小島よしおが子どもへ伝授! 「学校がつらい」を救う“パワーギャグ”と隠された意味とは?
シリーズ「不登校のキミとその親へ」#5‐2 お笑い芸人・小島よしおさん~ギャグの力~
2024.07.05
お笑い芸人・タレント:小島 よしお
年間150以上のステージやさまざまなシーンで子どもたちに大人気のお笑い芸人・小島よしおさん。
「そんなの関係ねぇ!」などのギャグでいつも大盛りあがりしますが、じつは本人も自分のギャグで元気づけられていると言います。
今、学校に行けない小中学生は約30万人(令和4年度文部科学省調べ)。悩んでいる子どもたちへ、元気がでる“よしおギャグ”の不思議な力とその意味を伝えます。
※2回目/全4回(#1、#3、#4を読む) 公開日までリンク無効
小島よしおPROFILE
お笑い芸人・タレント。1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグでブレイク。現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。
よしおは自分のギャグで自分を励ましている
──ステージで小島さんが全身を使ってギャグを繰り出すと、客席の子どもたちのボルテージがどんどん上がっていきます。「そんなの関係ねぇ!」をはじめ、小島さんのおなじみのギャグは、どれも見る人を元気にしてくれますね。
そう言ってもらえるのは、すごくうれしいです。客席のピーヤ(子ども)たちに笑って元気になってもらうのが、お笑い芸人である自分の役目だと思っています。ここだけの話ですが、僕は自分のギャグで自分を励まして、こっそり元気になってるんです(笑)。
「そんなの関係ねぇ!」「ピーヤ」「おっぱっぴー」「ダイジョブダイジョブ」「前へ前へ前へ」「ハイ、ずいずいず~い」……。どのギャグも長い付き合いですね。
ほかにもたくさんのギャグを考えたんですが、ほとんどすぐに使わなくなってしまいました。頭をひねって作ったギャグって、不思議とあんまりウケないんですよね。こうやって見てみると、ふとした拍子に、というか追い込まれて出てきたのが多いですね(笑)。
元気になれる言葉が残っているのは、きっと僕がそういう言葉が好きだからだと思います。好きだから、気持ちを込めて言えるっていうところがあるのかもしれませんね。
──小島よしおさんのギャグは、口に出すと気持ちが楽になる神通力があります。学校に行くことや友だち関係が苦しいと感じたときに、おすすめのギャグは?
「ピーヤ」ですかね。漢字にすると「比べるのを止めよう」と書いて「比止」(ピーヤ)です。大きな声で「ピーヤ」と言うのは勇気がいると思うので(笑)、心の中で小さくつぶやいてみてはどうでしょうか。
僕はライブで「ピーヤ(子ども)たち、今日はありがとう!」と呼びかけたり、悩み相談の回答とかで「○○ピーヤ」と名前のあとに敬称代わりに付けたりしています。それだけで笑いが生まれて盛り上がるんですよね。
「ピーヤ」は英語で書くと「PEER」。この言葉には「同僚・仲間」という意味があります。じつは、そういう意味があるのを知ったのは、使い出してずいぶんたってからでした(笑)。最初はバラエティ番組で新ネタを披露しなきゃいけなくなったときに、音の響きのおもしろさからたまたま生まれた言葉なんですよね。
漢字の「比止」も、じつは後付けです。3年前のお正月番組で一年の抱負を書き初めすることになって、何を書こうか考えたときにひらめきました。
今って、ネットとかもあって入ってくる情報が多いから、どうしても人と自分を比べちゃいますよね。比べれば比べるほど優越感やら劣等感で感情が揺さぶられて、気持ちが不安定になってしまうんじゃないかと心配になります。
僕が子どもだったころは、良くも悪くも世界が狭かったから、悩みの対象が少なかったように思います。でも、今はネットやSNSがあるから、知らない場所でキラキラ輝いている同年代と自分を比べたり、あらゆる面で友だちと自分を比べたりしてしまう環境があるのかもしれません。
──前回の記事(#1)で「ものさし」の話が出ました。自分の「ものさし」を持つことができたら、比べてしまう苦しみからラクになれるでしょうか。
一概には言えませんが、ある程度は解き放たれるんじゃないか、というかそうなればいいなと思います。自分のものさしと友だちのものさしは別だと、みんなが理解できれば理想的ですよね。
そのためには、相手の気持ちを考えるということについて、大人の僕たちもあらためて向き合う必要があるのかな。
誰かと自分を比べて苦しくなったら、手のひらを上に向け、おでこの中心に親指の付け根を当てるようにして、「ピーヤ」と口に出してみてほしいですね。
頭の中で「比止」の漢字を思い浮かべながら、何度も繰り返しているうちに楽しくなってきて、悩んでいても「何の意味もなーい!」(ギャグ)という気持ちになってくれたらうれしいです(笑)。
大事じゃないことは「そんなの関係ねぇ!」で蹴散らそう
──親や先生の言うことが、すごくうっとうしく感じられるときもあります。そんなときは、どのギャグがオススメですか?
