不登校10年から起業家! ゲーム家庭教師がすすめる「不登校の練習」

「ゲムトレ」代表・小幡和輝さん「ゲームは子どもの味方」#1~不登校とゲーム~

起業家・作家:小幡 和輝

ゲームのオンライン家庭教師サービス「ゲムトレ」を立ち上げた小幡和輝さん。起業家や作家としても知られています。 写真提供:小幡和輝
すべての画像を見る(全6枚)

これからなにか子どもの習い事を始めたい方、今すでに習い事をやらせている方、「ゲーム」は、その選択肢にありますか?

近年、「eスポーツ」という言葉をよく耳にするようになりました。eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略。電子機器を用いて行うコンピューターゲーム(ビデオゲーム)をスポーツ競技としてとらえる際の名称です。

今、将棋や囲碁を習うように、ゲームを習うことが広まりつつあるのです。

日本初のゲームのオンライン家庭教師「ゲムトレ」は、楽しく脳を鍛える習い事として、2019年からサービスを開始。サービスを提供している株式会社「ゲムトレ」の代表を務めているのが、小幡和輝さんです。

小幡さんは不登校だった時代にゲームに救われた経験からゲームを習い事にする「ゲムトレ」を立ち上げました。

ゲームによって人生を切り開いていった小幡さんの、不登校児だった少年時代から「ゲムトレ」立ち上げまでのお話しを伺います。
全3回の1回目。

学校に行かなかった小中学生時代

「ゲムトレ」代表の小幡さんは、起業家でありながら、地域創生事業に携わっています。また最近では東京2020オリンピック・パラリンピック大会で公式SNSの“中の人”をしていたり、様々な分野で幅広く活動しています。

SNSを使ったPR企画やアカウントの運用を行う小幡さん。東京2020オリンピック・パラリンピックの公式SNSの運用担当者として総フォロワー1000万人以上のアカウントの管理、コンテンツ制作を行った。 写真提供:小幡和輝

そんな小幡さんですが、実は小学2年生のときから約10年間、不登校児だったといいます。

「幼稚園の頃から集団行動が苦手な子どもでした。みんなで一緒に何かする、というのになじめなかったんですよね。小学校2年の頃、いじめがきっかけで完全に学校へ行けなくなったんです」(小幡さん)

学校へ行かなくなってからは、近所に住む5歳上のいとこと一緒によく遊びました。

「いとこのお兄ちゃんも学校へ行っていなくて。ゲームを始めたのも、彼の影響です。当時、流行っていた『ぷよぷよ』や『ポケモン(ポケットモンスター)』をはじめ、ふたりでゲームばかりしていました」(小幡さん)

小学校4年生になると、そのいとこに倣(なら)ってフリースクールに通うようになりました。そこで世代を超えた友人ができ、コミュニティの輪が広がっていったと、小幡さんは言います。

「僕が考える学校の役割はふたつあって、①勉強を教えること、②子どもの居場所になること。フリースクールは、学校へ行けない僕にとっての大切な居場所になりました」(小幡さん)

不登校だった約10年間は、ほぼ毎日10時間以上をゲームに費やし、その総プレー時間は、なんと約3万時間! 学校の教室で、教科書を開いて勉強することはしてこなかったと語る小幡さんですが、ゲームから多くのことを教えられてきたと言います。

必要性があれば自然と学んでいく

「ゲームをしていると、いろいろなことに興味がわくんです。僕は歴史のシミュレーションゲームが好きだったので、歴史はきっと、教室で授業を受けていた同世代の誰よりも詳しいと思いますよ(笑)。

『戦国無双』や『信長の野望』というゲームをよくやりました。ゲームを通して、時代背景や歴史上の偉人、武将等々、どんどん興味がわきます。

あとは計算も必要になってくるので、自力で学んでいましたね。ゲームのために必要なスキルであれば、子どもは楽しく、自然に学ぶようになるんです」(小幡さん)

また、小幡さんの語る「ゲーム」の範疇は、テレビゲームだけにとどまりません。ジャンルを問わず、無類のゲーム好きだった小幡さんは、囲碁では和歌山県代表になるほどの腕前でした。14歳のとき、初出場した『遊戯王カード』の大会ではたくさんの大人も参加している中で、3位入賞に輝きました。

「ゲームで大人とも競い合い、年齢を超えた幅広い人付き合いができた。また、大会で勝つごとに、ゲームをしている自分への自信につながっていったとも思います」(小幡さん)

高3で起業 でもゲームでは稼げない?

