明日はもっといい日になる!「“大丈夫だよ”と励ましてほしいとき」の絵本

大人に効く絵本〔13〕『あかちゃんがわらうから』『あさの絵本』『にじいろのさかな』がおすすめ

分かち合う喜びを疑似体験

最後は、お子さんと読んでいただきたい絵本として『にじいろのさかな』(作:マーカス・フィスター、訳:谷川俊太郎)をご紹介します。原書が発売された1992年以降、世界中で愛されている絵本です。

にじいろに輝くうろこを持った世界一美しい魚「にじうお」。でも、彼はいつもひとりぼっちの寂しい魚でした。ある日、かしこいタコに相談すると、きらきらのうろこをほかの魚にあげるよう、タコは言います。

「この きらきらする きれいな うろこを? とんでもない。
うろこが なくて、どう やって しあわせに なれるって いうんだ?」

にじうおは悩みますが、ちいさなさかなに、きらきらのうろこをあげました。にじうおは、不思議な気持ちに襲われました。すると、ほかのさかなたちも集まってきて、きらきらのうろこを欲しがり……。

この絵本については、「感動した」「子どもが大好き」と肯定的な声がほとんどですが、一部で「自分が持っているものを減らしてまで、まわりに与えなければいけないのか」などという意見も。いろいろな見方をする人がいるのは、優れた文学作品の証だと思います。

私がこの作品をおすすめする理由は、とてもシンプルです。絵本を読むことで<やさしくされるとうれしいよね><心があたたかくなるよね>といった感情を伴う体験を、疑似体験してもらいたかったから。

コロナ禍で、子どもたちは人と会う機会、お友達と遊ぶ機会がうんと減っています。その中で、思いやりを見せ合ったり、お菓子を分け合ったりすることもおそらく減っているはず。

難しく考えすぎず、<やさしいことはよいことだ>という不変の真理を感じ取ってもらえればいいのではないでしょうか。

――やさしさには、明るい未来の予感がありますね。

なかなか先の見えない世の中ですが、気軽に、日常的に絵本に触れながら、不安やストレスを軽減して、親も子も元気に過ごしていただきたいなと思います。
日本では1995年に出版された『にじいろのさかな』(作:マーカス・フィスター、訳:谷川俊太郎/講談社)。主人公・にじうおの成長と活躍を描いた絵本は『にじいろのさかな』シリーズとして大人気に。
取材・文/星野早百合
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とうじょう ともみ

東條 知美

絵本コーディネーター

絵本コーディネーター、講師、コラムニスト。1973年新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。在学中は桑原三郎氏(児童文学研究者)、角野栄子氏(児童文学作家)らに師事。卒業後、メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校などの勤務を経て、絵本コーディネーターに。 絵本を題材に各地で講演、イベントを行うほか、執筆活動、保育士や図書館司書を対象とした研修などを手掛ける。コンセプトは「子どもに絵本を。大人にこそ絵本を。」 公式サイト  https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon Instagram @tomomitojo Twitter @TOMOMIT

絵本コーディネーター、講師、コラムニスト。1973年新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。在学中は桑原三郎氏(児童文学研究者)、角野栄子氏(児童文学作家)らに師事。卒業後、メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校などの勤務を経て、絵本コーディネーターに。 絵本を題材に各地で講演、イベントを行うほか、執筆活動、保育士や図書館司書を対象とした研修などを手掛ける。コンセプトは「子どもに絵本を。大人にこそ絵本を。」 公式サイト  https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon Instagram @tomomitojo Twitter @TOMOMIT