ハナコ秋山寛貴「美大を蹴ってお笑い芸人の道に。僕の役割はMr.ビーンのエキストラ」
【WEBげんき連載】わたしが子どもだったころ #12ハナコ秋山寛貴
2023.06.07
編集者・ライター:山口 真央
親に迷惑をかけないために「お笑い」の道を選択
その流れで、高校は美術系のコースを選択。でも、ここでまた、これまでは自分のことを「絵が上手いやつ」と思ってきたのに、まわりは自分より絵のうまい人ばかりで圧倒されました。「絵のテーマが重要だ」「もっとうまくならなきゃ」と、どんどん頭が固くなっていきました。がんばろうがんばろうと意気込む反面、少しずつ少しずつ、絵を描くことが楽しくなくなっていってしまったんです。
そんななかお笑いの「M‐1甲子園」で結果を出してしまったので、どちらの道に進むべきか、卒業するギリギリまで悩みました。それで、高3の12月、ワタナベコメディスクールの高校生オーディションを受けに行ったんです。ここでも、まさかの合格。ただし、それでも踏ん切りがつかず、美大の受験もして、こちらもいくつか合格通知をいただきました。迷いながらも、両方やっちゃうところが、正直、自分でも真面目すぎるなと思います。
親に「お笑い芸人を目指して上京する」と話したら、「大した支援はできないけれど、好きにしなさい」と応援してくれました。家族もお笑いが好きなので、僕が漫才をすることを面白がってくれていたんです。一番ショックを受けたのは美術の先生でした。「学校のない日も真面目に学校にきて、黙々とデッサンしていたじゃないか!」と最後まで引き止めてくれました。先生には申し訳ないことをしてしまったけれど、こうしてやっと、自分の進路が決まりました。
Mr.ビーンのエキストラからツッコミを学んでいた
芸人をやりだすと逆に絵が趣味になっていって、徐々に純粋に描くことが楽しい気持ちが戻ってきました。高校生のときは失敗することが怖くて、表現が凝り固まってしまっていたんですが、もっといっぱい挑戦すればよかったなと思います。当時だったら、今僕が出したイラスト集「#秋山動物園」みたいな絵は、「遊びみたいだ」と感じてしまっていたはず。でも、今は、うまい絵も、下手な絵も、それぞれの味があって素敵だなと思うようになったんです。
そんな僕も、一児の父になりました。先日、息子がストローでお茶を吸っている様子を見ていて、笑いがとまらなくなってしまって。まだ言葉も話せないうちから、ストローを吸ったら飲み物が出てくると理解している。思わず「君、すごいね!」と息子に声をかけてしまいました。成長ひとつひとつを、興味深く感じながら育てています。僕が父から影響を受けたように、息子も僕のすることに何かを感じて、それが彼の人生のパーツになるのかな。そう思うと、なんだか神秘的ですよね。
秋山寛貴
1991年岡山県生まれ。ワタナベエンターテインメント所属。2014年、同じくワタナベコメディスクールの12期生だった岡部大、菊田竜大とともにお笑いトリオ・ハナコを結成。「キングオブコント2018」優勝。「ワタナベお笑いNo.1決定戦 2018/2019」2年連続優勝。数多くのネタ番組や情報番組に出演するほか、「小説 野性時代」にてエッセイ「人前に立つのは苦手だけど」を連載。2023年3月より文化放送の「レコメン!」の火曜パーソナリティーに就任するなど、活動の幅を広げている。
山口 真央
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。
げんき編集部
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki
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