見えない化石の秘密を発見!CTスキャンが明かす古生物の痕跡【古生物学者調査記】

【ちょっとマニアな古生物のふしぎ】古生物学者・相場大佑先生が見つけた古生物のふしぎ (2/2) 1ページ目に戻る

古生物学者:相場 大佑

ドイツのジュラ紀の地層から採取された岩石の正体は?

ドイツのジュラ紀の地層から見つかった化石。
四角く切られたこの岩石はドイツのジュラ紀の地層から採取されたものです。真ん中の上のほうに何かが集まっているようです。これは一体何でしょうか?

先ほどのアンモナイトと同じように、CTスキャンで得た輪切り画像から岩石の立体CGを作り、表示を変えながら観察してみます。
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専用ソフトの表示設定を変えると、いろいろな見え方になります。右下の画像では、何かがはっきりと写っています。
塊部分の中がはっきり見えました。元の岩石ではわからなかったのですが、おせんべいのような平べったい楕円形の硬い塊になっていて、その中に一本の棒のようなものや、たくさんの「ひじき」のようなものが入っていることがわかりました。これらは何の化石なのでしょうか?
岩石の中のおせんべいのような塊の中身。たくさんの「ひじき」のようなもの(上)と棒状のもの(下)が見える。
棒状のものと「ひじき」のようなものを拡大して形を見てみると、棒状のものはベレムナイトというイカによく似た生き物(親戚もしくは祖先)の体の中にある硬い殻、「ひじき」のようなものは、腕についていたカギ爪であることがわかりました。
棒状のものと「ひじき」のようなものを拡大した写真とベレムナイトの化石の写真(©Ra'ike;元の画像を反時計回りに90度回転)と復元図(©Dmitry Bogdanov;元の画像から一部を切り抜き)。
これらの化石がベレムナイトであることがわかりましたが、ではなぜこんなおせんべいのような塊になって岩石の中に保存されていたのでしょうか?

おそらくこれはベレムナイトを食べた別の生き物が出した糞、もしくは消化できなかった部分を丸めて吐き出したものなのではないかと思われます。

同じ地層から見つかっていて、ベレムナイトを食べた可能性があるのはサメ類、魚竜、首長竜、翼竜などですが、犯人を特定するのは簡単ではなさそうです。特定には、より詳しく観察・分析する必要がありそうです。
いずれにしても、ベレムナイトを好んで食べていた生き物がそこにいたことだけは確かです。

このように、CTスキャンを使うと、化石を壊すことなく中身を詳しく調べることができます。外から見ただけではわからなかった情報が明らかになり、大昔の古生物たちの暮らしが見えてくることもあります。

一見ただの岩石に見えるものの中にも、まだ誰も気づいていない秘密が隠れているのかもしれません。
CTスキャンは苫小牧市テクノセンターにおいて行いました。再構築した化石のCGはすべて、有限会社ホワイトラビットが提供するソフトウェア「Molcer」により作成されたもので、処理の過程でFijiを使用しています。また、京都大学の田近周博士にはCT撮影や断層画像の処理手法に関して、東京都市大学の中島保寿博士には糞石、吐瀉物化石についてご教授いただきました。
写真・文/相場大佑
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相場 大佑
あいば だいすけ

相場 大佑

Daisuke Aiba
古生物学者

深田地質研究所 主査研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現所属。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに3種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。

深田地質研究所 主査研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経て、2023年より現所属。専門は古生物学(特にアンモナイト)。北海道から見つかった白亜紀の異常巻きアンモナイトの新種を、これまでに3種発表したほか、アンモナイトの生物としての姿に迫るべく、性別や生活史などについても研究を進めている。 また、巡回展『ポケモン化石博物館』を企画し、総合監修を務める。