新種が命名された「角竜」にも大興奮! 特別展『恐竜博2023』大阪会場・潜入ルポ
ワニ・恐竜が大好きな大阪在住のMOVEラボ研究員・助手のはるきがレポート
2023.09.05
大阪会場では新種として命名された「フルカトケラトプス・エルキダンス」の実物化石の展示も!
今回は、大阪在住のMOVEラボ研究員・はるきが、2023年9月24日(日)まで「大阪市立自然史博物館」で開催中の大阪会場の様子をレポートします。
ワニの研究を自身でも行う、MOVEラボ・助手のはるきがレポート!
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待ちに待った『恐竜博2023』は見どころがいっぱいすぎる!
過去には『恐竜博2019』で、カムイサウルスとデイノケイルスを国立科学博物館まで見に行きました。そのときは大阪まで巡回されなかったので、今回は近くの博物館で見られるのが嬉しかったです。僕の保育園からの恐竜友達が一緒に行こうと誘ってくれたので、それもまた楽しみでした。
ポスターにもなっていますが、鎧竜ズールとゴルゴサウルスの展示、ティラノサウルスの全身骨格タイソン、アルゼンチンから発掘されたマイプです。
今までティラノサウルスのようなスター恐竜である獣脚類や、有名なトリケラトプスなどがメインの恐竜展は行ったことがありましたが、鎧竜の恐竜展は初めてです。
鎧竜の化石を間近で見たことがなかったのと、素晴らしく状態の良い化石が展示されていると事前に聞いていたので、とても楽しみにしていました。
何が貴重な点かというと、皮骨の大部分が生きていたときの形と位置でそのまま化石になっているということです。皮膚は普通は化石になるまでにバラバラになってしまいますが、ズールは洪水によって入り江のような所へ流され、仰向けの状態で埋もれたため、皮骨が生きていたときのように繫がって発見されました。今まで見つかっている鎧竜の中で最も完全な化石の一つで、世界ではじめて頭骨から尾の棍棒(こんぼう)まで1体分が発見されたそうです。
また、脇腹の鎧の一部が折れ、骨が再生していることがわかるのだそうです。これは尾の棍棒を使い、争った痕跡の可能性があるとのことです。
皮膚には角質も保存されているため、タンパク質が残っているかもしれず、今後の研修が進めば、体の色や皮膚についてもっとわかることが期待されています。
僕はこの展示が来るまでズールのことを知りませんでした。僕自身あまり鎧竜の実物を見たことがなかったのですが、この展示のおかげでこのような綺麗な保存状態の化石を見ることができて、何千万年も前に生きていた恐竜が本当にいたのだと改めて実感し、地球のロマンを感じました。
さらに鎧竜特有の尻尾についているとても立派な棍棒もしっかり確認出来て、ここまで綺麗に揃った化石を間近で見られてとても勉強になりました。
その名は「フルカトケラトプス・エルキダンス」!
