2021.03.17

人気料理研究家・コウケンテツ「これからの夫婦のあり方」話し合い編

料理研究家・コウケンテツさんインタビュー 第1回

寄稿家:コウケンテツ

料理研究家・コウケンテツさん。
『本当は料理を作ることが好きなのに、しんどくなった人たちへ』(ぴあ刊)でおうちごはんの在り方を語った書き下ろし初エッセイが話題に。
撮影 森﨑一寿美

3人の子どもを子育て中のコウケンテツさん。料理研究家という職業柄、さまざまな取材で「夫婦での家事の役割分担はどうされていますか?」と聞かれることが多いと言います。自宅にあるキッチンスタジオにて、コウケンテツさんとコウさんのマネージャーでもある妻の綾さんとともに夫婦の在り方について聞きました。

子どもが生まれたと同時にガラリと変わった生活

コウケンテツさんのご家庭は、コウさん、妻・綾さん、3人(10歳・8歳・3歳)のお子さんの5人暮らし。綾さんはコウさんのマネージャーとしての仕事も務めています。公私ともに一緒に歩むおふたりですが、子どもが生まれてから変わったことがやはり多かったと言います。

コウさん「マネージャーである妻に料理のアシスタント、取材対応やスケジュール管理、デスクワーク全般など多岐にわたる分野を担当してもらっています。3人の子育ても試行錯誤しながら、なんとかやっています。とはいえ、やっぱり夫婦ふたりだけの生活のときと比べると、子どもが生まれてからの生活はガラッと変わりましたね」

綾さん「私は最初の子どもを産んだとき、まず戸惑ったのが自分の生活ができなくなったということです。産む前は仕事中心の毎日で、夜中まで働くこともしばしば。だから仕事優先ではない子どものいる生活というものを受け入れるまで、精神的に大変でしたね」

コウさん「男性の僕でも、”子どもが可愛い!”と思う一方、”なんでこんなに思い通りにいかなくて、思い描いていたものと全く違うんだ!”という葛藤がありましたから、綾さんのように感じた女性は多いと思います。
赤ちゃんのお世話に関しても、お父さんが張り切って”手伝うぞ!”と思っていても、最初はなかなか難しいですよね。そもそも”手伝う”っていうのも変な話で。でも日本はまだまだ”女性だけが育児をする”という雰囲気がありますから、余計に産前産後のギャップが生まれるのかなと思います。
あと、子どもが生まれる前は夫婦としてお互い向き合っていたのが、子どもが生まれると妻の視線がすべて子どもに行ってしまう。これは僕にとって大きな変化でした。寂しかったですね(笑)」

布巾はたたまなくていい? ”話し合う”ことでひとつずつ解決してきた

子どもが生まれて、思い通りにいかない生活。おふたりは理想と現実のギャップをどのように埋めていったのでしょうか。

コウさん​「常に綾さんが”話し合いを持とう”と言ってくれたんです。僕はなんでもうやむやに進めたい方なんですけど(笑)、でも綾さんは物事をあいまいにしておくことが大嫌い。子どもが生まれてからうやむやのままが増えていくと、夫婦の意識や生活に大きなひずみがでるから、度々”話し合おう”と言ってくれるんですよ。
例えば家事のこと。僕は洗濯が大好きで、時間をかけて丁寧にやりたいんです。でも洗うのも干すのも好きだけど、たたむことだけは苦手で(笑)。クローゼットへキレイにしまえないので、実は綾さんがたたみ直してくれていたということがありました。それをなんとなくわかってたんだけど、僕は言葉に出さずにそのままうやむやにしてたんです」

綾さん「コウさんの洗濯は家事スピード感重視の私よりとても丁寧だし、布巾もパリッと干してくれる。料理の撮影が多い私たちにとって、布巾はとてもたくさん使うもの。パリッと干してくれた布巾を使うのは本当に気持ちいいんです。でも、どうやらたたんで収納するのは苦手のようなので、たたむところからは私がやるね、と伝えました」

コウさん「そう言われて”ああ、なるほど”と思いました。無理して僕がやっていたことが、実は”お互いに負担をかけていた”ということに気づきましたね。”僕が洗濯ものをたたむ”ということがお互いに小さなストレスになっていたんですよね。ちょっとしたことかもしれないけれど、毎日のこととなるとストレスは大きくなっていく。苦手なことは無理をせず、少しでも得意なほうがやればいい。ちゃんと言葉に出して伝えるということが大事だと思った出来事でした。
我が家はこんなふうに、なにかうまくいかないときはどんな小さなことでも話し合って、軌道修正しながらやっています」

コウさんの自宅キッチンスタジオにて。コウケンテツさん(右奥)、妻・綾さん(手前)。
撮影 森﨑一寿美

「嫌なことをシェアする」ことがコツ

とはいえ、いきなり話し合う場を作るというのもなかなか難しいというもの。スムーズに話し合えるよう、コウさんご夫婦は月に一度、夫婦でたわいもない話をしているときに”これは直して欲しい”と思っていることをひとつだけ伝えていると言います。

コウさん「”気になっている嫌なことをひとつだけお互いに言う”。そう決めていると冷静に話せるし、言われても案外嫌な気持ちになりません。実際に僕が言われたことで、”ベッドのわきに置きっぱなしにしているコップを片付けてほしい”というのがありました。僕はマッコリカップに水を入れて、夜、寝室で飲むのが習慣で。でもそれを置きっぱなしにしていたらしく、綾さんがいつも片付けてくれていたんです。僕は全く無意識でした……。
僕のエッセイ本(『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』)にも書いたのですが、されたら嫌なことをお互いに共有するという、”嫌なことをシェアする”ことが大切だと思っています。このシェアするポイントは、”おいしいおやつでも用意して、できるだけ楽しい雰囲気”で話し合うこと。そうしないとシェアした後の雰囲気が大変なことになってしまいますからね(笑)」

コウケンテツさんご夫妻の夫婦の在り方、第二回は「やめてほしいことを伝える工夫」についてお聞きします。

「こんなふうにマッコリを飲むコップを置いていました」(コウさん)
撮影 森﨑一寿美

取材・文 上坂美穂

寄稿家紹介

コウケンテツ こうけんてつ

料理研究家。旬の素材を生かした手軽でおいしい家庭料理を提案し、テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。また30か国以上を旅し、世界の家庭料理を学んだ経験も持つ。プライベートでは3児の父親として育児に奮闘中。親子の食育、男性の家事・育児参加、食を通して人と人とのコミュニケーションを広げる活動にも力を入れている。2020年3月末に開設したYouTube公式チャンネル「Koh Kentetsu Kitchen」は登録者数70万人を突破(2021年3月現在)。料理研究家ユーチューバーとしても活躍中。またYouTubeチャンネルの新シリーズとして、コウケンテツPresents「テツコウの部屋」チャンネルを開設。料理のお悩みや相談などリアルな意見交換の場を設けた。
【主な著書】
「本当は料理を作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ」ぴあ/「アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした」新泉社/「コウケンテツのだけ弁」扶桑社/「コウケンテツのおやつめし」「コウケンテツのおやつめし2」クレヨンハウス/「しょうが」「とうがらし」「弁当」「コウケンテツのおつまみ。」講談社/「コウケンテツの韓国料理1・2・3」NHK出版
Instagram @kohkentetsu 
Twitter   @kohkentetsu14
YouTube 『Koh Kentetsu Kitchen』