新種が命名された「角竜」にも大興奮! 特別展『恐竜博2023』大阪会場・潜入ルポ 

ワニ・恐竜が大好きな大阪在住のMOVEラボ研究員・助手のはるきがレポート

2023年9月24日まで大阪会場(大阪市立自然史博物館)で開催中。
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大阪会場では新種として命名された「フルカトケラトプス・エルキダンス」の実物化石の展示も!

今回の『恐竜博 2023』は、「恐竜たちの攻・守」をテーマに、身を守るためにトゲやプレートを進化させた装盾類(そうじゅんるい)と、肉食恐竜たちを対比させた、恐竜たちの進化を読み解きます。カナダ・ロイヤルオンタリオ博物館(ROM)以外では初公開となる鎧竜史上最高の完全度と謳われるズール・クルリヴァスタトルの実物化石が展示され、さらにはティラノサウルス・レックス「タイソン」の実物化石が組み込まれた全身骨格を、世界で初公開!

今回は、大阪在住のMOVEラボ研究員・はるきが、2023年9月24日(日)まで「大阪市立自然史博物館」で開催中の大阪会場の様子をレポートします。

ワニの研究を自身でも行う、MOVEラボ・助手のはるきがレポート!

MOVEラボ研究員・助手のはるき(中2)
〈MOVEラボ研究員とは?〉
MOVEラボ研究員は、厳正な選考によって選ばれた、生きものや自然科学に興味のあるMOVE読者の代表です。研究員は、MOVEラボの活動に参加し、フィールドや博物館、動物園などをリアルに楽しみます。また、ラボの研究員は、自分たちの研究レポートをMOVEラボのサイト上で発表します。

メンバーは現在24名! 中学生以上は「助手」として活動しているよ!
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待ちに待った『恐竜博2023』は見どころがいっぱいすぎる!

『恐竜博2023』は、2023年6月18日まで東京の上野にある国立科学博物館で開催されていて、開催すぐにでも行きたかったのですが、今回は大阪に巡回してくると聞いたので、大阪開催の日を心待ちにしていました。

過去には『恐竜博2019』で、カムイサウルスとデイノケイルスを国立科学博物館まで見に行きました。そのときは大阪まで巡回されなかったので、今回は近くの博物館で見られるのが嬉しかったです。僕の保育園からの恐竜友達が一緒に行こうと誘ってくれたので、それもまた楽しみでした。
今回注目の恐竜は?

ポスターにもなっていますが、鎧竜ズールとゴルゴサウルスの展示、ティラノサウルスの全身骨格タイソン、アルゼンチンから発掘されたマイプです。
今までティラノサウルスのようなスター恐竜である獣脚類や、有名なトリケラトプスなどがメインの恐竜展は行ったことがありましたが、鎧竜の恐竜展は初めてです。

鎧竜の化石を間近で見たことがなかったのと、素晴らしく状態の良い化石が展示されていると事前に聞いていたので、とても楽しみにしていました。
ズール・クルリヴァスタトルの頭骨(実物化石)© Royal Ontario Museum photographed by Paul Eekhoff
これがズールの頭骨(実物)です。アメリカのモンタナ州でゴルゴサウルスの発掘中に発見されました。

何が貴重な点かというと、皮骨の大部分が生きていたときの形と位置でそのまま化石になっているということです。皮膚は普通は化石になるまでにバラバラになってしまいますが、ズールは洪水によって入り江のような所へ流され、仰向けの状態で埋もれたため、皮骨が生きていたときのように繫がって発見されました。今まで見つかっている鎧竜の中で最も完全な化石の一つで、世界ではじめて頭骨から尾の棍棒(こんぼう)まで1体分が発見されたそうです。
ズールの尾の棍棒(こんぼう)の化石です。
鎧竜の特徴といえば、がっしりした背中、振りまわすための棍棒がある尻尾です。腱が骨化しているため、尾が強化され、尾の先端の重い棍棒を支え、武器として使われていたと考えられるそうです。腱があることで、振りまわしても元の位置に戻れていたようです。

