2021.04.07

人気料理研究家・コウケンテツが語る「夫婦の在り方」これから編

人気料理研究家・コウケンテツさんインタビュー 第4回

寄稿家:コウケンテツ

料理研究家・コウケンテツさん。たっぷりの日差しが入るご自宅のキッチンスタジオにて。
撮影 森﨑一寿美

今まで3回にわたりコウケンテツさんご夫婦の在り方を聞いてきました。第1回目は話し合い、第2回目は相手への伝え方、第3回はほめ合うことの大切さ。第4回となる今回はこれからの夫婦の在り方についてお聞きします。

「ねばならない」から自由になる

ここ数年、”男はこうだ、女はこうだ””夫婦はこうあるべき”という固定観念や価値観に対しての反論があちこちで言われるようになりました。男女の役割や夫婦の在り方が問われている今の時代、”奥さん”や”ご主人”などの呼び方に抵抗があるという声も多く耳にします。

コウさん​「夫婦間の呼び方はわかりやすいとっかかりなんでしょうね。僕自身は男性の料理家ということで、男女共同参画社会やジェンダーの話などで講演会に呼んでもらうことも多く、僕なりに勉強したりしています。

しかし、料理研究家としてデビューした頃から考えると感慨深いものがあります。デビュー当時は”男の料理研究家って何?””女がやる仕事だよね”と言われたことも。それに”男が喜ぶ料理のレシピをお願いします”と、男性に特化した依頼が多かったりもしました。でも今はすっかりそういった声や依頼もなくなりました」

綾さん「ただ普段仕事をしていると、“男性だから”とか”女性だから”という言葉を気にしている人がまだまだ多くいるように思います。コウさんのエッセイ(『本当は料理を作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』)でも”ねばならないにさようなら”という言葉が出てきますが、無意識に、”男だからこうしなければ”、”女だからこうしなければ”と思い込みにしばられていることがあるのかもしれません」

男性だけでなく、女性も先入観に囚われないこと

綾さん「知人との会話で、共働きなのに女性が家事育児全般をすべて担当し、物事の判断も旦那さんを中心に考えている人がいて、そのことで喧嘩したという愚痴を聞くときがあります。もちろん、それぞれの夫婦の考え方もやり方もあるとは思いますが、根底に”ねばならない”があるのだと思うんです」

コウさん​「共働きをしている家庭でも、そういう話はよく聞きます。一方、僕の講演会でこんな話がありました。男性からの意見で、”自分は外で働いていて、妻は専業主婦。それぞれ役割分担をしているから自分を家事をしなくてもいいのではないか?”というものです。
”外で働いて得た収入は二人で得た収入”で、”専業主婦の女性の家事は二人分の家事”ということだと思うのですが、”僕が稼いでくるから、奥さんは家事をやって”という分担では、状況は変わらないんじゃないかな? と思いました」

綾さん​「反対に女性側の先入観というか思い込みもあるのかもしれません。”そういうものなのだ”と受け入れてしまっている部分もあると思います。実は私も逆に日曜大工や修理、組み立て作業はパパがするものだという思い込みがあったのですが……」

コウさん「僕が全くできないから(笑)」

綾さん「そうなんです(笑)。二段ベッドを組み立ててねと頼んだのですが、実はコウさんがすごく苦手だったみたいで……。そのときに、そういえば自分でもできるんだから、”私”がやればいいのか”と気がつきました。それからは子どものおもちゃが壊れた修理とか、電気の配線を変えるとか、私が率先してやっています(笑)」

コウさん「僕がいわゆるパパがやりそうなことがどうもできないんですよね(笑)」

綾さん「これは“男の人がするもの”と思い込んでいて、やってもらえないことに対してイライラしたり、女性だからキッチンで洗い物をしなければいけない、家事を全部しないといけないと感じてしまうのは女性側の思い込みもあるように思います。だから家事全部に手が回らないことや、家事が好きではないことに罪悪感を持つことはないと思うのです。今、男の人は変わらなきゃって言われているけど、女の人も変わらないといけない部分もあるのだと思います」

料理研究家・コウケンテツさん(右奥)と妻・綾さん(手前)。
撮影 森﨑一寿美

夫婦の在り方に正解はない

コウさん​「生き方や家族の正解、みたいなのがあればいいのですが、どんな家庭もみんな違うし、みんなケースバイケース。だからもっと夫婦が“男”と“女”ではなく、”人と人”になればいいと思うんです。ヨーロッパの取材で訪れた家庭で素敵だなと思ったのは、家族全員でごはんの準備をしていて、その家は子どもも含めて対等に”人と人”で接していたから。
昔の日本だと、”男が家庭を持つ”ということは、妻も子どもも家長の所有物、みたいな時代がありましたけど、今の時代はそんなことはないでしょう? だから”ねばならない”に縛られずに、夫婦でも家族でも、もっと自由に話し合えるといいのだと思います。

でもその話し合いが実は一番ハードルが高いという声もありますよね。でもあれ? と気になることがあったら、ため込まずに普段の会話の流れでうまく気持ちが伝えらるとよいなと思います。時間が経つと溝がどんどん大きくなって、話し合うことすらできなくなってしまいますから。日常の小さい家事の工夫をして、家を居心地のいい場所にしていくことと同じぐらい大切かな」

”ねばならない”に囚われず、夫婦で何でも話し合う。そして夫婦は対等であること。
これからの夫婦の在り方についてのお話、コウさん、綾さん、どうもありがとうございました。

取材・文 上坂美穂

寄稿家紹介

コウケンテツ こうけんてつ

料理研究家。旬の素材を生かした手軽でおいしい家庭料理を提案し、テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。また30か国以上を旅し、世界の家庭料理を学んだ経験も持つ。プライベートでは3児の父親として育児に奮闘中。親子の食育、男性の家事・育児参加、食を通して人と人とのコミュニケーションを広げる活動にも力を入れている。2020年3月末に開設したYouTube公式チャンネル「Koh Kentetsu Kitchen」は登録者数70万人を突破(2021年3月現在)。料理研究家ユーチューバーとしても活躍中。またYouTubeチャンネルの新シリーズとして、コウケンテツPresents「テツコウの部屋」チャンネルを開設。料理のお悩みや相談などリアルな意見交換の場を設けた。
【主な著書】
「本当は料理を作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ」ぴあ/「アジアの台所に立つとすべてがゆるされる気がした」新泉社/「コウケンテツのだけ弁」扶桑社/「コウケンテツのおやつめし」「コウケンテツのおやつめし2」クレヨンハウス/「しょうが」「とうがらし」「弁当」「コウケンテツのおつまみ。」講談社/「コウケンテツの韓国料理1・2・3」NHK出版
Instagram @kohkentetsu 
Twitter   @kohkentetsu14
YouTube 『Koh Kentetsu Kitchen』