ゲームを通し、目標を突き詰めていく情熱や、仲間とのコミュニケーション能力が培(つちか)われていったという小幡さん。

なかでも、仲間内で「研究会」を開くほど熱心にはまっていたカードゲームはお金の勉強につながり、起業のきっかけになりました。

「当時はカードを転売して小遣い稼ぎをしていました。ゲームショップにも足しげく通っていたので、カードのイベントの主催側に入れてもらったりして、ビジネスの世界に興味がわきました」(小幡さん)

いくつかのイベント運営の経験などを経て、定時制高校に通っていた高校生のときにイベント会社の起業を決意します。この起業は、ゲームに関連したものではありませんでした。

「大好きなゲームで稼げたらいいな、とはもちろん思っていました。

でも、僕が子どもの頃は、今のようにゲーム実況をするYouTuberだったり、ゲームのトレーナー、プロゲーマーという職業もなかった時代。ゲームでちゃんと稼げるとしたら、つくる側のプログラミングの仕事くらいだった。

本気で好きでやっていたからこそ、ゲームで稼ぐことがいかに難しいか知っていたんです」(小幡さん)

在学中の2013年に会社を立ち上げて、高3で高校生社長となった小幡さん。高校生が運営するカフェをはじめ、若い世代に向けたSNSプロモーションを企画・運営。

「#不登校は不幸じゃない」というメッセージ発信を通じて、不登校児やその親らをつなげるサポート活動などを行ってきました。

不登校児をサポートする活動は、2018年から開始。全国各地でのイベント開催を行なっており、47都道府県すべて、合計300ヵ所以上を回った。累計の参加者は3000人超えに。 写真提供:小幡和輝

︎ゲームは子どもの習い事になるか

そんな小幡さんが、「ゲムトレ」を始めたのは、2019年10月。

不登校児とその親に向けた著作『学校は行かなくてもいい 親子で読みたい「正しい不登校のやり方」』(エッセンシャル出版社刊)や、子どもとゲームの関わり合い方を説いた『ゲームは人生の役に立つ。〜生かすも殺すもあなた次第』(エッセンシャル出版社刊)を執筆した際に、これから自分に何ができるかを、改めて考える機会があったといいます。

不登校やゲームに関連する著書。『学校は行かなくてもいい 親子で読みたい「正しい不登校のやり方」』(エッセンシャル出版社刊)は、小幡さん自ら日本全国の学校に寄贈も行なっている。「学校に居場所がない子どもたちへ届いたら、という思いです」(小幡さん)

「僕はゲームで救われた人間。ゲームから何を学んだのか、今の子どもたちとゲームの置かれている現状を見つめ直したところ、『ゲームを子どもの習い事にしてみようかな』と思いました」(小幡さん)

自分のこれまでの経験やスキルをいかして、子どもの習い事という教育関連事業をしようと思ったのは、幼児向け学習塾・花まる学習会の代表である高濱正伸先生の影響もあったと小幡さんは言います。

「高濱先生と初めてお会いした時に、『本を書いたらいいんじゃないかと』とアドバイスをいただいて。その後、対談をさせていただいたり、昨年(2021)は、オンライントークイベントにも出演していただいたりもしました。

ゲームを教育と結びつけようと思ったのは、高濱先生から『やってみるべきだ』と、励ましていただいたことがひとつのきっかけ。あの頃の自分のように、ゲームを頑張っている子どもたちがゲームを通していろいろなものを手に入れられたらいいな、と思ったんです」(小幡さん)

ゲームと教育を子ども視点で結びつけられ、教育として生かしていけるのは自分しかいないのでは、と小幡さんは考えました。「ゲームを習い事にしてみよう」という発想は、こうして生まれたのです。

次のページへ 子どもが「学校行かない」と言い出したら?
20 件