さかなクン「子どもの“好き”を一緒に楽しむ親は最強のサポーター」

さかなクンインタビュー 子どもの“好き”の見つけ方・育て方/第2回

魚に関するチャレンジ企画をはじめ、プライベートな一面も公開するYouTubeの公式チャンネル『さかなクンチャンネル』も大人気。
写真:水野昭子

「ギョギョギョ!」いつも“お魚愛”たっぷりのトークで楽しませてくれる、さかなクン。その活躍は多岐にわたり、2021年6月公開の映画『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』では、出演・ナレーターを務めています。

第1回は、魚を好きになったきっかけや“好き”を見つけることの大切さについて聞きました。第2回は、子どもの“好き”を後押しするために親ができること、映画の見どころについてお聞きします。

➡︎さかなクンにとっての魚がわかる、第1回『“好きなもの”は、自分の辛い・苦しいを支える宝物になる』を読む

【のん主演で映画化!(22年夏公開)】さかなクンの半生をもっと詳しく知りたい人は、さかなクンの自叙伝もチェック!
『さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~』(講談社刊)

子どもの好きなことは親も好きになって楽しもう!

――親としては、子どもが好きなものを見つけたとき、“好き”を育めるように応援してあげたいもの。さかなクンの場合はいかがでしたか?

自分がお魚を好きになったとき、母は「水族館へ行こう」「お魚釣りに行こう」と、一緒に楽しんでくれました。せっかくですから、お子さんが興味を持ったものを親子で楽しまれてみてはいかがでしょうか? 応援しつつ、親御さまも同時に楽しく取り組めたら、親御さまギョ自身も同じように好きになって、応援し続けられる気がします。

――お母さまからは「魚ばっかりじゃなく、勉強しなさい」とは言われなかったのですね。

さすがに高校のときは赤点もあって、「大丈夫~?」と心配されましたけど。いつも笑顔で応援してくれます。大らかな母でギョざいます(笑)。

どんなお仕事でも趣味にしても、「うれしいな~!」「楽しいな~!」「最高だな~!」と、ワクワクしている人は輝いて見えますよね。夢中になって取り組んでいれば、周りのみなさまがきっと応援してくれます。お魚や海の生きものたちと一緒、一瞬一瞬を真剣に生きていると、周りも引き込まれます。

授業中に魚の絵ばかり描いて怒られたときも、お母さまは「大好きなんだから、好きなだけ描くといいよ」と応援してくれたのだとか。
写真:水野昭子

周りの大人たちが「ひとりの人間」として接してくれた

――魚に夢中になって以降、ご両親以外の周りの大人の反応はいかがでしたか?

中学生のときも、とにかくお魚好きで。学校に贈られたオスとメスの大きなカブトガニちゃんを、理科室の水槽で先生や仲間とみんなで飼育していました。先生の車で一緒に海へでかけて、海水を汲んできたり、砂を取ってきたり。夏にたくさん卵が産まれて、赤ちゃんが孵化したときは、すギョくうれしかったです。

高校でも友達や先生方と仲良くなって、よくお魚釣りへ行きました。帰りに先生とおでん屋さんへ寄って、「あ、そっか。まだお酒飲めないのか」と言われました(笑)。

――あはは。子ども扱いではなく、「ひとりの人間」として接してくれたのかもしれませんね。

そうかもしれません。自分の場合ですが、小学生のころからお魚屋さんやお料理屋さんといった、“お魚のプロ”の方がかわいがってくださって、子どもだからとか関係なく、お魚についてたくさん教えてくださいました。今は千葉の館山に暮らしていて、しょっちゅう地元の漁師さんのお船に乗せていただくのですが、70代、80代のベテランの漁師さんが友達のように仲よくしてくださるのはうれしいですね。

自分がお魚をずっと好きでい続けられたのは、母をはじめ、周りのみなさまに応援していただけること、そして、お魚から感動をたくさんいただき続けているからです。見て癒やされて、描いて楽しくて、食べておいしくて、大自然に! お魚さんに! みなさまに! 感謝の気持ちでいっぱいでギョざいます!!

「館山の自宅にいるときは午前3時に起きて、地元の漁師さんのお船に乗せていただき、漁へ出ます」。身振り手振りを加え、魚について楽しそうに話してくれる。
写真:水野昭子

懸命に生きる魚や生きもの素晴らしさを伝えたい

――6月に公開される映画『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』では、魚や海の生きものたちの驚きの世界がたっぷりと収められています。さかなクンが特に観てほしいシーンを教えてください。

そうですねぇ……。モンハナシャコちゃんの、クルクル回る摩訶不思議な目つきもおもしろいですし、ハゲブダイちゃんが作る粘液の寝袋もすギョく不思議ですし……本当に「全部!」なのですが。

さかなクンが特に感動いたしました、トビハゼちゃんをギョ紹介します。トビハゼちゃんは泥の干潟で暮らすお魚ですので、天敵の鳥さんなどに気付かれないよう、普段は泥と同じ茶色っぽい色をしています。けれど、恋の季節になると、オスはきれいなピンク色になって、メスを巣穴にお招きするんですね。メスがオスの後にピョンピョンついてきてくれると、オスがメスのほっぺにチュウ♡するシーンが、とってもかわいいんです。

