2021.04.16

料理家・栗原心平が語る「お手伝い」と子どもの成長 思い出編

料理家・栗原心平さんインタビュー 第3回 

料理家:栗原 心平

子どもが料理や食に興味を持ち、「お手伝いをしたい」と思ってくれるのは、親としてとても嬉しいことですよね。第1回では初めての「お手伝い」、第2回では「最初から最後までお手伝いをする醍醐味」について料理家・栗原心平さんにお話を聞いてきました。第3回では栗原さん自身の「お手伝いの思い出」とこれからの食育についてお聞きします。

日曜日の朝食づくりと母から自然に教わったこと

僕自身が、いつからどんなお手伝いをしていたかというのは、正直思い出せません。最初のお手伝いの記憶はないのですが、僕の中での一番古いお手伝いの記憶は、わらび餅を作ったこと。たぶん小学校に入る前ぐらいかな。粉をといて、火にかけ、水に浸して、冷やして固めて切ってね。きな粉と黒蜜をかけて、家族みんなで美味しく食べた思い出があります。

小学校3年生頃からは、家族全員の日曜の朝ごはんは僕が一人で作っていました。これはしっかり覚えています。当時、日曜朝7時半から見たいテレビ番組があったんです。だから必ず早起きをする。でも日曜の朝に両親が起きてくるのはたいてい9時頃なんです。そこから朝食の準備が始まり、食べ始めるのは9時半過ぎ。テレビを見終わって、お腹がぺこぺこのまま1時間以上待たないとご飯が出てこない。これをなんとかしたいと思ったんです。
自分が準備しておけば、少しでも早く朝食が食べられるのではと思い、あるときからテレビを見終わったら、卵を混ぜたり、野菜を洗って切ったりして、親が起きるのを待ちました。親が起きたら、即、スクランブルエッグとトーストを焼く。そうすると、9時5分くらいには朝食にありつけるわけです。今までより30分も早い!

父の好みもあって、日曜の朝食は洋食でした。卵料理に、サラダとトーストが基本です。卵やパンを焼くのを親が起きてからやるようにしたのは、確か母親に、「トーストは冷めたらあんまり美味しくないよね」と言われたんだと思います。母はトーストに限らず常に「料理は相手のことを考えないと意味がないよ」と言っていました。相手が食べるタイミングを考え、美味しい状態に仕上げること。つまり相手を思うこと。これは、僕が自然と母に教わった、料理を作る上でとても大切なことだと思っています。

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

父が驚いた僕の「塾弁」の思い出

朝食以外にも、子どもの頃に自分で作った料理の思い出はいろいろあります。小学校4年生か5年生の時、塾に通っていたのですが、夏期講習だったかな? 夜用のお弁当が必要なときがありました。みんなはおうちの人が作ったものを持ってくるのですが、僕は親が共働きだったので、自分でどうにかするしかなかった。野菜を炒めてみたり、卵焼きを作ったり、ハムとチーズを巻いてピックで刺してみたりして、冷蔵庫の残り物も使いながら、それなりのお弁当に仕上げていたんです。
ある日、作り終わった後に蓋を開けたまま冷ましていたら、たまたまいた父がそのお弁当を見て、「お前が作ったのか!」と、びっくりしていたのが今も忘れられません。あまり料理を褒めるタイプではなかった父なのですが、あの時は褒められたというか、それを越して驚かれたというか。すごく嬉しかったですね。子どものときに作った料理の思い出で一番嬉しかった出来事かもしれません。

おふくろの味No.1は「麻婆春雨」。小学校の土曜授業で給食がないとき、母が作り置きしてくれていた麻婆春雨を食べるのが好きでした。写真は12歳頃の栗原さん。
写真提供 栗原心平

子ども向けのオンライン教室を計画中

今、子どもたちへ料理づくりをもっと楽しんでもらえるようなオンラインでの料理教室を計画中です。
対象年齢は小学校低学年から中学生向けで、一年コースの完全なカリキュラム制。サッカーやピアノと同じ、おけいこや習い事のひとつとしての「お料理」ととらえてもらえればと思っています。

はじめようと思ったのは、自分自身の経験から、子どもが料理を作れる環境が家庭の輪を生むと感じているからです。お父さんかお母さんが主菜を作り、副菜一品を子どもが作れたら、全員がものすごくハッピーですよね。子どもが家族の一員として家事に参画するのは正しいことだと思うし、ましてやそれが料理であれば、できたものを分かち合える。食事は「精神衛生」です。いくら「一から丁寧」に、「きちんと作られた料理」があっても、それを作るためにイライラしていては本末転倒です。それぞれの事情に合わせ、手抜きも必要だと思っています。どんな形であれ、気持ちよく、楽しく食事できる食卓であってほしいし、そこに子どもも参画できたら最高だと思いませんか。家族の誰かが作る食事ではなく、家族みんなで作る食事が広まるといいなと思っています。

取材・文 浅妻千映子

『栗原心平の とっておき「パパごはん」』栗原心平 講談社

くりはら しんぺい

栗原 心平

料理家

料理家。 幼い頃から得意だった料理の腕を活かし、料理家としてテレビや雑誌などを中心に活躍。仕事で訪れる全国各地のおいしい料理やお酒をヒ...