公立学校教員、指導主事などを経て新宿区立西新宿小学校校長に就任。子どもたちの可能性を最大限に引き出すことに情熱を注ぎ、2023年度からは通知表、単元テスト、宿題を廃止するなど、大胆な学校改革を推進。専門は学校経営、理科教育。子どもたちの「学びたい」を育む教育を目指している。