さかなクンがおすすめしてくれたトビハゼ。映画『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』では、世界中の海の生きものたちを約60種も観ることができる。

お魚も人と同じ! 愛情や情熱が伝わってきて、とってもかわいいです。食べるにしても身を守るにしても、恋を実らせるための行動にしても、お魚や海の生きものはすべてが真剣。生きていく一瞬一瞬が大変なのだと、全編からギョギョーッと伝わってきます。

――生きて、命をつなぐ。そのことに、シンプルに感動しました。

そうですね。生きものには、それぞれ役割があります。たとえば東京湾でも、砂の中にはアサリちゃんやハマグリちゃん、マテガイちゃん、ゴカイちゃん、バクテリアさんなど、いろいろな生き物が暮らしています。そのうち二枚貝さんの仲間は、水を浄化する役割があるのですね。ワカメさんやアオサさんといった海藻類も、水中の窒素やリンを取り込んで水を浄化してくれますし、お魚さんたちの住みかにもなります。小魚ちゃんや稚魚ちゃんは、ほかのお魚さんやクジラさんにかなり食べられちゃうんですけど、それによってさまざまな生きものの命を支えています。生きものたちはみんな、自然界の大切な役割を担っている、大切な存在なのです。

その健全なバランスが保たれていればいいのですが、地球の温暖化や環境破壊、乱獲などの問題が改善されないと、『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』の世界は、現実に存在しなくなってしまうかもしれません。

映画の最後には私たちへの警告として、北極の氷が減少して縄張り争いをするホッキョクグマさん、白化してしまったサンゴさん、海洋プラスチック問題などの映像も収められています。お魚も海の生きものも私たち人間も、みんな同じ地球に住む仲間です。この映画を観て、自分たちの問題として、真剣に考えるきっかけになったら、うれしいでギョざいます!!

取材が終わると、スタッフひとりひとりに、直筆イラスト&メッセージ入りの名刺を手渡してくれたさかなクン。あたたかな心遣いとかわいい魚のイラストにほっこり。
写真:水野昭子

『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』


NHKの人気自然番組『ダーウィンが来た!』の劇場版第3弾。今回の舞台は、今も新種や不思議な生態が続々発見される人類最後のフロンティア「海」。海の生きものたちの驚きの世界を描いた長編大作です。2021年6月11日(金)より、ユナイテッド・シネマ他全国ロードショー。

ナレーター:水瀬いのり 出演・ナレーター:さかなクン ヒゲじい:龍田直樹
監督:田所勇樹 制作:NHKエンタープライズ 映像提供:NHK
2021年/84分/ 製作・配給:ユナイテッド・シネマ


公式HP:https://umi-darwin.com/
公式 twitter:@umi_darwin

※劇場の営業時間などは変更の可能性があります。お出かけ前にご確認ください。

取材・文/星野早百合

【第1回】さかなクン「どんな子も“好き”は必ず見つかるし“辛い・悲しいを支える宝物”になる」

【のん主演で映画化!(22年夏公開)】さかなクンの半生をもっと詳しく知りたい人は、さかなクンの自叙伝もチェック!
『さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~』(講談社刊)

さかなクン

国立大学法人東京海洋大学名誉博士・客員教授

国立大学法人東京海洋大学名誉博士/客員教授、画家。東京都出身、千葉県館山市在住。 お魚に関する豊富な知識と経験を持ち、全国各地でお魚や環境問題について講演活動を実施。NHK-Eテレ『ギョギョッとサカナ★スター』にレギュラー出演するほか、YouTube「さかなクンちゃんねる」を配信する等ジャンルを問わず多くのメディアで活躍しています。 2010年には、絶滅したと思われていたクニマスの生息確認に貢献。 2021年外務省「海とさかなの親善大使」や環境省「サステナビリティ広報大使」に任命され、漁業資源問題や環境活動にも積極的に取り組んでいます。 ◼︎初の自伝『さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~』 ◼︎さかなクンオフィシャルサイト ◼︎YouTube さかなクンちゃんねる ◼︎TikTok さかなクン 写真:水野昭子

国立大学法人東京海洋大学名誉博士/客員教授、画家。東京都出身、千葉県館山市在住。 お魚に関する豊富な知識と経験を持ち、全国各地でお魚や環境問題について講演活動を実施。NHK-Eテレ『ギョギョッとサカナ★スター』にレギュラー出演するほか、YouTube「さかなクンちゃんねる」を配信する等ジャンルを問わず多くのメディアで活躍しています。 2010年には、絶滅したと思われていたクニマスの生息確認に貢献。 2021年外務省「海とさかなの親善大使」や環境省「サステナビリティ広報大使」に任命され、漁業資源問題や環境活動にも積極的に取り組んでいます。 ◼︎初の自伝『さかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~』 ◼︎さかなクンオフィシャルサイト ◼︎YouTube さかなクンちゃんねる ◼︎TikTok さかなクン 写真:水野昭子