2021.09.20

明日はもっといい日になる!「“大丈夫だよ”と励ましてほしいとき」の絵本

大人に効く絵本〔13〕絵本コーディネーター・東條知美

コロナ禍がまだ続く2021年秋、不安になる日も多々。最近、元気ないかもと感じたら、優しくそっと励ましてくれる絵本があります。
写真:アフロ

美しい絵に癒やされたり、ハッと気付かされたりと、大人にとっても感動がいっぱいの絵本。この連載では、“絵本のプロ”がパパママにこそ読んでほしい絵本をテーマに合わせてピックアップ。

第13回は、絵本コーディネーター・東條知美さんが「“大丈夫だよ”と励ましてほしいとき」におすすめの3冊をご紹介します。

絵本は“前を向く力”を与えてくれる

――今回の3冊は、どのような視点でセレクトしたのでしょうか?

なかなか収束の気配を見せないコロナ禍。特に小さなお子さんをお持ちの親御さんの気苦労は、いかばかりかと思います。

テレビやネットでは日々心配なニュースであふれ、家族や友人に会いたくても会えない。SNSのつぶやきを見ても、去年より今年のほうがより鬱屈した雰囲気が漂っているように感じます。声に出さなくても不安を抱いているパパママがたくさんいますよね。

もう2年近く、おじいちゃん、おばあちゃんにお子さんを会わせていない方もいるでしょう。子ども時代の2年は、とても大きいもの。寂しい日々の中で、みなさん、よくがんばっていらっしゃるなと思います。

でも、不安ばかりに支配されていては、力のいる子育てを乗り切れません。私は“絵本を通して子育てを応援したい”という思いを胸に活動をしていますので、そんなパパママが「明日はもっといい日になる!」と信じて、前を向くのに力を貸してくれそうな3冊を選んでみました。

子どもたちから生きる力をキャッチ

最初にご紹介するのは、『あかちゃんがわらうから』(作:おーなり由子)。不安に駆られているお母さんが、わが子を見てハッと我に返り、大切なことに気づかされるという一連の心の動きを描いています。まさに、今この時代にピッタリの内容です。

2011年に起きた東日本大震災以降、子育ての不安が一段と増した印象がありますが、この絵本が描かれたのは、震災から3年後の2014年。当時、作者のおーなりさんご自身のお子さんもまだ小さく、お母さんとしての実感が込められているのではないでしょうか。

柔らかなタッチの絵と文章で展開されていきますが、後半になるにつれて、言葉が力強くなります。

「うまれてきたこどもたちは いうーー
『これから生きていく世界を ひどいと 決めつけないでよ!』」

「『どしゃぶりのなかで うたおう!』
『がれきをけとばし おどろう!』

毎日不安なニュースばかり。それは、現実です。
でも、私たちの目の前にいる子どもも、ここでまた力強く生きる現実なのだと。
キューッと狭まっていた視野をパッと開かせてくれるような、そんな絵本を1冊目に選んでみました。

ーー生命力に満ちた子どもたちの言葉が、心に響きますね。

2014年には、もちろん新型コロナウイルスなんて存在していませんでしたが、時を超えてパパママを励ましてくれます。

この絵本には「声」や「愛」など、どの漢字にもルビはふってありません。パパママに向けて描かれた、まさに大人のための絵本ですね。

「そうだった──世界は いつだって はじまったばかり」。不安でいっぱいお母さんの心を、あかちゃんの笑顔、子どもたちの力強い言葉が癒やしてくれる『あかちゃんがわらうから』(作:おーなり由子/ブロンズ新社)。

世界は「明日への希望」であふれている

次にご紹介するのは、『あさの絵本』(文:谷川俊太郎、写真:吉村和敏)。吉村和敏さんが撮影した朝の風景に、谷川俊太郎さんの言葉が添えられた、「アート絵本」と呼びたいような絵本です。

普段あまり意識されないかもしれませんが、美術館に行かなくても、私たちがアートに触れる機会は意外とあります。

例えば、病院。患者さんのリラックス効果を期待して、小児科ならかわいいキャラクターのポスター、心療内科なら風景写真や絵を飾っているところも多いようです。

近年、アートが心と体に働きかける力の研究が盛んに行われるようになりました。

2018年には、カナダのケベック州・モントリオールで、痛みやストレスを抱えた患者が美術館でアート作品を鑑賞することを、医師が治療の一環として“処方”するという試みが始まりました(※1)。アートが健康におよぼす好影響は、体を動かすと得られる効果に似ているというデータも出つつあります。

※1)世界初、治療として患者に美術館訪問を「処方」 カナダ医師会


今回のテーマの選書にあたって、風景の美しさに目を奪われる『あさの絵本』を選んでみました。余談ですが、表紙の写真、実はカナダのケベック州なのです。「なんたる偶然!」とうれしくなりました。

「おわってしまうものは ひとつもない
すべてがはじまり」

すべての風景に“意味”を添える、詩人・谷川俊太郎さんの言葉。<この風景にふさわしい言葉は何だろう><どんな思いが込められているのだろう>などと難しく考えなくても、優しい詩の言葉で、そっと肩を押してくれます。

――だんだんと朝が明けていく様を見ていると、心が洗われるようです。

なかなか外に出られない今、美しいものを見るだけで日々の不安やストレスを取り除ける、明日への希望を感じられるというのは、私たちにとって非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。

ビジュアルブック『あさ/朝』の絵本版『あさの絵本』(文:谷川俊太郎、写真:吉村和敏/アリス館)。ダイナミックな写真とやさしい言葉が、心に希望をもたらします。

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