その名は「フルカトケラトプス・エルキダンス」です。「フォーク状の角がある顔」「光をあてるもの」といった意味だそうです。
僕が展示で気になったところが新種のポイントとして『恐竜博2023』プレスリリースにも載っていたので、少しご紹介します。
《本標本は、若い個体(亜成体)である》
多くの脊椎動物は成長につれて、骨の癒合が進んだり、骨の表面組織が変化したりする傾向があります。本標本は、近縁種の成体の7割程度の体格と考えられ、骨の癒合も進んでいません。また、頭部や四肢の骨には幼体型と成体型の中間的な表面組織が見られます。従って、未成熟の若い個体(亜成体)だと考えられます。恐竜の骨の内部には、成長速度の季節変動によって年輪のような構造(成長停止線)が認められる場合があります。本標本では上腕骨や脛骨などで共通して2本の成長停止線が認められたことから、2~3歳で死んだ個体だと考えられます。
《角竜の骨の形態を詳細に調べられる重要な標本であること》
本標本は極めて保存状態が良く、骨の各部位の癒合が進んでいないことから、1つ1つの骨の特徴を詳細に観察することができる重要な化石です。特に、角竜では成長とともに頭部の骨の癒合が進んでしまうため、個々の骨の形態は観察しにくくなってしまいます。本標本は保存状態が良いうえに多くの部位が見つかっており、これまで他の角竜でもあまり研究されていなかった骨についても詳しく調べることができます。たとえば、上顎のクチバシを支える角竜特有の骨「吻骨」や、フリルの縁の小さな骨の特徴まで詳しく調べることができるため、今後の研究が期待されます。
『恐竜博2023』プレスリリースより
ワニは尾から癒合が始まり、成体になると首付近まで癒合します。
化石は目の前でじっくり見られる距離に展示されているので、展示の説明を読んで、椎体と神経弓が離れているところを実物化石でじっくり観察することができました。
また、骨をスライスし、成長停止線の数を数えてその恐竜が何歳だったかわかるということは、カムイサウルス・ジャポニクスの研究で知りました。2023年の2月に、北海道大学総合博物館で、小林快次教授にテレビの取材でお会いした際に、大学院生の方がカムイサウルスの骨片のスライスの実物を見せてくれました。成長停止線がくっきりとわかって、本当に木の年輪みたいで、とても綺麗で驚きでした。
フルカトケラトプスも骨片のスライスで年齢がわかったとあったので、これも是非見てみたいです。今後の研究発表も楽しみにしています。
ティラノサウルス「タイソン」は世界初公開!
今回、鎧竜のズールがメイン展示ですが、やっぱりティラノサウルスは最高に格好良い……。何回も、いろんな角度から、全身骨格をまじまじと見ていました。
例えば、この上腕骨や、下顎のは嚙み痕のようなものがあり、その中でも一部分は骨が再生しているような特徴がある為、生きている間に他のティラノサウルス等から傷をうけて、治癒していたと考えられています。縄張り争いや共喰いなどで戦っていたのが化石からよくわかります。
タイソンといえば、どうしてもボクシングのマイク・タイソン選手を思い浮かべます。僕がこれまで見たことのあるティラノサウルスの中でも2番目ぐらいに大きく、王者の風格が出ていて本当に強そうです。しかも全身の59%も見つかっていて、とても珍しい個体だと思います。
骨折するほど縄張り争いなどで争っていたのに、白亜紀をしっかりと生き抜いてきたのだなと感動しました。6600万年以上も前のことなのに、今それが目の前で見て感じられるってすごい。
メガラプトル科の中で最大級の「マイプ・マクロソラックス」
マイプが発見されたアルゼンチンのパタゴニアは今はアンデス山脈で寒い土地ですが、白亜紀後期は熱帯雨林が広がり暖かい気候だったようです。ここでも地球の歴史を感じました。
防衛力が凄まじい⁉︎ スケリドサウルス
全身骨格を見て驚きました。とにかくありとあらゆるところがブツブツボコボコしています。皮骨は首から腰にかけて3列ずつ綺麗に並んでいるそうです。尾は背中側の中央に1列、お腹側に左右に1列ずつあります。その皮骨の間にはまた小さな皮骨がびっしりと埋まっていて、見るからにかなり防御力が高そうです。
スケリドサウルスという名は初めて聞きました。展示のスケリドサウルスは、今まで見てきた化石の中で、一番ゴツゴツしていて防御力が半端なさそうでした。この恐竜にも生きるための術がしっかりと備えられているのだなと感じました。
鎧竜の魅力にハマる『恐竜博2023』
なによりも、自分の中ではあまり触れてこなかった鎧竜の展示に出会えてとてもよかったです。今まで鎧竜は獣脚類ほどの興味はありませんでしたが、この恐竜博のおかげで鎧竜の素晴らしい特徴に気がつくことができました。これからは鎧竜についての知識も増やしていきたいと思います。