第45回講談社絵本新人賞受賞作『どんぐりず』ができるまで②

【制作日記②】ええ? まさかの贈呈式

絵本作家:秦 直也

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どんぐり ごろごろ どんぐり よいしょ! どんぐり5人組が、木から落ちて着地するまで、まるで運動会のように走ってころんで泳いで飛びはねて……。

第45回講談社絵本新人賞を受賞したのは、この賞の歴史でもまれな「幼児絵本」。

イラストレーターとして活躍していた秦直也(はた なおや)さんが、講談社絵本新人賞に応募し……。制作日記6回連載のうちの第2回です!
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第一次選考結果発表の日は、まあ無理だろうなーなんて思いながら、「講談社えほん通信」のホームページで結果を確認するのが怖くて、「どんぐりず」とスマホでググりました。15ページ目ぐらいに出てきて、おおっ!

第二次選考のため、さっそく原画を送付。もともとは鉛筆画なので、カラー作品にするにはプリントしたものに着色するしかないかなと考えていましたが、やはり原画のほうがインパクトがあるかもと鉛筆画を発送。

原画の上にトレーシングペーパーを重ね、カラーペンでハチマキ部分を着色。テキストも書きこみました。
どんぐりは鉛筆画、ハチマキ部分はカラーペンで着色。
2024年8月31日、最終選考に残っているとのお知らせが。ええ? まさかねー!

そして9月24日、知らない電話番号からの着信。かすかにきこえる「新人賞」という言葉。

スマホを耳にぐりぐり押し当てると、「新人賞に『どんぐりず』が……」という声が微かにきこえます。スピーカーに切り替えたところ、明日、受賞が発表されるとのこと。

思えばイラストレーターになったきっかけも、初めてのコンペ挑戦で入選したことがきっかけでした。こんなことってあるのか。
これまで装画や挿絵を担当した書籍たち。
10月24日、第45回「講談社絵本新人賞贈呈式」のため、東京へ。

現れたのは、担当編集者Nさん(以下Nさん)。「写真を撮らせていただきます」「受賞ご挨拶のスピーチをいただきます」。苦手なものが押し寄せてきました。頭の中は、もはや映画『バトル・ロワイアル』のシーン。

たった1分のスピーチに緊張し、数日前からソワソワして胃が痛かったのですが、震える声でなんとか受賞挨拶を乗り切り、「スピーチ良かったです」というNさんの優しさを苦笑いで返しました。
授賞式で賞状と賞金を受け取る、秦直也さん。
写真撮影、人前での挨拶、制作日記の執筆が必須と書いてあれば応募していなかったかもしれません。

よくインタビューで、何に影響を受けましたか? というような質問がありますが、最近やっと、趣味は読書と言えるようになってきたところです。まったく浮かびません。

そもそも絵本作家といっても、身近に小さな子もいないのです。もっとも絵本に向かない人が絵本を始めてしまったような気になりました。

その日、新宿の宿泊先に向かう雑踏で、Nさんが別れ際、「怖い人にからまれたら連絡ください」と。編集者って、ボディーガードのような存在だったとは!
はた なおや

秦 直也

Naoya Hata
絵本作家

1981年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学建築学科卒業。 2024年、『どんぐりず』で、第45回講談社絵本新人賞受賞。絵本に『いっぽうそのころ』、著作に塗り絵ポストカードブック『おしごとどうぶつ編』などがある。

1981年、兵庫県生まれ。大阪芸術大学建築学科卒業。 2024年、『どんぐりず』で、第45回講談社絵本新人賞受賞。絵本に『いっぽうそのころ』、著作に塗り絵ポストカードブック『おしごとどうぶつ編』などがある。