西表島の夜は眠れない! ナイトツアーでイリオモテヤマネコに会えるかも!?

サイエンスライター・柴田佳秀の「生きもの好きの聖地・西表島紀行」その4

科学ジャーナリスト:柴田 佳秀

2022年夏に実施した、MOVE ラボ企画「子どもの夢をかなえる“図鑑旅”」。今回は、研究員家族の西表島旅行に同行してくれたサイエンスライター、柴田佳秀さんの西表島・生きもの紀行第4弾をお届けします。
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ナイトツアーに出発!

生きものの宝庫・西表島の図鑑旅。生きもの探しは暗くなってからも続けます。

夜はカエルやヘビ、カニなどの夜行性の生きものが活動する時間。イリオモテヤマネコにだって出会えるかもしれないので、寝てなんかいられません。

そんな夜の生きものたちを求め、ガイドの赤塚さんの案内でナイトツアーに出発です。このわくわく感はたまりません。
ライトの灯りを頼りに生きものを探す。夜の生きもの探索はわくわくです。

川にはカニやテナガエビがいっぱい

最初に訪れたのは川です。足下に注意を払いながらライトの灯りを頼りに生きものを探します。

さっそくカニを発見です。ベンケイガニクロベンケイガニなどのカニ類があっちにもこっちにもいて、気をつけないと足で踏んでしまいそう。夜はカンムリワシなどの怖い捕食者がいないので安心して行動をするのでしょう。

さらに探し続けると、今度はコンジンテナガエビが水から出て岩の上を歩いているのに遭遇。このエビはイリオモテヤマネコの食べものの 1 つということですが、こんな感じじゃ、簡単に捕まってしまいそうです。それでも食べ尽くされないところをみると、本当に生きものの数が多いんだなと実感します。
陸を走るコンジンテナガエビ。
アダンの森でヤシガニを探せ!

川の次は海岸にやってきました。西表島のナイトツアーで、ぜひ出会いたい世界最大の陸上甲殻類のヤシガニを見つけるためです。

ヤシガニは、太平洋やインド洋の暖かい地域の海岸にすみ、日本では南西諸島や小笠原諸島で見られます。大きなものは4kg にもなるという巨大なヤドカリのなかまです。

見つけるポイントは、海岸にはえるアダンの木。夜になるとアダンの果実を食べに姿を見せるのでそれを狙います。しかし、いそうな場所を丹念に見ていきますが、なかなか見つかりません。そんなときにガイドの赤塚さんが珍しいヤドカリを発見。コムラサキオカヤドカリです。なんとこのヤドカリ、国指定の天然記念物。西表でもあまり数が多くない陸にすむヤドカリです。
国指定の天然記念物・コムラサキオカヤドカリ
この日は、湿度が高くヤシガニ探しにはぜっこうのコンディションのはず。しかし、なかなか見つからないまま、時刻はすでに 22 時を回っています。あきらめかけたそのとき、赤塚さんが「たくさんいる!」と声を上げました。

ゴツゴツしたサンゴの岩場を登っていくと、そこにはなんと 6 匹のヤシガニがいるではありませんか。あたらめて近くで見ると巨大なハサミがちょっと怖いぐらい。こんなにたくさんのヤシガニはめったに見られないと、赤塚さんも興奮気味です。
青いヤシガニ。他にも茶色などいろいろなタイプがいる。
ヤシガニは迫力満点。一同大興奮!

猛毒のアオマダラウミヘビに遭遇

ヤシガニの興奮冷めやらぬなか、帰り道で驚くべき生きものに出会いました。アオマダラウミヘビが、砂浜に上陸していたのです。は虫類が大好きなユウトくんは、これには大興奮。テンションマックスです。

このウミヘビは日中は海中にいますが、夜になると上陸する習性があります。コブラ科のヘビで猛毒を持ちますが、性質はおとなしく捕まえようとしなければかみついてくることはありません。とはいっても、近づくにはちょっと勇気が必要かも。
遭遇したアオマダラウミヘビ。日本では南西諸島で見られる。
リュウキュウコノバズクは電線がポイント

西表島の夜の生きもので、忘れてならないのはリュウキュウコノハズクです。大きさ約 22cm のフクロウのなかまで、トカラ列島以南の南西諸島に一年中暮らしている夜行性の鳥です。「コフォー、コフォー」と特徴のある大きな声で鳴き、西表島ホテルの森からもよく声が聞こえました。

ただ、森にいるのを見つけるのはかなり大変。狙い目は、電線にとまっているのを探すことです。この鳥の獲物は昆虫で、よく電線に止まって狩りをしているので、それを見つければ観察することができます。
リュウキュウコノハズク。ライトの光を弱めにしてそっと観察しよう。

ぜったいお勧め! 満天の星空観察

生きもの観察以外にも、西表島の夜にぜったいにお勧めなのは星空観察です。西表島は日本初の「星空保護区」に認定された、星空を見るには世界屈指の場所。

今回の図鑑旅でも満天の星空を堪能できましたが、あまりの星の多さに言葉を失うほど。私の人生でこれほどの星空を見たのは初めてでした。
2022 年 8 月 28 日 22 時の月ヶ浜から見た星空。天の川とみなみのかんむり座が見える。
西表島ホテルの前にある月ヶ浜(トゥドゥマリの浜)は、人工的な灯りがなく星空を見るには最適なウォッチングポイントなんです。天気が良ければ満天の星に圧倒されること間違いありません。(第5回へつづく)
写真提供/柴田佳秀

「子どもの夢をかなえる“図鑑旅”プロジェクト」とは?

コロナ禍での行動制限や活動自粛に伴い、子どもの自然体験や旅の機会が減っていることに憂いや不安を抱いている保護者が増えている昨今。MOVE編集チームでは、図鑑編集に携わる私たちならではの「好奇心を刺激し、夢をかなえるような旅を子どもたちにしてほしい」、「濃い思い出として記憶に残る数日を親子で過ごしてほしい」—そんな思いを込めて家族で楽しめる旅を企画しました。

図鑑がきっかけで興味をもったり、好きになったものを自分の五感で見たり、触れたり、感じることができる旅。実物に触れることで、図鑑からスタートした好奇心を、さらに刺激してあげることができる旅。これを編集部では、“図鑑旅”と名付けて、これからも様々な目的地を探っていこうと思っています。

また、今回の旅の実現に向けて、全日本空輸株式会社様、株式会社星野リゾート様には、企画のスタートの段階より、目的地やそこでの過ごし方について相談し、多くのご協力をいただきました。

MOVEラボ研究員・ゆうとのレポートもチェック!

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しばた よしひで

柴田 佳秀

Shibata Yoshihide
サイエンスライター

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。