「こけし」が服を脱いで「お風呂」に入る!? 奇想天外な絵本『こけしぞろぞろ』の作者が誕生秘話を明かしてくれた

第1回(全3回)

こけしが本気になればなんでもできる!? 意外と高いこけしのポテンシャル

まつなが:『こけしぞろぞろ』の元になった作品は、雑誌「げんき2022年2・3月号」に掲載された歌つきのお話「こけっとこけし♪」です。歌に合わせて、こけしのお母さんと3姉妹がおふろに行って入るという、6ページの短いお話でした。

お風呂に入るときには、服を脱いで、体を洗って流しますよね。それをこけしにやらせてみようというアイデアが出発点です。表情豊かなこけしを見ていると、生きているみたいだなと感じるんです。だから手足が存在しなくても、こんな風に動くんだろうなと想像がどんどんふくらんで。『こけしぞろぞろ』を描いているときに、「意外とすごい動きが描けるんだな」と思いました。

ころころ転がって服を脱ぐアイデアは、「こけっとこけし♪」のときに描いたものです。

──転がりやすそうなこけしの形と、服の模様が絵で描かれているというところをうまく活かしているんですね。あっという間にすっぽんぽんになれるという、スピード感も感じます。
「げんき2022年2・3月号」に掲載された「こけっとこけし♪」作・まつながもえ 講談社
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まつなが:「こけっとこけし♪」を描いた後、編集さんから「こけしの絵本を描きましょう」と提案されたのですが、なかなか話をふくらませることができず、かなり苦労しました。

そこで一度「こけし」の話は寝かせておいて、別のテーマで描いたのが、かぼちゃやえびなどの具材が油のおなべにジャンプしていく、『てんぷらぱちぱち』だったんです。
『てんぷらぱちぱち』2023年4月21日発売 著・作:まつながもえ 講談社
──「読むとなぜかおふろやプールに入りたくなる!? じゅわっと笑える変身食べもの絵本」と紹介されているように、「こけっとこけし♪」から、さらに発想を発展させた作品だと感じました。

まつなが:『てんぷらぱちぱち』は、具材たちがおふろやプールのような油のおなべ飛びこむシーンを丁寧に見せていこうというところから描き始めました。

睡眠やご飯と同じく、誰もが小さいころから慣れ親しむ「お風呂」は、そこでなにをするのか、誰でも想像しやすいという良さがあります。だからこそ、みんなの想像をどんどん越えるアイデアを出して、想像の世界を広げていきやすいんです。

これぞリアル「こけしぞろぞろ」! 温泉街で再挑戦を決意

──再び、こけし絵本を描こうと思ったきっかけは、なんでしたか?

まつなが:日本三大こけしの産地は、鳴子温泉(宮城県大崎市)、遠刈田温泉(宮城県刈田郡蔵王町)、土湯温泉(福島県福島市)といわれています。ずっとこけしのお話づくりに悩んでいた私は、そのうちのひとつ、鳴子温泉にひとりで出かけました。

そこで温泉街に一歩足を踏み入れて、びっくりする出会いがあったんです。
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