また、脇腹の鎧の一部が折れ、骨が再生していることがわかるのだそうです。これは尾の棍棒を使い、争った痕跡の可能性があるとのことです。

皮膚には角質も保存されているため、タンパク質が残っているかもしれず、今後の研修が進めば、体の色や皮膚についてもっとわかることが期待されています。

僕はこの展示が来るまでズールのことを知りませんでした。僕自身あまり鎧竜の実物を見たことがなかったのですが、この展示のおかげでこのような綺麗な保存状態の化石を見ることができて、何千万年も前に生きていた恐竜が本当にいたのだと改めて実感し、地球のロマンを感じました。
また、ズールの頭骨がブツブツだったことがとても印象的でした。今まで見てきた鎧竜は頭骨は全部骨のみのため、ツルツルだったからです。ズールの頭骨には六角形の皮膚が並んでいるのを見ることができ、かなり立体的に残っていて驚きました。

さらに鎧竜特有の尻尾についているとても立派な棍棒もしっかり確認出来て、ここまで綺麗に揃った化石を間近で見られてとても勉強になりました。

その名は「フルカトケラトプス・エルキダンス」!

僕が訪問した際は、「ケラトプス科の未記載種」として展示されていた角竜が、新属新種として記載され、命名されました。2023年8月11日に研究結果が公開されて、新聞やニュースにもなりました。
その名は「フルカトケラトプス・エルキダンス」です。「フォーク状の角がある顔」「光をあてるもの」といった意味だそうです。
「フルカトケラトプス・エルキダンス(ケラトプス科の未記載種)」の展示
フルカトケラトプスの実物化石 国立科学博物館蔵(撮影:アフロ)
僕が見に行ったときは、平らに置かれた実物化石があったので、とても印象に残っていたのと、特に椎骨の癒合についての説明を読んで、じっくり化石を見ていたのでニュースを読んだときに、「あ、あの化石だ」とすぐに思い出すことができました。

僕が展示で気になったところが新種のポイントとして『恐竜博2023』プレスリリースにも載っていたので、少しご紹介します。
《本標本は、若い個体(亜成体)である》
多くの脊椎動物は成長につれて、骨の癒合が進んだり、骨の表面組織が変化したりする傾向があります。本標本は、近縁種の成体の7割程度の体格と考えられ、骨の癒合も進んでいません。また、頭部や四肢の骨には幼体型と成体型の中間的な表面組織が見られます。従って、未成熟の若い個体(亜成体)だと考えられます。恐竜の骨の内部には、成長速度の季節変動によって年輪のような構造(成長停止線)が認められる場合があります。本標本では上腕骨や脛骨などで共通して2本の成長停止線が認められたことから、2~3歳で死んだ個体だと考えられます。

《角竜の骨の形態を詳細に調べられる重要な標本であること》
本標本は極めて保存状態が良く、骨の各部位の癒合が進んでいないことから、1つ1つの骨の特徴を詳細に観察することができる重要な化石です。特に、角竜では成長とともに頭部の骨の癒合が進んでしまうため、個々の骨の形態は観察しにくくなってしまいます。本標本は保存状態が良いうえに多くの部位が見つかっており、これまで他の角竜でもあまり研究されていなかった骨についても詳しく調べることができます。たとえば、上顎のクチバシを支える角竜特有の骨「吻骨」や、フリルの縁の小さな骨の特徴まで詳しく調べることができるため、今後の研究が期待されます。


『恐竜博2023』プレスリリースより

僕は以前、マチカネワニについて調べたときに、ワニの成長も恐竜と同じように椎体と神経弓の癒合具合により年齢がわかると初めて知りました。

ワニは尾から癒合が始まり、成体になると首付近まで癒合します。
化石は目の前でじっくり見られる距離に展示されているので、展示の説明を読んで、椎体と神経弓が離れているところを実物化石でじっくり観察することができました。

また、骨をスライスし、成長停止線の数を数えてその恐竜が何歳だったかわかるということは、カムイサウルス・ジャポニクスの研究で知りました。2023年の2月に、北海道大学総合博物館で、小林快次教授にテレビの取材でお会いした際に、大学院生の方がカムイサウルスの骨片のスライスの実物を見せてくれました。成長停止線がくっきりとわかって、本当に木の年輪みたいで、とても綺麗で驚きでした。

フルカトケラトプスも骨片のスライスで年齢がわかったとあったので、これも是非見てみたいです。今後の研究発表も楽しみにしています。

ティラノサウルス「タイソン」は世界初公開!

