2025年中学入試ふりかえり「国語物語文」にはこれが出た!素材文に選ばれる作品の特徴と注目の出題作を紹介〔中学受験の専門家が解説〕

200校400題の入試問題を大解剖! これからおさえておくべき本を首都圏中学受験塾・教室長が回答

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入試頻出著者はこの人だ

青山美智子『リカバリー・カバヒコ』は、栄東東大特待、佐久長聖1、東洋大学京北1の3校で出題されています。昨年の芝2次は第4話「勇哉の足」でした。第1話「奏斗(かなと)の頭」を読みたい方は光文社文芸編集部のnoteにもアップされています。2024年本屋大賞7位の作品ということもあり多くの人に手に取られた作品です。

青山美智子さんは入試頻出著者でこのほかにも『お探し物は図書室まで』が東洋英和A女学院と早稲田2で、『ただいま神様当番』が、かえつ有明1で、『月の立つ林で』が西大和学園で出題されています。

また、2025年も本屋大賞に『人魚が逃げた』がノミネートされています。

『リカバリー・カバヒコ』 青山美智子 光文社 2023年9月21日刊
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──「ちょっと違うかな。人間の体はね、回復したあと、前とまったく同じ状態に戻るというわけじゃないんだ」(『リカバリー・カバヒコ』より、入試素材文を抜粋)

狙われやすいテーマ「俳句と短歌」

百舌涼一『17シーズン 巡るふたりの五七五』は、晃華学園、頌栄女子学院2、専修大学松戸1の3校で出題されました。

今後も俳句や短歌をテーマにした本は狙われる可能性があります。過去には同テーマで『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』『そらのことばが降ってくる:保健室の俳句会』なども出題されています。

『17シーズン 巡るふたりの五七五』 百舌涼一 講談社 2024年2月26日刊

──「『色のない 虹を見たこと ありますか』気づけば『五・七・五』が、『十七音』が、音々のつくった『俳句』が、口から勢いよく放たれていた」(『17シーズン 巡るふたりの五七五』より、入試素材文を抜粋)

出題校は少ないですが、注目したい作品を紹介します。

宮田愛萌『春、出逢い』は、筑波大学附属、立教新座1の2校で出題されています。狙われやすい短歌がテーマです。

発売日が遅いということもあり来年以降も出題の可能性があります。また、宮田愛萌さんは女性アイドルグループ「日向坂46」の元メンバーでもあります。

『春、出逢い』 宮田愛萌 講談社 2024年8月9日刊

──「しかし、俺の心の準備がまだはじまってもいないうちに審査員による投票が終わり、あっという間に四対一で朱那ちゃんが勝った。それが俺には少し意外で、ほっとしつつも、そうなのか、と思う」(『春、出逢い』より、入試素材文を抜粋)

注目しておきたい◯◯賞

伊与原新『藍を継ぐ海』は、第172回直木賞(2024年下半期)受賞作品です。

直木賞受賞作品は過去にも出題されています。『八月の御所グラウンド(170回 2023年下半期)』『夜に星を放つ(167回 2022年上半期)』。

2024年下半期の直木賞の発表が2025年1月15日でしたので発表後に読むのはさすがに難しかったかなと思います。おなじく伊与原新さんの作品では『月まで三キロ:アンモナイトの探し方』が日本大学三島と頌栄女子学園1で出題されています。

『藍を継ぐ海』 伊与原新 新潮社 2024年9月26日刊

──「『この子たちみんな、勇気ありますね』この海の向こうに、何があるかわからないのに。待ち受けているのは、きっと大変な試練ばかりなのに」(『藍を継ぐ海』より、入試素材文を抜粋)

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