2023.07.07
トットちゃんこと黒柳徹子さんの戦争体験が絵本になりました!
これまで多くの古生物の復元画を描いてきましたが、それらを観察して描くことは不可能です。化石でしか残っていない生物の姿を、研究者とともに科学的に復元する作業は楽しいですが、どこまでいっても正解のない世界です。
今回の『クジラの進化』にも数多くの化石種が登場します。現代のクジラを知っている私たちにとっては、それほど大きな違いを感じないかもしれませんが、地上を歩いていた種や水辺と陸地を行き来していた種など、今のクジラたちとは全く違う生態を持ったクジラの祖先たちの姿を想像することはとても難しいと思います。
では現代のクジラたちの形態や生態を、私たちはどれほどわかっているのでしょうか?
この本でも深海でダイオウイカを捕食するマッコウクジラや、オキアミの群れを飲み込むシロナガスクジラの姿が描かれています。マッコウクジラは光が全く届かない海中で、巨大なダイオウイカを捕食しているとされていますが、それらがカメラに収められたことはありません。クジラが海岸に打ち上げられて死ぬことがありますが、地上の重力の影響で自重に耐えられず、生きていた時の姿を留めることは難しく、間近で観察できても正確な生きた姿を捉えることはできないでしょう。イルカなどの小型のものは水族館で観ることもできますが、マッコウクジラやザトウクジラ、シロナガスクジラを人工的に飼育することは、実現できていません。
この絵本に描かれたクジラは、化石種、現生種含めて、たくさんの想像が含まれています。それでも出来る限りリアリティを感じてもらえるよう、研究者の木村さんとディスカッションしたり、作者である水口さんからヒアリングしたりして、生き生きとしたクジラの姿を描くことを目指しました。
科学はこれからも新たな発見を積み重ねていきます。数年後にはこの絵本で描けなかった事実がわかってきているかもしれません。この本に全ての化石種、現生種が登場するわけではありませんが、最新の研究に基づいた現時点でわかっているクジラの進化について、楽しく知ることができる1冊だと思います。
2022年7月22日
小田 隆![]()
小田 隆(Takashi Oda)
三重県生まれ。東京藝術大学美術研究科修士課程修了。専攻は油画と壁画。博物館のグラフィック展示、図鑑の復元画、絵本などさまざまな分野で活躍。京都精華大学マンガ学部教員。SVP会員、日本古生物学会会員、美術解剖学会会員、なにわホネホネ団団員。![]()
写真家・ジャーナリスト。大阪府生まれ。京都大学理学部動物学科卒業。海棲哺乳類を中心に、写真集や写真絵本、書籍など多数手がける。写真集『...
小田 隆
三重県生まれ。東京藝術大学美術研究科修士課程修了。専攻は油画と壁画。博物館のグラフィック展示、図鑑の復元画、絵本などさまざまな分野で活...