大人があれこれ言ってくれるのは、自分のためを思ってなんだってことは、ピーヤたちも大人になったときには気がつくと思うんです。でも、そのときはやっぱり反発しちゃうのが正直なところですよね。
毎日がつらくてつらくて、親に勇気を振り絞って「学校を休みたい」と言ったら、頭ごなしに「学校に行かなかったら、将来どうするつもりなの!」なんて𠮟られた経験がある子もいるかもしれません。そんなときこそ、「そんなの関係ねぇ!」の出番じゃないかと思ってます(笑)。
つらいことや自分の目標や夢を妨げてくるようなことは、「そんなの関係ねぇ!」で蹴散らして、ブレない心を養ってもらえたらうれしいです。ただ、あくまで前向きに使ってほしいですね。「宿題なんてそんなの関係ねえ」みたいにネガティブに使われちゃうと、17年前みたいにPTAから禁止にされてしまうので(笑)。
僕も以前、周囲から「一発屋」とか何とか言われたときは、よく実際に言ってました。「俺もビリー(ビリーズブートキャンプ)も一発屋、でもそんなの関係ねえ!」なんてネタの中に取り入れたりもしましたし(笑)。
ピーヤたちが、この言葉を心の中で叫ぶことで、雑音を遠ざけて、大事なものを見つけ出してくれたら、すごくうれしいと思います。
──「比止(ピーヤ)」と同じように、「ハイ、ずいずいず~い」の「ずい」にも漢字があるそうですね。
「ハイ、ずいずいず~い」も、語感のおもしろさから生まれて、あとから漢字と意味を考えました。ひとつめの「ずい」は真髄(しんずい)の「髄」、ふたつめは成りゆきにまかせるという意味の「随」です。みっつめの「ずい」の意味は、絶賛募集中です(笑)。
自分でどうにもならないときは、流れに身をゆだねてみるのもいいかと思うんです。流木の精神ですね。いつかどこかには流れつきますから(笑)。何かをつかむように指を握ったり開いたりしながら腕を前後させて「ずいずいず~い」と言ってみたら、ものごとの真髄もつかめるかもしれません(笑)。
「ダイジョブダイジョブ」は、気持ちがつらくなったときに口に出してみてほしいですね。余裕があれば、頭の上で手を叩きながらね(笑)。僕は“言霊(ことだま)”ってあると思ってて、大丈夫って言ってると大丈夫な状況になると信じてるし、自分も何回も経験してきました。お手紙なんかでも、大丈夫になったという話をよくいただきます。なのでぜひ!
「前へ前へ前へ」も、同じような効果があると思ってます。学校に行けないピーヤたちにとって、「前」っていうのは必ずしも学校に戻るって意味じゃなくて、向きを変えるだけでどんな方向も前になると思うんですよね。後ろに下がるのも、180度回れ右をすればそこは前になるわけで。そんな感覚がいいかなって思います。
──最後に「おっぱっぴー」について教えてください。この言葉は、口に出すだけで幸せな気持ちになります。
「おっぱっぴー」は、何を隠そう「Ocean Pacific Peace」(太平洋に平和を)と、「All People Happy」(みんな幸せ)というふたつの言葉の略です。これも後付けですけどね(笑)。せっかく生まれてきたんだから、みんな幸せになろうという思いを込めています。
生き方のスタイルや道のりなんて人それぞれ。自分が納得できる生き方が見つかれば、それは最高にハッピーなことじゃないかな。これを読んでくれているすべてのピーヤたちが、楽しい明日を、いや、楽しい今日でいられるように、よしおが心を込めて叫ぶね。「はい、おっぱっぴー」!
取材・文/石原壮一郎
※小島よしおさんインタビューは全4回(公開日までリンク無効)
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石原 壮一郎
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか
小島 よしお
1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年よりピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグで大ブレイク。同年の「流行語大賞」にノミネート。 現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2020年にYouTubeチャンネル『おっぱっぴー小学校』を開設、チャンネル登録者数15.8万人(2024年6月時)。2024年、小児がんと戦う子どもを応援するゴールドリボン・ネットワークのアンバサダーに就任。 2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。 近著に『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)など。
1980年、沖縄県生まれ千葉県育ち。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年よりピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」のギャグで大ブレイク。同年の「流行語大賞」にノミネート。 現在は年間150本以上の子ども向けライブをこなす“最強キッズ芸人”として活躍。2020年にYouTubeチャンネル『おっぱっぴー小学校』を開設、チャンネル登録者数15.8万人(2024年6月時)。2024年、小児がんと戦う子どもを応援するゴールドリボン・ネットワークのアンバサダーに就任。 2024年2月に長男が誕生し1児のパパに。 近著に『最強無敵の雑草たち(10歳から学ぶ 植物の生きる知恵)』(家の光協会)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)など。