2021.06.07

さかなクン「どんな子も“好き”は必ず見つかるし“辛い・悲しいを支える宝物”になる」

さかなクンインタビュー 子どもの“好き”の見つけ方・育て方/第1回

寄稿家:さかなクン

2021年2月には外務省から「海とさかなの親善大使」に任命されたさかなクン。海洋や環境問題にも積極的に取り組んでいる。
写真:水野昭子

「ギョギョギョ!」いつも“お魚愛”たっぷりのトークで楽しませてくれる、さかなクン。その活躍は多岐にわたり、2021年6月公開の映画『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』では、出演・ナレーターを務めています。

小学生のころに魚が大好きになり、今でも飽きることなく、夢中であり続けているという、さかなクン。どんな子ども時代を過ごしたのか、魚を好きになったきっかけや“好き”を見つけることの大切さについて聞いてみました。

好きなものは「見たい! 描きたい!」から始まる

――テレビや雑誌、YouTubeなど数々のメディアで、魚に関する正しい知識や役立つ情報を発信されていますね。そもそも魚を好きになったきっかけは何だったのでしょう?

自分はもともと絵を描くのが大好きでギョざいまして。ハイハイをしていた赤ちゃんのころから、祖父や母に紙と鉛筆を渡されると、ひとりでおとなしく絵を描いていたみたいです。今でも絵は大好きなのですが、「わっ! おもしろい形してる!」「 かわいい♫ 」「すギョい!」と思って描くんです♫ 物をじっくり見る、そのこと自体が好きなのかもしれません。

最初に大好きになったのは、トラックさんです。ダンプカーさんとかギョ(ご)み収集車とか、コンクリートミキサー車とか、街中を走っているトラックを「デカッ!」「カッコイイ~♫」「うおぉ~! 回ってる回ってる~!!」と、夢中で見ては絵を描いた記憶があります。

小学校にあがると、水木しげる先生が描く妖怪さんたちが大好きになって、その次がタコちゃん。友達がノートに描いた迫力満点のタコちゃんの落描きを見て、「なんだ~、この不思議な姿の生きものはっ!?」と、心をつかまれてしまったんですね。それからタコちゃんについて調べたり、本物のタコちゃんを見にお魚屋さんや水族館へ行ったりするうち、だんだんお魚や海の生きものにも興味が広がっていきました。

さかなクンが小学生になって夢中になったというタコ。こちらは6月公開の映画『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』に出てくるメジロダコ。

トラックさんも妖怪さんたちもお魚ちゃんたちも、種類がたーっくさんありますよね♫ なかでもお魚ちゃんは、大きさから形、体の特徴、生き方まで、一匹一匹違います。その姿を見たときの「カッコイイ~!!」「カワイイ~♡」といった感動が「もっと見たい! 描いてみたい!」という気持ちにつながっています。ずーっと見ていても飽きないです。

トレードマークのハコフグでインタビューに答えてくれました。
写真:水野昭子

常に感動を与えてくれる“お魚”はないと生きてはいけない存在

――「絵を描きたい」という気持ちから入って、どんどん魚が好きになっていったのですか?

そうなんです。特に絵を描くときは、「ここにおめめが付いているのか~」「第1背びれはこんな形なんだ」「複雑な模様だなぁ」と、細かいところまでじっくり見ます。

でも、お魚は目で見たときだけじゃなく、食べたとき、釣ったときにも感動がギョざいますね! それに、魚種によって香りが違うし、釣り上げたとき、ホウボウちゃんやニベちゃんのように、ギョッとするほど大きな音を出すお魚も。見たとき、食べたとき、触れたとき、においを嗅いだとき、音を聞いたとき……まさに、ギョ(五)感!! でワクワクさせてくれるのです。

お魚は身をもって、私たちにさまざまな感動を届けてくれて、すギョいな~、ありがたいな~って思います。お魚なしでは、生きていけません(笑)。

「ホウボウちゃんはお名前の通り、『ボーボー』、イシダイちゃんは『グッグッ』って音を出すんです」(さかなクン)
写真:水野昭子

どんな子どもにも必ず“好き”はある

――“お魚愛”に目覚めた子ども時代のさかなクンは、どんな少年でしたか?

