
【受験を自分ごとに】結果がすべてではない 中学受験塾の教室長が伝えたい「本当に大切なもの」とは
工藤純子『中受 12歳の交差点』に学ぶ、親子で受験期を乗り切る方法
2025.07.06
ライター:akira
「中受」を手に取ったら、ぜひ注目してほしい3つの読みどころ
1.「受験を自分ごとにする瞬間」に注目してほしい
稲葉新(あらた)、深谷広翔(ひろと)、小野寺つむぎ。3人の子どもたちは、それぞれちがう形で受験に向かいます。
でも共通しているのは、誰もがどこかで「受けさせられる受験」から「自分で選んだ受験」へと変わっていくことです。
「おれは自分の意思で勉強しているし、受検したいと思っている。」(p.8)
この一言に、子どもたちが「自分の受験」に変えていくための大事なエッセンスが詰まっています。
どんなに成績がよくても、どんなに努力しても、「自分のためにやっている」と思えなければ、最後の最後で踏ん張れません。この「自分ごと化」の瞬間を、ぜひ親子で感じ取ってください。
2.「過程を誇る」という視点をもらえる
「中受」は、合格の瞬間だけを描く小説ではありません。どちらかというと、もっと手前の、苦しかったり、迷ったり、うまくいかなかったりする「過程」を大事に描いています。
「試験は敵じゃないよ。どんな問いからも、何かを学ぶことができるの。だから、楽しんできて」(p.136)
結果よりも、「ここまで頑張った」「この壁を超えた」そのひとつひとつが、どれだけ尊いか。
読んだあと、きっと子どもたちの努力の見え方が変わるはずです。
3.「子どもの本音」が、こんなにもリアルに描かれている
『中受』に登場する子どもたちは、どこか理想化されたがんばる子ではありません。
本当に、身近にいそうな、心の揺れを抱えた子どもたちです。
たとえば、小野寺つむぎ。自信がなくて、「どうせ無理」と思いかけていた彼女が、少しずつ自分の気持ちに向き合っていきます。
「好きだから。だよね。好きなことなら、面倒でもできる。がんばれる。」(p.109)
この言葉は、結果ではなく、「自分の気持ちで進む」ことの大切さを教えてくれます。『中受』は、子どもたちの小さな決意や揺れを、静かにすくい取ってくれる作品です。その姿に、大人の私たちも、あらためて心を動かされます。
子どもたちに届けたい、受験期の3つのメッセージ
受験は、どうしても「結果」が目に見える世界です。偏差値、合否、志望校──数字や言葉で、目に見えるものばかりが評価される。でも、その過程で子どもたちが手にしている「本当に大切なもの」は、数字や結果だけでは測れないものばかりです。だからこそ、受験を走り抜ける子どもたちに、こんな3つのメッセージを届けたいと思います。
1.受験は戦いだけど、味方もちゃんといる
広翔が、最初は戸惑いながらも、自分の意思で「受験する」と決めたように、子どもたちもそれぞれ、自分なりに一歩を踏み出しています。でも、一人で戦っているわけではありません。
「味方がいると心強いね」「君にもちゃんと応援してる人がいるよ」こんなふうに、そっと伝えてあげたいです。家族も、先生も、友だちも、誰もが「君を信じている」というメッセージを、言葉にして渡してあげるだけで、子どもの背中はぐっと軽くなるのです。
2.結果じゃなく、過程をたたえよう
受験の直前や、合格発表の前。子どもたちは、言葉にしきれないほどの不安や緊張を抱えています。そんなときに必要なのは、「うまくいくよ」という根拠のない励ましではありません。
大事なのは、これまでの日々を認めること。
「頑張ってきたこと自体がすごいんだよ」
結果が出る前から、ちゃんと努力をたたえる。そうすれば、子どもたちは「自分はもう十分頑張ったんだ」と思える。どんな結果であっても、胸を張って次に進める。そんな受験にしてあげたいのです。
3.大人も「学ぶ楽しさ」を忘れずに
中学受験は、つい「勝ち負け」みたいになりがちです。でも、佐久先生が「学ぶって楽しいんだよ」と言っていたように、本来、勉強は点数だけのものではありません。
知らなかったことを知る。できなかったことができるようになる。世界が広がる。
そんな小さな喜びを、子どもと一緒に感じることができたら、受験も、ただ苦しいだけのものではなくなります。
「勉強って、点数だけじゃないよね。知らなかったことを知れるってすごいよね」
そんなふうに、親自身も「学びの楽しさ」を忘れずにいられたら、子どもも自然と、前向きな気持ちで机に向かえるはずです。