2022.06.02

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加藤晶子の絵本『てがみぼうやのゆくところ』制作日記

第35回 講談社絵本新人賞受賞からデビューまで 第4回「師走の強化トレーニング?! 講談社にて」

※この記事は、講談社絵本通信(2014年)掲載の記事を再構成したものです。

タイトルの通り、12月はまさに強化月間で、毎週のようにしつこく講談社に押し掛け(?)ていました。しかも1回の打ち合わせが、休みなく5~6時間にも及びました!

さて、いよいよ「束見本(つかみほん)」上での作業に入ります。「束見本」というのは、実際に製本される絵本と同じ大きさの見本で、言ってみれば白い絵本です。

3冊にわたって、絵コンテを描きこんだ束見本

この束見本に、ページめくりの感触を考えながら、実寸の絵コンテを描きこんでいきます。これまで全体が一度に見られるように描いていた、小さな絵コンテは卒業です。

さて、すっきりと整理された絵コンテを「束見本」に描いてみると……。

一度は納得して絵柄を変更していた箇所のうち、いくつかどうしても気になるところが出てきました。なかでも、トップページのインパクトが薄れてしまったのではないかという心配と、お話を整理する中で思いきって削った1枚の絵にやはり未練が……。

「今さら、こんなことを言っては今までの作業が……」と思いつつ、この想いのまま進めることもできず、担当編集者(N)さんに思い切って相談。(N)さんは、むしろ積極的に解決策をいっしょに探してくださいました。本当にありがたいことです。

とはいえ、今回の絵本は32ページと決まっています。これは紙取り・製本の問題なのですが、32ページの中でお話を展開させていかなければなりません。

何かを増やせば、何かを減らさなければならないのです。そして、出てきた解決策が、数ページにわたる場面を、おもいきって1枚にまとめてはというものでした。

じつは、応募時の絵には、見開きではなく、半ページずつで展開している場面が数枚ありました。

しかし、描き直すにあたって、できるだけ見開きで展開していくことを鉄則にしていました。

理由のひとつに、小さな人たちは、例えば同じ主人公が左ページと右ページにそれぞれ描かれていると、別々の人物ととらえてしまうおそれがあるからです。

見開き

必ずしもではありませんが、小さい人たちがそういう見方をするかもしれないということを、描く側は認識しておく必要があります。

私も認識はしていたものの、応募時にはどうしても削れないと思いこんで、半ページずつの絵を描いている箇所がいくつかありました。これをうまく整理できれば、入れたい場面を復活させることもできそうです。

ところで、今回1枚にまとめたのは、なんと3ページにわたって描かれていた「てがみぼうや」の3つの行動の場面!

3つのことを1枚にまとめるなんて無理があるのでは……と思いつつ……、ここで役立ったのが、「拡大縮小コピー貼付け技法!」といっても、そんなすごいことではないのですが……。

ここは構図が命!

一度描いた絵コンテの一部分を、少し大きく、小さく、もうちょっと右、上、といった具合に微調整しながら、拡大縮小コピーをくり返します。

切り取ったいろいろなサイズの部分コピーを、(N)さんといっしょに動かしながら、絵が散漫にならないよう、ああでもない、こうでもないと検討。

「拡大縮小コピー貼付け技法!」これを続けると↓

大分整理されてきました。人形遊びみたいで楽しいです。

読者の目線の流れも計算しながら、どうにか1ページに収まりました。いちばん大変だったシーンかもしれませんが、改めて制作したなかでもいちばん楽しいシーンだったかもしれません。

ただし、絵本のなかには、ある手段を使って、半ページに2枚の場面が描かれている見開きがひとつ存在します。ちょっとした裏技(?)を使っています。ぜひ、絵本でごらんになってみてください。

12月は、こんな感じで本当に駆け足で過ぎていきました。

もちろん、打ち合わせ後にゆっくり食事しながらなんてことはなく、講談社社内でサンドイッチをぱくついたり、講談社の社食で同じ釜の飯(?)をということでパパッと済ましたりしていたのでした。

いそがしいなかでも、いつも私に食事を取らせようとしてくださる(N)さんなのです。母のようですね(笑)。

さて、いよいよ、つぎは本描き(本番の紙に色を塗っていく作業)です!


■おまけのはなし
話は受賞式後に戻りますが、今回の審査員のひとりである「中川ひろたかさん」は、私の住んでいるところから比較的、近くにお住まいです。

受賞式後、お礼もかねて、恐れ多くも「私の仕事先にもぜひ、遊びに来てください!」とお声がけしたところ、本当に来てくださいました!(私の仕事先は、湘南唯一のお酒の蔵元で、私が働いているギャラリーショップも併設している、なかなかおもしろいところなのです。)

絵本のことはもちろん、これからのこととか、楽しいお話もたくさんしてくださいました。私が幼稚園の頃に好きで歌っていた歌は、じつは外国の遊び歌で、中川さんが訳していたものだったことも判明。その方とお話できているのですから、感激ですよね。

ちなみに、「パンやに5つのメロンパン~♪……」って歌です。

中川さんが、受賞式の際、「60歳近い私と5歳の子が絵本を通じて同じ物で楽しめる。一気に距離が縮まる」というようなことをおっしゃっていて、そうだ! 絵本ってすごい! と改めて思ったのでした。先日、中川さんは、還暦になられたそうですよ。めでたい!

★次回は「ことばのちから」をお送りします。

こちらができあがった絵本です。

『てがみぼうやのゆくところ』
作:加藤晶子 講談社

加藤晶子さんの2作目となる絵本!

クルツの写真館は、どんなどうぶつも、みんな、ごきげんにしてしまう写真館です。気弱なライオン、あまえんぼうのカンガルー、写真を撮りたがらないふたごのくま。ここにくれば、どんな悩みや問題も、クルツがたちまち解決して、ごきげんな写真を、さあ、パチリ!

『クルツのごきげんしゃしんかん』
作:加藤晶子 講談社

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