ティラノサウルス「タイソン」の全身骨格 © Tyson T.rex, 2023
ティラノサウルス・レックス タイソン
Tyrannosaurus rex. ‘Tyson’
ティラノサウルス科
時代:白亜紀後期
産出地:アメリカ モンタナ州
© Tyson T.rex, 2023
このタイソンという名前がつけられたこのティラノサウルスの全身骨格は、『恐竜博2023』で世界初公開されました。全身の約300個ある骨のうち177個(約59%)が実物化石で発見されたという迫力満点の展示です。

今回、鎧竜のズールがメイン展示ですが、やっぱりティラノサウルスは最高に格好良い……。何回も、いろんな角度から、全身骨格をまじまじと見ていました。
ティラノサウルス「タイソン」の頭骨部分
ティラノサウルス「タイソン」の上腕骨
このタイソンの化石も良い保存状態で、骨からいろいろ知ることができます。

例えば、この上腕骨や、下顎のは嚙み痕のようなものがあり、その中でも一部分は骨が再生しているような特徴がある為、生きている間に他のティラノサウルス等から傷をうけて、治癒していたと考えられています。縄張り争いや共喰いなどで戦っていたのが化石からよくわかります。

タイソンといえば、どうしてもボクシングのマイク・タイソン選手を思い浮かべます。僕がこれまで見たことのあるティラノサウルスの中でも2番目ぐらいに大きく、王者の風格が出ていて本当に強そうです。しかも全身の59%も見つかっていて、とても珍しい個体だと思います。

骨折するほど縄張り争いなどで争っていたのに、白亜紀をしっかりと生き抜いてきたのだなと感動しました。6600万年以上も前のことなのに、今それが目の前で見て感じられるってすごい。

メガラプトル科の中で最大級の「マイプ・マクロソラックス」

マイプ・マクロソラックスの実物化石(一部複製を含む)東京会場
撮影:山本倫子
マイプ・マクロソラックス
Maip macrothorax
メガラプトル科
時代:白亜紀後期
産出地:アルゼンチン サンタクルス州
発見された骨の化石は、骨の内部が空洞で軽くなっていたため、体の大きさの割には体重は比較的軽かったとされているそうです。

マイプが発見されたアルゼンチンのパタゴニアは今はアンデス山脈で寒い土地ですが、白亜紀後期は熱帯雨林が広がり暖かい気候だったようです。ここでも地球の歴史を感じました。

防衛力が凄まじい⁉︎ スケリドサウルス

スケリドサウルス・ハリソニ
Scelidosaurus harrisonii
時代:ジュラ紀前期
産出地:イギリス
体表に皮骨をもった最初の恐竜で、鳥盤類で最も古い化石と言われています。

全身骨格を見て驚きました。とにかくありとあらゆるところがブツブツボコボコしています。皮骨は首から腰にかけて3列ずつ綺麗に並んでいるそうです。尾は背中側の中央に1列、お腹側に左右に1列ずつあります。その皮骨の間にはまた小さな皮骨がびっしりと埋まっていて、見るからにかなり防御力が高そうです。
マイプの発見により、住んでいた場所や気候などがわかったと説明に書いていたので、とても貴重な化石なのだなと見ていて感じました。

スケリドサウルスという名は初めて聞きました。展示のスケリドサウルスは、今まで見てきた化石の中で、一番ゴツゴツしていて防御力が半端なさそうでした。この恐竜にも生きるための術がしっかりと備えられているのだなと感じました。

鎧竜の魅力にハマる『恐竜博2023』

友達が撮ってくれた写真。骨格の影が格好良くてお気に入り!
恐竜博には2016年、2019年と行っていますが、友達と行ったのは今回が初めてでした。友達と行けてとても嬉しかったし、気づいたことを意見交換し、違った視点での恐竜の話ができたのが楽しかったです。さらに友達のお母さんの考察力や観察力が鋭くて驚きました。家族や友達と行って、いろいろな話をしながら楽しめる恐竜博でした。

なによりも、自分の中ではあまり触れてこなかった鎧竜の展示に出会えてとてもよかったです。今まで鎧竜は獣脚類ほどの興味はありませんでしたが、この恐竜博のおかげで鎧竜の素晴らしい特徴に気がつくことができました。これからは鎧竜についての知識も増やしていきたいと思います。
特別展「恐竜博2023」大阪会場

会場:大阪市立自然史博物館 (大阪・長居公園)
会期:2023年7月7日(金)~9月24日(日)
https://dino2023.exhibit.jp/ 
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