第45回講談社絵本新人賞受賞作『どんぐりず』ができるまで⑤

【制作日記⑤】打ち合わせ、挫折、そして急展開!

「わたしが大事にしたいことは、読者がこの絵本から離れないことです。途中、読み進める道を見失わず、本を読んでいることに気づかないほど(読んでいることを忘れてしまうほど)、どんぐりたちと駆け抜けることだと思っています」とNさん。

課題を乗り越えるべく、アイデア出しをくりかえしました。

A:これまでのラフの後半を推敲する
B:思いきって構造部分から見直す

というふたつの道が出てきました。

応募作にあった「どんぐりのゴールは土に到達すること」という考えを、もう一度採用してはどうかとNさん。

「ゴール!」と白いテープを切るかたちではなくて「土に到達する」という終わり方ができないか。読者がああよかったと安心できるラストにしたいと話し合いました。

10回目の打ち合わせでは、おもいきってページ数を32ページから24ページにして、着地シーンで終わらせることなどを話し合いました。

結局、AにもBにも取り組むことになったのです。

そうしてできたラフを読みきかせしてもらって、おもわずこぼれた言葉は、「絵本っぽいですね」。これはゴールが近い!

その後、ラフ修正をくりかえしました。

最後の見開きで「終わった」感を出したい。失ったゴールを取り戻せ!

複雑にならずシンプルなまま、5人全員で終えられるなら、それはまさに『どんぐりず』の物語になるのではないかと思い直した日でした。
ジャンプから土に落ちて、ころころころがるどんぐりたち。
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2025年2月下旬、11回目の打ち合わせ。

最後の見開き、扉、奥付について話し合います。

見返しには、どんぐりをリアルサイズで描き、裏表紙には、その後、芽が出たどんぐりを描くことに。

カバー前袖、見返し、扉、本文、後見返し、裏表紙。すべてに理由が生まれ、細かい辻褄を合わせていくのが楽しくなってきました。

一冊になってきていることに感動し、さらにまたダミー絵本を制作。

3月に入ってNさんより、「編集長、販売担当、宣伝担当を前に読みきかせしました」との一報。良い反応をもらって、試し読みの冊子(プルーフ)を作って、書店さんに配布する案もでたとのこと。

打ち合わせ12回目。

2025年8月末発売を目指すことに決定。
カレンダーに記す。いよいよ、2025年8月28日発売決定!
Nさんからは「子どもたちは大人より細部を見ています。表情豊かにコミカルでおかしみを意識しながら、どんぐりずは自分の友達という意識をもって本描きへ進んでください」。

いよいよです!
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はた なおや

秦 直也

Naoya Hata
絵本作家

1981年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学建築学科卒業。 2024年、『どんぐりず』で、第45回講談社絵本新人賞受賞。絵本に『いっぽうそのころ』、著作に塗り絵ポストカードブック『おしごとどうぶつ編』などがある。

1981年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学建築学科卒業。 2024年、『どんぐりず』で、第45回講談社絵本新人賞受賞。絵本に『いっぽうそのころ』、著作に塗り絵ポストカードブック『おしごとどうぶつ編』などがある。