

第45回講談社絵本新人賞を受賞したのは、この賞の歴史でもまれな「幼児絵本」。
イラストレーターとして活躍していた秦直也(はた なおや)さんが、講談社絵本新人賞に応募し……。制作日記6回連載のうちの第2回です!

第二次選考のため、さっそく原画を送付。もともとは鉛筆画なので、カラー作品にするにはプリントしたものに着色するしかないかなと考えていましたが、やはり原画のほうがインパクトがあるかもと鉛筆画を発送。
原画の上にトレーシングペーパーを重ね、カラーペンでハチマキ部分を着色。テキストも書きこみました。

そして9月24日、知らない電話番号からの着信。かすかにきこえる「新人賞」という言葉。
スマホを耳にぐりぐり押し当てると、「新人賞に『どんぐりず』が……」という声が微かにきこえます。スピーカーに切り替えたところ、明日、受賞が発表されるとのこと。
思えばイラストレーターになったきっかけも、初めてのコンペ挑戦で入選したことがきっかけでした。こんなことってあるのか。

現れたのは、担当編集者Nさん(以下Nさん)。「写真を撮らせていただきます」「受賞ご挨拶のスピーチをいただきます」。苦手なものが押し寄せてきました。頭の中は、もはや映画『バトル・ロワイアル』のシーン。
たった1分のスピーチに緊張し、数日前からソワソワして胃が痛かったのですが、震える声でなんとか受賞挨拶を乗り切り、「スピーチ良かったです」というNさんの優しさを苦笑いで返しました。

よくインタビューで、何に影響を受けましたか? というような質問がありますが、最近やっと、趣味は読書と言えるようになってきたところです。まったく浮かびません。
そもそも絵本作家といっても、身近に小さな子もいないのです。もっとも絵本に向かない人が絵本を始めてしまったような気になりました。
その日、新宿の宿泊先に向かう雑踏で、Nさんが別れ際、「怖い人にからまれたら連絡ください」と。編集者って、ボディーガードのような存在だったとは!

秦 直也
1981年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学建築学科卒業。 2024年、『どんぐりず』で、第45回講談社絵本新人賞受賞。絵本に『いっぽうそのころ』、著作に塗り絵ポストカードブック『おしごとどうぶつ編』などがある。
1981年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学建築学科卒業。 2024年、『どんぐりず』で、第45回講談社絵本新人賞受賞。絵本に『いっぽうそのころ』、著作に塗り絵ポストカードブック『おしごとどうぶつ編』などがある。