そんな魅力的な絵本が多数展示されたフェアがありました。ドイツで2022年10月19日から23日までの5日間、フランクフルト国際ブックフェアが開催。フェアには世界中から出版社が集まってブースが立ち並び、さまざまなイベントが行われたのです。
30年間にわたって、世界中で3000万人以上に愛され続ける絵本
『にじいろのさかな』は、わかち合うことや、勇気をもって行動すること、ほんとうに大切なものを見つけるまでを描く絵本です。「にじいろのさかな」シリーズは、1992年に第1作がスイスで刊行されてから、多くの子どもたちに読み継がれ、2022年に30周年を迎えました。世界中で3000万人以上に愛されるロングセラー作品です。
フィスターさん:世の中は、ほんとうに大きく変わりましたね。私が初めて絵本を描いた1984年には、コンピュータも携帯電話もありませんでした。今では想像もつきません。でも、『にじいろのさかな』で描いている価値観や考え方は、今も昔も変わらないし、これからも変わらないだろうと思うと、なんだかほっとしますね。
物語を家族で話し合うための材料に
フィスターさん:いつも新作には、少なくとも1つは新しいキャラクターを登場させようと思っています。でも、イラストのスタイルや海の中でのお話といった『にじいろのさかな』の持つ世界は変えないようにしているんですよ。
『にじいろのさかなとおはなしさん』には、ちょっと個性的な新しい仲間、ウンベルトが登場します。ウンベルトは、みんなにたいへんな知らせを伝えにきます。だれかが海の底の栓を抜こうとしているというのです。海の水がなくなったら、みんな干物になっちゃいます! さあ、たいへん! ……でも、ほんとうかなぁ? みんなを驚かせることと楽しませること。にじうおが教えてくれる、大切なこととは?
フィスターさん:今の子どもたちは、SNSに触れる年齢がどんどん低くなっているので、何がほんとうなのか、何が噓なのかを話すことがとても大切になっていると思います。何を信用して、どこに気をつければいいのか。この膨大な情報量や押し寄せるニュースなどをどのように扱えばいいのか。このお話が、家族で話し合うための材料になればいいな、と願っています。
自分を変える勇気を持つことの大切さ
第1作の『にじいろのさかな』で、にじうおは海でいちばん美しい魚として登場します。にじうおのうろこは、キラキラと銀色に輝いて友だちを魅了します。でも、美しいうろこを自慢するにじいろは、やがてひとりぼっちに。淋しくなったにじうおは考えを変え、銀色のうろこを友だちに分け与えて、心から幸せになるのです。
フィスターさん:1作目でにじうおが学び、自分を変えなければならなかったように、ウンベルトも自分の行動を変えなければなりませんでした。お話の中でいちばんおもしろいのは、自分を変えることができるキャラクターたちです。にじうおやウンベルトは、そんなキャラクターです。
──キラキラ光るうろこは、何を表しているのですか。
フィスターさん:お金や豊かさを象徴しています。私たちは、それを分かち合わなければなりません。でも、キラキラ光るうろこは、にじうおにとって大事なものでしたから、友だちに分けてあげるには、自分を変える勇気が必要だったと思いますよ。
──最後に、日本の読者にメッセージをお願いします。
フィスターさん:こんなに長い年月、「にじいろのさかな」シリーズが愛されていることが信じられない思いです。日本の読者の方々の応援と信頼がうれしく、誇りに思います。これからも「にじいろのさかな」シリーズを読み続けてくださいね!
作者/マーカス・フィスター
1960年、スイスのベルンに生まれる。高校卒業後、ベルンの美術工芸学校の基礎科に入学。その後、グラフィック・デザイナーとして、1981年から1983年までチューリッヒで働く。カナダ、アメリカ、メキシコを旅行ののち、帰国後はフリーランスのグラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活躍している。主な作品に「ペンギンピート」シリーズ、「うさぎのホッパー」シリーズ、「にじいろのさかな」シリーズなどがある。1993年、『にじいろのさかな』はボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞。「にじいろのさかな」シリーズは、世界で3000万人以上に読まれる大ベストセラーとなっている。
翻訳者/谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)
1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、『定義』(思潮社)、『女に』(マガジンハウス)、『ことばあそびうた』(福音館書店)、『はだか』(筑摩書房)、『世間知ラズ』(思潮社)など多くの詩作がある。ほかに、レコード大賞作詞賞受賞の「月火水木金土日の歌」、テレビアニメ「鉄腕アトム」の主題歌などの作詞、『スイミー』(好学社)などのレオニの絵本や『マザー・グースのうた』(草思社)、「スヌーピー」シリーズ(角川書店)、「にじいろのさかな」シリーズ(講談社)の翻訳など、幅広く活躍。1975年に『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1988年に『はだか』で野間児童文芸賞、1993年に『世間知ラズ』で萩原朔太郎賞などを受賞。
世界でいちばん有名な魚「にじいろの さかな」30 周年記念PV
高木 香織
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。