「勉強が好きになった」「自ら進んで学ぶようになった」
自分に合ったペース・方法で学びを進めながら、わからない部分はお互いに教え合う「学びの個別化・協同化」を経験した子どもや保護者からは、学習に対して前向きな声が挙がります。
多くの学校や自治体などで教育アドバイザーを務める苫野一徳先生(熊本大学教育学部准教授)は、「子どもが学びを『自己選択・自己決定』できるようなると、イキイキ楽しそうに勉強するようになり、その結果として、学力も上がるのです」と語ります。
第1回では、現在も学校の基本システムとなっている「一斉授業」の問題点と、それに代わる新しい実践の方向性「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」について教えていただきました。
第2回では、小学校低学年の子どもを持つライターが、引き続き、苫野先生にインタビュー。「学びの個別化・協同化」にフォーカスして、具体的な取り組みと子どもたちの変化について伺います。
(第3回の2回目。#1を読む)
子ども自身が学習計画を作る
――第1回では、子どもが学びについて「自己選択・自己決定」できるようになると、自ら進んで学習するようになるということをお聞きしました。それは親にとっても子どもにとっても理想ですが、まだ半信半疑です。
苫野一徳先生(以下、苫野先生):私たち大人は『つまらない勉強をイヤイヤやらされてきた』自らの経験から、勉強はつまらない、でもやらなきゃいけないものだ! と思い込んでしまっているのですよね(笑)
第1回でも少しお話ししましたが、『学びの個別化・協同化の融合』を進めると、学習意欲が向上し、さらに成績も上がるといった好循環が生まれます。こうした学習科学の知見は、国内外に少しずつ蓄積されています(※1)。
※1 ジョン・ハッティ『教育の効果』
苫野先生:最近(2020年度)だと、熊本市内のある小学校(5年生)の算数の授業で実践された事例があります。
単元の最初に、子どもが自ら、学習の“計画書”を作成します。『いつ何を学ぶか』を子どもが自分自身で考えて、記入していきます。『何を使って学ぶか』も自分で選択でき、問題集を解く子、プリント、ドリルを使う子など様々です。
教室も、一斉授業のときのように皆が黒板に向かって机を向けている状態ではなく、友だちと机を合わせる子もいれば、一人で黙々とやる子もいます。
わからないことが出てきたら、友だち同士で教え合ったり、必要があれば先生がフォローしたりして、それぞれ学習を進めます。授業の最後には、計画書に『振り返り』を記入し、その日の進捗を踏まえて、次回以降の計画書を赤字で修正していきます。