お魚が大好きになってから、放課後は学校の図書室でありったけのお魚の本を読んで、「このお魚に会いにいきたい!」と思うと、そのまま自転車で街中のお魚屋さんを巡りました。

それだけじゃ満足できなくて、「隣町のお魚屋さんはどうだろう?」「海のお魚がいる熱帯魚屋さんはあるかなー!?」「活魚水槽のあるお料理屋さんはどこだー!?」と、ひとりで冒険することも。当時出会ったお魚屋さんやお料理屋さんの方々が、お魚についていろいろなことを教えてくださって、貴重な知識となりました。ありがたいことに今でもギョ(ご)縁があるんです。

見てみたい、食べてみたい、釣ってみたい、飼ってみたい、海に潜ってみたい、世界を旅してみたい――。お魚を好きになったことで、夢がどんどん膨らみます。知れば知るほどおもしろいし、また新たな謎が出てきて、調べたくなる。お魚の世界は奥が深くて、飽きることなんてまったくギョざいません! ますます好きになっていきます。

――すごい行動力です! 今、「好きなものがない」「興味を持てない」という子どもも多いと聞きます。親としては、わが子に好きなものを見つけてほしいのですが……。

えーーっ!? 好きなものがひとつもないお子さんなんて、いないんじゃないでしょうか。誰にでも大好物の食べ物がありますし、ワンちゃん、ニャンちゃん、小鳥ちゃんといった、ペットさんに癒やされているお子さんもいらっしゃるでしょう。野球でもサッカーでも、手芸でも、「これが得意!」という何かが絶対にあるはずです!

自分もお魚以外だとスイーツが大好きですし、絵を描いたり楽器を演奏したり、夢中になれるものがたくさんあります。食べ物でも生きものでも、スポーツでも趣味でも、“好き”という気持ちがあるのは、それだけでとっても素晴らしいこと。“好き”を大切にしていきたいですね!!

中学時代、「水槽がある部活」だと勘違いして吹奏楽部に入部し、楽器が大好きになったとか。数年前、東京スカパラダイスオーケストラとコラボしたテレビCMでは、バス・サックスを披露して話題に。
写真:水野昭子

魚だって“一瞬一瞬を真剣”に生きているからこそ輝く

――“好き”という気持ちは、何よりも尊いということなのですね。

そう思います! 今回、出演とナレーターを務めさせていただきました映画『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』の中にもありますが、お魚たちは、喜びを感じたり苦難を乗り越えたりしながら、一生懸命に生きています。けれど、少しの気のゆるみで危険な目に遭ったり、食べられてしまったり、命を落としてしまうこともあるのですね。一瞬一瞬が真剣だからこそ、命の輝きや素晴らしさがひしひしと伝わってくるのだと思います。私たちもお魚と同じ生きものですので、せっかくでしたら、毎日を明るくイキイキと元気に過ギョしていきたいですね。

自分はありがたいことに、大好きなお魚が生活の大部分を占めています。だから、いつでも明るく元気に、お魚パワーではりきれます。好きなものは、辛いとき、苦しいときに支えてくれる宝物。そこでできた仲間がいれば、きっと乗り越えられる。ぜひとも“好き”な気持ちを大切にレッツ ギョ―!

「好きなもの、夢中になれるもの、癒やされるものがあれば、苦しいときや辛いときも、きっと乗り越えられます!」(さかなクン)
写真:水野昭子

『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』


NHKの人気自然番組『ダーウィンが来た!』の劇場版第3弾。今回の舞台は、今も新種や不思議な生態が続々発見される人類最後のフロンティア「海」。海の生きものたちの驚きの世界を描いた長編大作です。2021年6月11日(金)より、ユナイテッド・シネマ他全国ロードショー。

ナレーター:水瀬いのり 出演・ナレーター:さかなクン ヒゲじい:龍田直樹
監督:田所勇樹 制作:NHKエンタープライズ 映像提供:NHK
2021年/84分/ 製作・配給:ユナイテッド・シネマ

公式HP:https://umi-darwin.com/
公式 twitter:@umi_darwin

※劇場の営業時間などは変更の可能性があります。お出かけ前にご確認ください。

取材・文/星野早百合

※さかなクンインタビューは全2回。次は21年6月8日8:00〜公開です。
【第2回】さかなクン「子どもの“好き”を一緒に楽しむ親は最強のサポーター」

寄稿家紹介

さかなクン

国立大学法人東京海洋大学名誉博士/客員准教授、画家。東京都出身、千葉県館山市在住。魚に関する豊富な知識と経験を持ち、NHK『ニュースシブ5時』のコーナー『さかなクンのギョギョ魚ななかまたち』、『朝日小学生新聞』(朝日学生新聞社)のコラム『おしえてさかなクン』をはじめ、多くのメディアで活躍。2010年には、絶滅したと思われていたクニマスの生息確認に貢献。2021年2月には外務省から「海とさかなの親善大使」に任命されるなど、海洋や環境問題にも積極的に取り組んでいる。

オフィシャルサイト http://www.sakanakun.com/
YouTube さかなクンちゃんねる https://www.youtube.com/c/sakanakun/featured

写真:水野昭子